Cristin Flanagan
- 国債と原油、金、ドルは上昇-イランがイスラエルにミサイル攻撃
- フォワードカーブに示されている米緩和の幅は「異常」-フィンク氏
1日の米国株相場は反落。中東での対立が激化し、安全資産を求める動きが強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5708.75 | -53.73 | -0.93% |
ダウ工業株30種平均 | 42156.97 | -173.18 | -0.41% |
ナスダック総合指数 | 17910.36 | -278.81 | -1.53% |
この日は国債と原油、金、ドルが全て上昇。イスラエルによるレバノンでの攻撃を受けて、イランはイスラエルに大規模なミサイル攻撃を仕掛けた。これより先の一部報道によれば、米国はこの攻撃に対するイスラエルの防衛準備を積極的に支援している。
XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「市場は様子見モードになっている」と分析。「この状況がどこまでエスカレートするのか、そして安全資産への急速な逃避が正当化されるのかどうかを見極める上で、今後24時間が極めて重要になる」と述べた。
同氏は、この対立が収束すれば、相場全体とハイテク銘柄は回復すると予想している。この日はハイテク銘柄の下げがきつい。アップルは2.9%、エヌビディアは3.7%それぞれ下落した。ナスダック100指数は1.4%安。一時は2%余り下げたが、午後に下げを縮めた。
この日の経済指標は強弱まちまちなシグナルを発した。 米供給管理協会(ISM)が発表した9月の製造業総合景況指数は、6カ月連続で活動縮小を示した。一方、8月の米求人件数は増加し、3カ月ぶり高水準となった。
エバコアISIのエコノミスト、スタン・シップリー氏は「きょうの経済指標は10年債利回りやドル、さらに雇用サービス関連株への重しになるだろうが、(4日に発表される)雇用統計の方が影響力は大きい」と分析。その上で、「米国債市場にとっては中東の地政学情勢に関するニュースがより重要だ」と述べた。
米国の東海岸とメキシコ湾に面したすべての主要港で港湾労働者がストライキ入りしたことを巡っても、懸念が広がっている。コンテナ貨物の主要港で作業停止が長引けば、それだけ経済的損失も大きくなるためだ。経済的損失は1日当たり38億ドル(約5460億円)から45億ドルに上ると、JPモルガン・チェースは試算している。
10月は株式にとって、歴史的に見てポジティブではあるが、変動の大きい時期でもある。
ベスポーク・インベストメント・グループのストラテジストらは、「これまで10月は強気派にとって、他の月よりもずっと安心できる環境だった。ただ常に平たんな道のりというわけではなかった」と指摘。1945年までさかのぼるベスポークのデータによれば、10月におけるピークからボトムまでの下落率は平均約4.6%で、これはどの月よりも大きい。
パイパー・サンドラーのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・カントロウィッツ氏は株式相場について、「完璧な経済見通し」を反映していると指摘。「この先、株式相場が大きく上昇する上で問題になるのは、相場に基本的に全くリスクが織り込まれていないということだ」と述べた。
短期金融市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)が11月にさらに0.5ポイントの利下げを実施する可能性が3分の1あるとの見方を反映している。だが米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は、市場が利下げを織り込み過ぎているとの見方を示した。
フィンク氏は1日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「フォワードカーブに示されている緩和の幅は異常だ。さらに緩和の余地があるとは思うが、フォワードカーブが示すほどではないと思う」と語った。
米国債は上昇。中東での緊張激化を受けて逃避需要から買われた。ただ米国時間の午後にイスラエルが、イランからのミサイルの大半を迎撃し、負傷者は確認されていないと発表したことに反応し、上げをやや縮めた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(BP) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.07% | -5.1 | -1.24% |
米10年債利回り | 3.73% | -5.3 | -1.40% |
米2年債利回り | 3.60% | -3.9 | -1.07% |
米東部時間 | 16時50分 |
為替
外国為替市場ではドルが主要10通貨のうち、カナダ・ドルを除く全てに対して上昇。イランがイスラエルに大規模なミサイル攻撃を仕掛け、中東情勢が緊迫化した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1225.96 | 3.15 | 0.26% |
ドル/円 | ¥143.54 | -¥0.09 | -0.06% |
ユーロ/ドル | $1.1070 | -$0.0065 | -0.58% |
米東部時間 | 16時50分 |
TDセキュリティーズのFXストラテジスト、ジャヤティ・バラドワジ氏は「中東情勢の緊迫化に伴う世界的なリスクオフの動きで、ドルは上昇している」と指摘。「この状況を受け、最近まで米利下げの織り込みや中国刺激策のニュースの恩恵を受けてきたリスクに敏感な主要通貨に、一定の下落のリスクが生じている」と分析した。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.4%上昇した。
円は対ドルでほぼ変わらず。ニューヨーク時間の午前中には、イランがイスラエルへのミサイル攻撃を準備中との報道に反応して一時142円98銭まで上げたが、その後は前日の終値を挟んでもみ合う展開となった。
三村淳財務官は1日、為替相場の「無秩序な動きや過度な変動は望ましくない」と述べ、そうした動きを念頭に「必要があると思えば必要な行動をしなければいけない」との考えを示した。
原油・金
ニューヨーク原油先物相場は大幅上昇。イランがイスラエルをミサイル攻撃したことを受け、供給混乱のリスクが高まった。中東は世界の原油供給で3分の1を占める。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時5.5%上昇し、バレル当たり72ドルに迫る場面があった。その後はやや上げ幅を縮小した。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「状況がより詳しく分かるようになるまで、向こう数日、神経質な取引が続く公算が大きい」と述べた。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国であるイランが紛争の当事者となれば、中東の原油供給が混乱する可能性が高まり得る。米政府の統計によると、イランの産油量は昨年、世界9位だった。
シティー・インデックスのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「停戦の動きが見られなければ、原油価格は今後数日でさらに5ドル上昇する可能性がある」と指摘。その上で「しかし、供給が実際に混乱しない限り、需要に対する懸念とリスクテーク意欲の減退が上値余地を限定する」と予想した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は1.66ドル(2.4%)高の1バレル=69.83ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.86ドル(2.6%)高の73.56ドルで引けた。
金相場は反発。イランからミサイル攻撃を受けたとイスラエル軍が発表したことを受け、中東の緊張が激化する可能性が意識された。
スポット価格は一時1.5%高。逃避資産として買われた。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「金市場は、こうしたニュースが流れた時に想定される動きをしている」と述べた。
UBSグループの貴金属担当ストラテジスト、ジョニ・テベス氏は、地政学的リスクに関する報道に金相場が条件反射的に反応する可能性はあるが、金にとってより長期的に重要なのは実質金利だと指摘。
米金融当局が利下げモードに入り、実質金利が低下する中、「金相場はこれまで大幅には下落していないため、投資家が上値を追い続けなければならなくなる。それがリスクだ」とブルームバーグテレビジョンで話した。
金スポットはニューヨーク時間午後4時5分現在、0.9%高の1オンス=2658.78ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は30.90ドル(1.2%)高の2690.30ドルで引けた。
原題:Stocks in ‘Wait and See Mode’ on Mideast Strife: Markets Wrap(抜粋)
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