16日の米国株式相場は反発。強気相場を率いてきた大型ハイテク株から他のセクターにシフトするローテーションが進んだ。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5842.47 | 27.21 | 0.47% |
ダウ工業株30種平均 | 43077.70 | 337.28 | 0.79% |
ナスダック総合指数 | 18367.08 | 51.49 | 0.28% |
景気敏感株が好調。小型株で構成するラッセル2000指数はほぼ3年ぶりの高水準に達した。大型ハイテク株の大半が下げる中、エヌビディアは前日の5%近い下げから反発。S&P500種株価指数の均等加重バージョンであるS&P500イコールウエート指数は、S&P500種を上回るパフォーマンスだった。イコールウエート指数ではアップルもダラー・ツリーも同じウエートで算出され、大型株の影響が小さい。株高の裾野が広がっている可能性を示唆した。
トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は「投資家は大型ハイテク離れを意識しているのかもしれない。広く保有されてている大型ハイテク株には、この先上昇するための明確な材料が少なくなっている」と指摘。「選挙が近づき、経済はバランスを取り戻しつつある。超大型株からそれ以外にシフトする待望のローテーションはいよいよ実現しそうだ」と述べた。
この日も企業決算が注目された。モルガン・スタンレーは6.5%高。トレーディング収入と投資銀行業務の手数料収入が予想を上回り、32%の増益となった。ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスは利益がウォール街の予想を上回り、株価は12%上昇した。
富豪投資家のスタン・ドラッケンミラー氏は約3週間後に迫った米大統領選について、市場は共和党候補トランプ前大統領の勝利を織り込みつつあるとの見方を示した。「それは銀行株にも暗号資産(仮想通貨)にも見て取れる」と語った。
ラッセル2000指数は1.6%上昇。ブルームバーグがまとめた「マグニフィセント・セブン」指数はほぼ変わらず。
ニコラス・レンティーニ氏らモルガン・スタンレーのアナリストは「小型株は過去3年半アンダーパフォームを続けていたが、当社は最近、大型株との対比でニュートラルに投資判断を引き上げた」と指摘。「この判断に影響したのは強い9月の雇用統計と、先月の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げだ」と説明した。
小型株に対して強気姿勢になるには、先行的なマクロ指標に明確な成長加速が反映される必要があるだろうという。
LPLファイナンシャルのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、アダム・ターンキスト氏は小型株がこの数カ月、値固めレンジを出ていないことを指摘。経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオが実現する可能性と金融政策の今後が投資家に問われているのだという。小型株は大型株に比べて、景気や金利の動向に対する感応度が高い。
「懸念されていたよりも良好な労働市場に支えられて、成長見通しは最近改善している。利下げを巡る視界もクリアになってきた。これを背景にラッセル2000は上昇トレンドチャネルの下限を離れて上昇してきた」とターンキスト氏。「銀行セクターが最近強いことも、小型株をさらに支えている」と述べた。
モメンタム指標も最近強気に転じ、小型株が上値を追う新たな兆候となっていると同氏は指摘した。
今年すでに46回も過去最高値を更新したS&P500種は、年末にかけて上昇基調を維持する見通しだと、ゴールドマン・サックス・グループのトレーディングデスクはみている。
グローバル市場担当マネジング・ディレクターで戦術スペシャリストのスコット・ルブナー氏は、S&P500種が今年の年末時点で「6000を大幅に超えている」可能性があると予想。1928年までさかのぼったデータを分析した結果、10月15日から12月31日までのS&P500種は中央値で5.17%上昇。選挙の年は7%強と一段と高いリターンを残している。これを今年に当てはめると年末水準は6270になるという。
ルブナー氏は大統領選挙を前に株式が売りを浴びると予想していたが、その見方を改めた。
「株式市場の売り浴びせはキャンセルだ。機関投資家が市場参入を余儀なくされている現在、顧客はヘッジ外しにシフトしており、年末ラリーと整合するようになってきた」とルブナー氏は15日の顧客リポートで指摘した。
米国債
米国債相場は軒並み堅調。利回り曲線は大口取引の影響でやや平たん化した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.30% | -2.1 | -0.48% |
米10年債利回り | 4.01% | -1.8 | -0.44% |
米2年債利回り | 3.94% | -0.8 | -0.20% |
米東部時間 | 16時40分 |
英インフレ統計が予想より弱かったことから、米国債相場は堅調モードで始まった。前日大きく下げた原油はこの日も売られ、現物国債利回りへの下押し圧力が続いた。
関連記事:英インフレ率、中銀目標下回る-利下げ観測強まりポンド1.3ドル割れ
米連邦公開市場委員会(FOMC)の日程と連動したオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)相場は、11月会合での22ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げを織り込んでいる。年内残る2回の会合では合計45bpの利下げを見込んでいる。
外為
外国為替市場ではドル指数が3日続伸し、10週間ぶりの高水準。ドルは対円で再び150円に迫る場面も見られた。トランプ前大統領による関税政策への言及が意識され、メキシコ・ペソを中心にドル以外の主要通貨は下げた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1253.29 | 3.83 | 0.31% |
ドル/円 | ¥149.64 | ¥0.44 | 0.29% |
ユーロ/ドル | $1.0861 | -$0.0032 | -0.29% |
米東部時間 | 16時40分 |
ブルームバーグ・ドル指数の1年物リスクリバーサルは6週ぶりの強気水準に上昇した。
マッコーリー・グループのティエリー・ウィズマン、ガレス・ベリー両ストラテジストは「為替市場で主流となっているストーリーは依然としてドル高であり、米国内よりも米国外のインフレの方が急速に低下しているという前提がこれを強めている」とリポートで指摘。
「しかしトランプ氏に投票する意向を示す人の割合が世論調査で高まっているほか、賭けサイトでも当選の確率が上がってきており、これもドル高観測を支えている」と述べた。
一方でブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「これをトランプトレードのせいだと指摘する向きもいるが、基本的にはダイバージェンスが一因だと思う。前日の弱いカナダやこの日のニュージーランド、英国の消費者物価指数を受けた反応だ」と述べた。
関連記事:ヘッジファンド、通貨オプション取引急増-「トランプ関税」リスク意識
原油
ニューヨーク原油先物相場は小幅安。日中は上げ下げを繰り返す方向感に乏しい展開となった。市場参加者は引き続き、来年の見通しと中東情勢の緊迫化リスクを注視している。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は前日、4%余り下落していた。イスラエルがイランの石油生産施設を標的にしない可能性があるとの一部報道を受け、供給混乱を巡る懸念が後退した。
レバノンは先に、イスラエルが攻撃の手を緩めるという保証を米国から何らかの形で得たと説明していた。ただイスラエルは16日もベイルート南部に新たな攻撃を行った。そうした中でイラン当局は、輸出ターミナルがあるカーグ島の沖合の海底パイプラインで起きた原油流出の封じ込め作業を開始。原因は不明だが、この流出によりイランの輸出施設に対する注目が高まった。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏は「ネガティブなセンチメントが地政学的リスクプレミアムを徐々に押し下げている。トレーダーは、イスラエルがエネルギーインフラを標的にしないという見方を一段と強めている」と分析。「この見方は近視眼的ということになる可能性はあるが、トレーダーは非常に短期的な視点で動いており、新しいニュースがなければポジションを保有しようという考えに傾かない」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物11月限は、前日比19セント(0.3%)安の1バレル=70.39ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限はほぼ変わらずの74.22ドルで引けた。
金
金スポット相場は続伸し、一時最高値に迫った。市場の注目は米大統領選に移っている。投票日まで3週間を切る中、世論調査からは接戦が予想される。
金は今年、商品の中でも特に良好なパフォーマンスを見せており、次々と最高値を更新している。安全資産としての魅力のほか、中央銀行による旺盛な買い需要が背景にある。さらに現在では、米大統領選の結果を巡る不透明感を受けて金融市場全体でポートフォリオの調整が進んでおり、そうした動きが金を一段と支える状況となっている。
マーク・へーフェル氏らUBSグループのアナリストは、電子メールで「次の米政権が決まるまで、不確実性とボラティリティーが高まると予想される」と指摘。不安定なトレーディング環境となる中で、「金と原油はポートフォリオにおいて有効なヘッジ手段になり得る」と助言した。
ロンドン貴金属市場協会(LBMA)がマイアミで開催した年次業界会議での調査によれば、金は向こう1年間に最高値の更新が続く見通しだ。同会議の参加者は、来年10月下旬までに1オンス=2917.40ドルに上昇すると予想している。これは現在の価格を約10%上回る水準。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、前日比13.15ドル(0.5%)高の1オンス=2675.73ドル。一時2685.35ドルを付けた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は12.40ドル(0.5%)上昇し2691.30ドルで引けた。
原題:Stock Rotation Lifts Small Caps to Three-Year High: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Underpinned by Rally in Gilts, Futures Block Trades(抜粋)
Dollar Gains as Traders Consider Trump Tariffs: Inside G-10(抜粋)
Oil Steadies Near $70 With Risk to Middle East Supplies in Focus(抜粋)
Gold Nears Fresh Record With Focus on US Election and Fed Rates(抜粋)