Rita Nazareth
- 米4-6月GDP改定値は上方修正、個人消費が堅調-株価を支援
- 円はGDP発表後に対ドルで下げ拡大、一時は145円55銭まで下落
29日の米株式市場では、堅調な経済指標が追い風となり、総じて買いが優勢になった。ただ、決算が一部の高い期待に届かなかったエヌビディア株が下げ足を速めると、S&P500種株価指数は終盤に失速し、ほぼ変わらずで終えた。エヌビディアは6%余り下落。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5591.96 | -0.22 | 0.00% |
ダウ工業株30種平均 | 41335.05 | 243.63 | 0.59% |
ナスダック総合指数 | 17516.43 | -39.60 | -0.23% |
S&P500種構成銘柄のうち、大半がプラス圏で終えた。米経済の底堅さを示す指標に加え、市場関係者からエヌビディアの成長見通しに変わりはないとの声が相次ぎ、投資家の買い安心感につながった。エヌビディアがハイテク株の足を引っ張った一方、「マグニフィセント・セブン」を構成するテク大手7社のうち5社は値上がり。小型株で構成するラッセル2000指数も高い。
4-6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率3%増と、速報値の2.8%増から上方修正。米経済の主要な成長エンジンである個人消費も2.9%増と、速報値の2.3%増から引き上げられた。米新規失業保険申請件数は前週比ほぼ変わらずの23万1000件だった。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのマネジングディレクター、クリス・ラーキン氏は「今朝のデータは経済が安定していることを示した」と指摘。「米経済が崖から転落しつつあるとは思えないし、現在の市場では良いニュースは良いと受け止められる。想定される来月の利下げを米金融当局に思いとどまらせるような材料は何もなかった」と述べた。
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、今朝発表された指標により、「米経済が崖っぷちに立たされているわけではない」との安心感が広がったとみている。
「まだ完全に乗り切ったわけではないが、米経済は多くの人が考えている以上に底堅さを維持している」とケンウェル氏。「今回のデータは、米金融当局が依然としてソフトランディング(軟着陸)を実現できるとの確信を投資家に与えるはずだ」と続けた。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は、ハイテクセクターが大きな打撃を受けない限り「ローテーション 」シナリオは維持されるとみている。「大型ハイテク株は株価指数に占めるウエートが非常に高いため、同グループが大きく売られれば、市場全体も下げるだろう」と指摘。しかし、ハイテク株が持ちこたえる限り、足元のローテーションの動きも継続し、向こう数週間の株高を後押しすると述べた。
エヌビディアの時価総額はここ1年で2兆ドル(約290兆円)近く押し上げられており、今回の決算はそれに見合う完璧なものである必要があった。だが、大方の予想を上回ったにもかかわらず、エヌビディア株は結局、決算発表後に売り込まれた。
メイン・ストリート・リサーチの最高投資責任者(CIO)、ジェームズ・デマート氏は、エヌビディアの株価が決算を受けて下落したのは、投資家の混乱に加え、8月上旬の安値からあまりに急激に持ち直したとの懸念によるところが大きいと指摘する。
だが、決算が力強い内容となったことで、同社のバリュエーションが正当化されたとし、「エヌビディア株の下げは押し目買いの機会だ」とデマート氏は語った。
米国債
米国債市場では、底堅い経済指標を受けて利回りが上昇。年内の米利下げ予想がやや後退した。この日実施された7年債入札(発行額440億ドル)はやや不調だった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.15% | 2.4 | 0.59% |
米10年債利回り | 3.86% | 2.8 | 0.74% |
米2年債利回り | 3.90% | 3.1 | 0.80% |
米東部時間 | 16時49分 |
データ発表後、利下げ予想は数ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)後退。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では31bpの緩和が織り込まれており、0.25ポイントの利下げを確実視。約25%の確率で0.50ポイントの利下げを見込んでいる。通年の予想利下げ幅は100bp弱で、年内残り3回のFOMC会合のうち1回で50bpの大幅利下げが行われるとの見方を維持している。
BMOグローバル・アセット・マネジメントの債券部門責任者、アール・デイビス氏はブルームバーグテレビジョンで「ここから金利は低下すると予想しているが、一直線とはいかないだろう」と指摘。「10年債利回りが4%に上昇しても驚かない」とし、そうなった場合には、ロングポジションをさらに積み上げる予定だと述べた。
外為
ニューヨーク外国為替市場では、予想を上回る伸びとなったGDP統計を受けてドルが買われた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1232.12 | 2.38 | 0.19% |
ドル/円 | ¥144.96 | ¥0.37 | 0.26% |
ユーロ/ドル | $1.1078 | -$0.0042 | -0.38% |
米東部時間 | 16時50分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.1%上昇した。ただ、月初来では1.8%低下。米金融当局が利下げ開始を示唆したことが背景にあり、このままいけば月間で今年最大の下げとなる見通しだ。
円は対ドルで下落。GDP統計の発表後に下げ幅を拡大し、一時は1ドル=145円55銭まで売られた。その後は144円台後半まで下げを縮めた。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「GDP、新規失業保険申請件数などのデータは穏やかな内容で、当面は市場のリセッション(景気後退)懸念を和らげるはずだ」と話す。
一方で「30日発表の個人消費支出(PCE)コア価格指数が米金融当局が目指す2%のインフレ目標からさらに遠ざかったことを示唆するようなら、積極的な利下げを織り込んできた米金利市場はハト派な見通しを見直し始める可能性がある」と指摘。「そうなれば、外為市場ではとりわけ円、スイスフランといった低利回り通貨やユーロに対するドルショートの一部が巻き戻されるだろう」と述べた。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は反発。堅調な米経済指標やリビアでの供給状況の悪化が材料視された。
前日までの2営業日で3%を超える下落となっていた北海ブレント先物は1バレル=80ドル付近まで値を戻した。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は75ドルを上回り、このところ上値抵抗線となっている200日移動平均線に近づいた。
リビアが5つの輸出ターミナルで原油積み出しを停止したのを受け、原油価格は一段高となった。リビアの石油生産量は半減しており、世界市場からは日量100万バレル近くが失われる可能性がある。
TP・ICAPのエネルギースペシャリスト、スコット・シェルトン氏は「リビアでの停止が続けば、10-12月(第4四半期)の在庫積み増しの見込みはほぼなくなる」と語った。
グローバルXのアナリスト、ケニー・チュー氏は「リビア情勢がさらにエスカレートする恐れはあるが、原油価格に対する長期的なリスクは限定的だろう」と指摘。その理由として、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」には現在、短期的な供給懸念に対応するための余剰生産能力が相当あるからだとした。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は、前日比1.39ドル(1.9%)高の75.91ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.29ドル(1.6%)上げて79.94ドルで引けた。
金相場は反発。米GDP改定値などの各経済指標が意識された。金スポット価格はGDP発表直後にはドルや米国債利回りの上昇に押されて前日比マイナス圏に下げる場面もあったが、その後は持ち直した。
投資家は30日発表のPCEコア価格指数に注目している。エコノミストの間では、米金融当局の目標である2%をわずかに上回る水準の伸びにとどまると予想されている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比22.50ドル(0.9%)高の1オンス=2560.30ドルで取引を終えた。金スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、21.09ドル(0.8%)高の2525.70ドル。
原題:S&P 500 Rally Loses Steam, But Most US Stocks Gain: Markets Wrap(抜粋)
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