[ワシントン 23日 ロイター] – 日銀の植田和男総裁は23日、基調的なインフレ率は緩やかに上昇しているとした上で、インフレ目標を持続的に達成するには「まだ時間がかかる」と述べ、利上げに慎重に取り組む姿勢を示唆した。訪問先のワシントンでパネルに出席した。
植田総裁は、不確実性が大きい時は政策変更を慎重に段階的に進めたいとしながらも、金利が非常に長期間にわたって低水準にとどまるという期待を抱かせると投機的なポジションが大量に蓄積される可能性があるとの問題点を指摘。円キャリートレードの過剰な積み上がりを抑制するため、金融政策の基本戦略を明確にすることが非常に重要だと述べた。
日銀は2%のインフレ目標を持続的に達成する方向に進んでいるとの見方から3月にマイナス金利政策を解除し、7月に政策金利を0.25%に引き上げた。
総裁は、日本の基調インフレ率は2022年までゼロ近辺で推移していたが、世界的なエネルギー・食品価格上昇の影響や労働市場逼迫による賃金上昇で上向き始めたと指摘。
「持続可能な形で2%に到達するにはまだ時間がかかる」とし、 「われわれはこの機会を利用してインフレ期待と基調インフレ率を引き上げ、持続可能な形で2%のインフレという新たな均衡へと移行したい」と述べた。
そのため、政策を緩和的に維持しているとした。
また、他国の金融政策の変更が日本経済やインフレに重大な影響を及ぼすことがあるため、欧米の状況を注意深く見守っているとし、中でもここ数カ月は米国経済に何が起こるのかを懸念してきたと明らかにした。
さらに、夜も眠れないほど悩んでいることは何かと問われ、「今後、政策の正常化の規模はどの程度が適切か、合計利上げ幅を時間軸でどのように配分するのが最善かを考えている」と答えた。
総裁は、日本の中立金利を予測することが難しいため、将来の利上げの適切な規模を特定するのは「非常に困難」と述べ、詳細には言及しなかった。
将来の行動を全て事前に伝えることはできないと言わざるを得ないとし、日銀が利上げについて既定のスケジュールにコミットしないことに言及。「われわれができるのは金融政策の基本的な戦略を丁寧に説明することだ」と語った。