25日の米国株式市場ではS&P500種株価指数が失速。ハイテク株は買われたものの、銀行株が売られ相場の足かせとなった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5808.12 | -1.74 | -0.03% |
ダウ工業株30種平均 | 42114.40 | -259.96 | -0.61% |
ナスダック総合指数 | 18518.61 | 103.12 | 0.56% |
当初1%程度上げていたS&P500種はほぼ変わらずで終了した。市場予想に届かなかった業績見通しが嫌気され、地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)が8.3%急落。KBW銀行株を押し下げた。ゴールドマン・サックス・グループは2.3%、JPモルガン・チェースは1.2%それぞれ下落。
関連記事:NYCB株が約9%急落、弱いガイダンスを嫌気-収益化後ずれへ
制裁破りとマネーロンダリング防止法に違反した疑いで、米当局がテザーを調査しているとの米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)報道を受けて、暗号資産(仮想通貨)関連株は売り込まれた。
ハイテク7社「マグニフィセント・セブン」の株価に連動する指数は1.3%上昇。ここ2日間の上げが2月以来の大きさとなった。
S&P500種は週間で9月初旬以来のマイナス。ナスダック100指数はこの日0.6%高、ダウ工業株30種は0.6%下落した。
ドイツ銀行のヘンリー・アレン氏は「一連の企業決算、11月1日発表の10月雇用統計、米大統領選と向こう数週間はイベントが目白押しで、投資家は小幅な上昇であっても慎重な姿勢を崩していない」と指摘。「それらの内容が幾分明らかになるまで上値を追う雰囲気は乏しい。そのすべてが来年に向けての見通しを立てる上で重要な影響を与えるためだ」と述べた。
マグニフィセント・セブンのうち5社が来週決算を発表する。アルファベットとメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムは広告収入の増加により、利益が2桁の伸びとなる見通し。アップルは中国での新型iPhone販売が追い風となり、業績が伸びる可能性がある。マイクロソフトは決算会見で、人工知能(AI)分野で競合に後れを取っているとの懸念払拭(ふっしょく)に努めるかもしれない。
アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は、来週相次ぐハイテク大手の決算について「投資家が7-9月(第3四半期)の決算シーズンを総括する上で重要な役割を果たす可能性が高い」と指摘。「ファンダメンタルズが堅調である限り、強気相場は短期的なセンチメントの浮き沈みを経ながら、上昇を続けるだろう」と述べた。
この日発表された経済指標では、9月の米製造業耐久財受注は2カ月連続の減少。10月の米ミシガン大学消費者マインド指数(確報値)は6カ月ぶりの高水準となった。1年先のインフレ期待は2.7%で変わらずとなる一方、5-10年先のインフレ期待は3.0%に低下した。
LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は、米ミシガン大学消費者マインド統計について「パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長ら金融当局者にとって間違いなく朗報だ」と指摘。「消費者はインフレが鈍化しているとの確信を得ている。米金融当局がソフトランディング(軟着陸)の実現を目指す中で、投資家は11月1日に発表される10月の雇用統計に注目している」と述べた。
米国債
米国債相場は下落。前日は今週に入っての激しい売りがいったん収まっていた。国債市場のボラティリティーは年初来の高水準を更新しており、今後も振れの大きな展開が予想される。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.50% | 2.8 | 0.62% |
米10年債利回り | 4.24% | 2.8 | 0.67% |
米2年債利回り | 4.11% | 2.8 | 0.69% |
米東部時間 | 16時48分 |
10年債利回りは7月以来の高水準となる4.2%の水準を再び上抜けた。新たな材料に乏しい中で米利下げペースを見直す動きが続いているほか、米選挙が近づいていることが背景にある。
米国債市場は今後、雇用統計から米大統領選、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合まで数多くのイベントを乗り越える必要があり、今週の不安定な動きはこの先もボラティリティーが高まることを示唆している。債券市場のボラティリティー(変動性)リスクを示すICE・BofA・MOVE指数は22日、今年の最高水準をつけた。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、トレイシー・チェン氏は「ボラティリティー高止まりという新たな時代に突入した。過去10年はこのような状況ではなかった」と指摘。「選挙が近づくにつれ、ボラティリティーのさらなる上昇が予想される」と述べた。
為替
ニューヨーク外国為替市場で、ドルは他の主要10通貨全てに対して値上がり。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は週間で4週連続のプラスと、6月以来の長期連続高となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1261.45 | 3.74 | 0.30% |
ドル/円 | ¥152.34 | ¥0.51 | 0.34% |
ユーロ/ドル | $1.0795 | -$0.0033 | -0.30% |
米東部時間 | 16時48分 |
ドル指数は月間でも約2年ぶりの大幅上昇となる勢い。トランプ前大統領の勝利を見込んだ「トランプトレード」の追い風を受けている。
衆議院選の投開票を27日に控え、円は対ドルで下落。午後に入って円売り・ドル買いの流れが強まり、一時は152円38銭まで売られた。
自民・公明の連立与党が2009年以来の過半数割れとなれば、円が一段と売られる可能性がある。
週間でも4週連続の値下がりで、4月以来の長期下落局面となった。
また、クレディ・アグリコルは年末にかけてドル高が進行する余地がまだ残っているとみている。クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は、向こう2カ月における企業のドル売りヘッジ需要が例年よりも少ない可能性が高く、「米大統領選でトランプ前大統領が返り咲けば、米上下両院議会とも共和党が制覇する展開も合わせ、ドル高の号砲となり得ることを示唆している」と述べた。
関連記事:ドルは年内一段高に、トランプ氏勝利すれば買い拍車も-Cアグリコル
原油
ニューヨーク原油相場は3日ぶりに上昇。週間ベースでも堅調だった。中東での紛争が激化するリスクのほか、相場を動かし得る多くの材料を注視する展開が続いている。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は、1バレル=71.65ドル付近にある50日移動平均線を上回った。アルゴリズムトレーダーが買いを加速させ得る水準だ。
事情に詳しい関係者によれば、米国はサウジアラビアに対し、中東情勢がエスカレートした場合に同国を守る用意があることを示唆した。ニューヨーク・タイムズ紙は、イラン当局が戦争の準備を自国軍に命じたと報じた。戦争回避に努めることも同時に求めたという。
USバンクのシニア投資ストラテジスト、ロブ・ハワース氏は「停戦交渉に進展があったなら市場は恐らくもう少し落ち着いただろうが、進展はない」と指摘。「従って市場は週末を控えて緊張感を高めざるを得ない」と述べた。
市場関係者はこのほか、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成される「OPECプラス」による生産計画変更の可能性や、米選挙見通しなども注視している。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比1.59ドル(2.3%)高の1バレル=71.78ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.67ドル(2.2%)高の76.05ドルで引けた。
金
金スポット相場は続伸。週間ベースでは3週連続の上昇となった。
ミシガン大消費者マインド指数が6カ月ぶりの高水準に達し、米当局が金融緩和を慎重に進めるとの見方が強まったが、相場は上昇。
このところの経済統計は米景気の底堅さを浮き彫りにし、金融市場では積極的利下げ観測が後退している。利息の付かない金投資では、金利低下が追い風になることが多い。
ドルと米国債利回りは最近上昇傾向にあり、これは通常、金相場を押し下げる方向に働くが、スポット相場は今週も週間でプラスとなった。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「市場の典型的な相関関係が崩れていることは、共和党がホワイトハウスと上下両院を制する『レッドスイープ』シナリオに対する投資家のヘッジを示唆する」と指摘。
こうした政治シフトが現実のものとなった場合、財源が示されない歳出や債務の対国内総生産(GDP)比率上昇につながり、長期的な財政の持続可能性に対する懸念が強まり得ると述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストらは、インフレとポピュリズムに対するヘッジ手段として金への投資拡大が続いていると指摘した。
関連記事:米選挙前に金への投資増加、インフレとポピュリズムに備え-BofA
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時59分現在、前日比0.2%高の1オンス=2742.50ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は5.70ドル(0.2%)高の2754.60ドルで引けた。
原題:S&P 500 Rally Sputters as Banks, Bitcoin Get Hit: Markets Wrap(抜粋)
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