[ワシントン 16日 ロイター] – 実業家イーロン・マスク氏が率いる米宇宙開発企業スペースXは、米西部カリフォルニア州の米空軍基地から打ち上げるロケットを増やすことを認めなかった決定を不服とし、カリフォルニア州沿岸委員会を相手取って同州ロサンゼルスの連邦裁判所に提訴した。スペースX側は沿岸委員会のメンバーらが打ち上げを妨害しようとする政治的偏見を持っていると非難し、同州サンタバーバラにあるバンデンバーグ宇宙空軍基地からスペースXの主力ロケット「ファルコン9」を発射するのを規制することを禁じる命令を求めた。
提訴は15日付。スペースX側は、カリフォルニア州の1000マイルを超える海岸線の土地と水の利用を監督している同州沿岸委員会が環境への配慮ではなく、マスク氏の政治的見解に不服を抱いて同社の打ち上げへの規制権限を不当に言い張っていると主張した。
12人で構成する沿岸委員会は今月10日、スペースXが要求していたロケットの追加打ち上げを認めないことを賛成6人、反対4人で可決した。また、商業宇宙船の打ち上げは連邦政府の管轄ではないため、同委員会の沿岸開発許可権限に従わなければならないと説明していた。
急速に右傾化しているマスク氏は、11月の米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領を支持して巨額の献金をし、選挙活動に協力して、トランプ氏が勝利した場合には政権の役職を引き受けると語っている。
トランプ氏と争う民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の出身地であるカリフォルニア州は、この数十年間に民主党への支持が強固な州になり、国政選挙でも民主党候補に肩入れしている。
ある委員は最近、大統領選に関する発言力を強めているマスク氏を「政治的なデマをまき散らし、投稿している」と非難していた。
スペースX側は、沿岸委員会がマスク氏の公の発言を判断材料にすることは不適切であり、合衆国憲法で保護されている言論の権利を侵害するものだと主張。また、沿岸委員会が「違憲の権限逸脱」によって国家安全保障や他の連邦政府の所管事項に介入していると非難し、打ち上げは「沿岸資源に重大な影響はない」と言い張っている。
沿岸委員会は16日、声明を出すことを拒否した。スペースXと法律事務所ベナブルの弁護士らは、コメントの要請にすぐには返答しなかった。
衛星配備などで米政府と契約しているスペースXは2013年以降にバンデンバーグ宇宙空軍基地からファルコン9を発射しており、昨年は18基を打ち上げた。空軍はスペースXの年間打ち上げ回数を36回から50回へ増やすことを提案していた。