Rita Nazareth
- エヌビディア株価、市場は決算発表後に上下に大きく変動すると予想
- 米2年債入札は好調、最高落札利回りは2022年8月以来の低水準
27日の米株式相場は小幅高。S&P500種株価指数は最高値近辺で小動きとなった。強気相場の原動力となってきた人工知能(AI)への熱狂が今後も続くのかどうかを見極めようと、市場は翌28日に発表されるエヌビディアの決算に手掛かりを求めている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5625.80 | 8.96 | 0.16% |
ダウ工業株30種平均 | 41250.50 | 9.98 | 0.02% |
ナスダック総合指数 | 17754.82 | 29.05 | 0.16% |
ゴールドマン・サックス・グループのトレーディングデスクはかつて、幅広い指数に大きな影響をもたらすことから、エヌビディアを「地球上で最も重要な銘柄」と呼んだ。「マグニフィセント・セブン」の一角を占める同社は今年、ナスダック100指数の値上がり分のうち3分の1余りをたたき出した。
市場は決算発表後にエヌビディア株価が大きく変動すると予想している。オプション市場は、決算発表を受けて株価が上下におよそ10%振れる可能性を織り込んでいる。エヌビディアの株価は年初来で約160%、2022年10月につけた弱気相場の最安値からは1000%値上がりしている。
アメリプライズ・ファイナンシャルのアンソニー・サグリンビーン氏は「エヌビディアの決算は、先週のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャクソンホール講演よりも市場全体に大きな影響を与えるかもしれないというのが当社の見解だ」と指摘。エヌビディア最高経営責任者(CEO)の「ジェンスン・フアン氏が市場を動かす番だ」と述べた。
ウルフ・リサーチのクリス・セニェック氏はエヌビディアの決算について、9月6日に発表される重要な雇用統計まで市場の基調的な地合いを決めるとみている。
「当社では強気な姿勢を維持しているが、ごく短期的にはリスクは下方に傾いている。季節的な観点から見れば弱い時期に入るところで、選挙イヤーである今年はさらに増幅される」と指摘した。
ナスダック100指数は0.3%上昇。エヌビディアは1.5%値上がりした。同じく28日に決算発表を予定しているセールスフォースは0.4%安。空売り投資家ヒンデンブルグ・リサーチがショートポジションを建てたことを明らかにしたスーパー・マイクロ・コンピューターは2.6%下落した。小型株で構成するラッセル2000指数は0.7%値下がり。
スーパー・マイクロ株急落、ヒンデンブルグが空売りリポートで標的に
UBSグローバルのマーク・ヘーフェル氏は、ハイテク業界は短期的にボラティリティーの高まりに見舞われる可能性があるものの、AIの成長ストーリーは健在だと話す。
その上で「今週のエヌビディア決算とアップルの新型iPhone発売は、注目すべき重要な起爆剤となるだろう」と指摘。半導体とソフトウエア業界における優良なAI受益者については、前向きな見通しを維持しているとヘーフェル氏は述べた。
米国債
米国債相場はまちまち。2年債入札(発行額690億ドル)が好調で、2年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.12% | 1.4 | 0.35% |
米10年債利回り | 3.83% | 1.1 | 0.30% |
米2年債利回り | 3.90% | -3.9 | -0.99% |
米東部時間 | 16時43分 |
2年債入札では、最高落札利回りが3.874%と、入札前取引(WI)の入札締め切り時の水準3.880%を下回り、2年債入札としては2022年8月以来の低水準となった。利回りが4%を割り込むと投資家が敬遠するのではないかとの懸念が出ていたが、これを覆す格好となった。
28日には5年債(発行額700億ドル)、29日には7年債(同440億ドル)入札がそれぞれ予定されている。
米民間調査機関のコンファレンスボードが発表した8月の米消費者信頼感指数は6カ月ぶり高水準となったが、この日発表された経済指標への市場の反応は限定的だった。
米消費者信頼感指数、6カ月ぶり高水準-景気や物価の見方が改善 (2)
為替
ニューヨーク外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が小動き。エコノミストは30日に発表される個人消費支出(PCE)価格指数データが米利下げ観測をさらに強める内容になると予想している。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1225.48 | -1.06 | -0.09% |
ドル/円 | ¥143.95 | -¥0.58 | -0.40% |
ユーロ/ドル | $1.1185 | $0.0024 | 0.22% |
米東部時間 | 16時44分 |
円はドルに対して1ドル=144円前後に上昇。一時は143円92銭まで買われた。
TDセキュリティーズのストラテジストはリポートで「ドルはキャリー取引の巻き戻しに伴い弱含んでいる」と指摘。「ドルは引き続き金利、ポジション調整、モメンタムから影響を受けており、目先はこうした流れが継続する可能性がある」と述べた。
一方で「とりわけ地政学を巡る根強い不確実性、世界的な成長見通しの軟化、米選挙の不透明な先行きといった要素を考慮すると、ドルは構造的に割安に見え始めている」とも指摘した。
欧州のトレーダーによると、月末要因の資金フローが見られ始めており、一部の銀行モデルはドル買いを示唆している。
スタンダード・チャータード銀行のストラテジスト、スティーブン・イングランダー、ニコラス・チア両氏は「ドルは急ピッチで動いたので、短期的には幾分値固めの展開となるかもしれない」と指摘。「インフレ鈍化が現在の水準付近で足踏みする、あるいは米経済の活動が上振れしない限り、ドルの持ち直し局面は売りの機会と見ている」と述べた。
その上で「ドルは来年、金利差縮小でさらに弱含むと予想している」とし、「当社の基本シナリオに対するリスクは、ドルの急反発ではなく、むしろ短期的に弱さ継続することだ」と続けた。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は4営業日ぶりに反落。リビアの供給停止を受けた相場の上昇が行き過ぎだったことが、テクニカル指標で示唆された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は前日までの3営業日での上昇率が7%を超えていたが、この日は一時2.6%下落。
Fxプロのシニア市場アナリスト、アレックス・クプツィケビッチ氏は「短期的なテクニカル要因が働いている。WTIはバレル77ドルを超えたため、3日間上昇の勢いはなくなった」とリポートで指摘。200日移動平均線は今年の大半の期間で下値支持線として機能してきたが、上値抵抗線にもなり得ると付け加えた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、WTI先物10月限は前日比1.89ドル(2.4%)安の1バレル=75.53ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は2.3%下げて79.55ドル。
金スポット価格はもみ合い。市場では、米利下げ軌道の手掛かりとなるインフレ統計が意識されている。
30日に発表される7月の米個人消費支出(PCE)コア価格指数は、3カ月移動平均が年率換算2.1%上昇に伸びが鈍化すると予想されている。実際にそうなれば、金融当局の目標である2%をわずかに上回る水準となる。
金価格は今年に入り、利下げ期待や中央銀行による積極的な買いに後押しされて20%余り上昇。中東やウクライナで紛争が続く中、逃避需要にも支えられている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比2.3ドル(0.1%未満)安の1オンス=2552.90ドルで取引を終えた。金スポット価格はニューヨーク時間午後1時50分現在、1.5ドル(0.1%未満)上昇の2519.54ドル。早い時間帯には0.6%安となる場面もあった。
原題:Stocks Churn as Nvidia’s 1,000% Rally to Face Test: Markets Wrap(抜粋)
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