Cristin Flanagan
- FRB当局者発言相次ぐ、27日のPCE統計が今週の焦点
- 原油は中東緊張緩和の期待で続落、米国債相場に影響-金また最高値
23日の米国株式相場は小幅高。先週の大幅利下げを踏まえ、これからの金融緩和を見極めるヒントになり得る発言が連邦準備制度理事会(FRB)から相次いだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5718.57 | 16.02 | 0.28% |
ダウ工業株30種平均 | 42124.65 | 61.29 | 0.15% |
ナスダック総合指数 | 17974.27 | 25.95 | 0.14% |
S&P500種株価指数は先週記録した過去最高値に接近した。S&P500種の均等加重バージョンであるS&P500イコールウエート指数は、0.5%上昇し過去最高値で終了。株高の裾野が広がっている可能性を示唆した。同指数ではバス&ボディー・ワークスもエヌビディアも同じウエートで算出される。ダウ工業株30種平均も過去最高値を更新。ナスダック100指数は0.3%上昇した。
インテルは3.3%上昇。アポロ・グローバル・マネジメントが数十億ドル規模の投資を持ちかけたことが、関係者の情報で明らかになった。ボーイングは約2%高。スト中の労組メンバーに提示した賃上げ案をさらに引き上げた。
S&Pグローバルが発表した購買担当者指数(PMI)速報値では、米国の企業活動は9月上旬、若干緩やかなペースで拡大。見通しは悪化し、販売価格指数は6カ月ぶりの高水準に上昇した。
バイタル・ナレッジのアダム・クリサフルリ氏は「どっちつかずの統計と言える。米金融政策当局に劇的な見通し変更を迫るものではない」と指摘。「米経済が適度に健全な足取りであることを示唆している。欧州と比べるとそれは顕著だ」と述べた。
トレーダーが織り込んでいる年内利下げは75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)弱。金融当局者が示唆したよりも若干積極的な緩和軌道を描いている。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は「2%への軌道にあるという確信を得た現在、FRBが担うもう一つの責務である雇用のリスクに、さらなる重点を置くのが適切だ」と指摘。「つまりは向こう1年に、もっと多くの利下げがあることを意味する可能性が高い」と述べた。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は雇用市場の弱さを指摘し、年内にもう一度50bpの利下げを支持する考えを示した。
アトランタ連銀のボスティック総裁は大幅な利下げで緩和サイクルを開始するのは金利を中立水準に近づける上で有益だと述べつつ、当局としては大幅利下げペースを確約するべきではないとも指摘した。
27日にはFRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア指数が発表される。
米国債
米国債はほぼ変わらず。利回り曲線は傾斜を強めた。FRB当局者発言と原油安で方向感が定まらなかった。50bpの追加利下げ期待を冷やす内容の当局者2人の発言で、利回りはいったん上昇したが、原油価格の下げに伴って米国債相場は値を戻した。逃避需要にも支えられたが、その後はイラン大統領の発言で緊張緩和への期待が高まった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.09% | 0.9 | 0.22% |
米10年債利回り | 3.75% | 0.6 | 0.15% |
米2年債利回り | 3.58% | -0.6 | -0.18% |
米東部時間 | 16時43分 |
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「2020年以来の利下げが通過し、多くの投資家は『さてここからどうするか』という気持ちだろう」と指摘。「そのために経済成長、特に雇用市場に引き続きスポットライトが当たる」と述べた。
金利スワップ市場では特に目立った動きは見られなかったが、今年残る2回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で見込まれる利下げ幅は、引き続き合計75bp前後となっている。
外国為替
ドル指数はほぼ変わらず。FRBから金利見通しに関する当局者発言が相次いだ。円は対ドルで小幅上昇。主要10通貨ではユーロの下げが目立つ。フランスとドイツの購買担当者指数(PMI)統計が弱かった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1224.03 | 0.10 | 0.01% |
ドル/円 | ¥143.60 | -¥0.25 | -0.17% |
ユーロ/ドル | $1.1112 | -$0.0050 | -0.45% |
米東部時間 | 16時44分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は先週まで週間ベースで3週連続安だった。アトランタ連銀総裁やミネアポリス連銀総裁、シカゴ連銀総裁の発言が注目された。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の通貨戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「先週の大幅利下げ後に明らかになった当局者発言からは、11月に再度の50bp利下げが実現するハードルはかなり高いようだ」と語る。「だからといって不可能ではない。しかしそれには本当に弱い雇用関連の統計が2本必要になろう」と述べた。
S&Pグローバルが発表した9月のユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)速報値は48.9。前月の51から低下した。ブルームバーグまとめた予想は50.5だった。
原油
ニューヨーク原油先物相場は続落。燃料需要の見通しが弱く、イランとイスラエルの紛争が沈静化する可能性も意識され、売りが優勢になった。
イスラエル軍と親イラン民兵組織ヒズボラがロケット砲を撃ち合う状況が数日続いているが、イランのペゼシュキアン大統領は23日、イスラエル側にイランと同じレベルのコミットメントが見られる場合には、イスラエルとの緊張を緩和する用意があると述べた。この発言により、紛争が悪化し世界の原油生産量の約3分の1を担う地域の生産が脅かされるとの懸念が和らいだ。
フランシスコ・ブランチ氏らバンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストはリポートで「供給過多にもかかわらず、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される『OPECプラス』が供給を拡大する計画であることから、エネルギー市場のセンチメントは非常に弱気に傾いている」と指摘した。
石油輸入で世界首位の中国では、利下げに加え、主要な金融規制当局のトップ3人が会見で経済について説明する計画を公表した。これを受け、当局が成長回復に向けた取り組みを強化する準備を進めているとの観測が高まっている。
中国が主要短期金利引き下げ、当局者の会見も計画-刺激策期待高まる
みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は、中国による景気刺激策の強化は原油需要を改善させる可能性があると発言。「中国の需要が伸びなければ、原油が上昇するのは難しい」と続けた。
ミシシッピ州からフロリダ州にかけた米国のメキシコ湾岸には、今週末までにハリケーンが襲来する危険性がある。悪天候に先立ち、シェルはメキシコ湾のアポマトックスとストーンズの石油施設を閉鎖する準備を進めている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は63セント安(0.9%)安の1バレル=70.37ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント11月限は0.8%安の73.90ドルで引けた。
金
金スポット相場は3営業日続伸し、最高値を更新した。米企業活動の減速を示すデータを消化しながら、買いが優勢になった。米追加利下げの可能性を探る手がかりとなる主要経済指標の発表を待つ雰囲気も強かった。
米国の企業活動は9月上旬、前月に比べると若干緩やかなペースで拡大した。見通しは悪化し、販売価格指数は6カ月ぶりの高水準に上昇した。
米総合PMI、9月は若干低下-販売価格指数は6カ月ぶりの高水準
金スポットは一時0.5%上昇し、1オンス=2634.90ドルを付けた。連邦公開市場委員会(FOMC)が18日に政策金利を0.5ポイント引き下げた翌日以降、金は上昇している。
23日の米金融当局者の発言後、PCEと失業保険申請件数に注目が移る。先行きの利下げ観測に影響する可能性がある。利下げは金利を生まない金にとってプラスになる傾向がある。
サクソ・バンクはリポートで「市場はますます値固めを必要としているようだが、買い越しが2020年以来の高水準に膨らんでいるヘッジファンドを揺さぶるには、現時点では深い値固めが必要だ」と指摘した。
金は年初来で27%上昇しており、中央銀行による買いに加え、中東とウクライナの紛争による逃避需要も相場上昇に寄与している。
パーマネント・ポートフォリオ・ファミリー・オブ・ファンズのマイケル・クジノ社長は、短期的には値動きが多少荒くなるものの、これらの強気要因によって、長期的には上昇トレンドが続くとみている。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時40分現在、0.2%高の2627.66ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は、6.30ドル(0.2%)高の2652.50ドルで引けた。
原題:S&P 500’s Equal-Weighted Index Hits All-Time High: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Steady as Euro Lags Behind Peers on Soft PMI: Inside G-10(抜粋)
Treasuries Erase Declines as Oil Slumps; Curve Steepens Further(抜粋)
Oil Falls After Iran Says It’s Prepared to Ease Israel Tensions(抜粋)
Gold Rises to Fresh Record Before Data That May Offer Fed Clues(抜粋)