A trader works on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US. 
A trader works on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, US. Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

28日の米株式相場は上昇。今週は企業決算が相次いで発表される。市場は米選挙のほか、来週の米金融政策決定を左右する重要な経済指標にも備えている。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5823.5215.400.27%
ダウ工業株30種平均42387.57273.170.65%
ナスダック総合指数18567.1948.580.26%

  S&P500種株価指数は主要業種別指数の大半が値上がり。大型ハイテク銘柄で構成するナスダック100指数はほぼ変わらず。小型株のラッセル2000指数は1.6%高。

  ビットコインが3%近く上昇したのに伴い、暗号資産(仮想通貨)関連銘柄が急伸した。トランプ前大統領が所有するソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは22%高。前日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で大規模な支持者集会が開かれた後、個人投資家の買いが続いている。

  米大統領選でトランプ前大統領が勝利すれば、株式とビットコインを保有する投資家は対立候補のハリス副大統領が当選した場合より多くの恩恵を受ける一方、住居費はハリス氏が政権を握るシナリオの方がわずかながら負担軽減につながると期待されている。最新のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査が示した。

  今回の調査に参加した回答者350人の約38%は、共和党候補のトランプ氏が勝利した場合、足元から今後1年の株高加速につながると予想。民主党候補ハリス氏の勝利による株高加速を見込む回答は13%だった。

  モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのリサ・シャレット氏は「市場は過去1カ月にわたり、非常に活発だ。株式バリュエーションに既に織り込まれている強気シナリオをさらに盛り上げている。これで共和党圧勝の確率上昇は織り込み済みリストに入った」と述べた。

  リソルツ・ウェルス・マネジメントのキャリー・コックス氏は、選挙前の不安は株式相場にまだ表れていないと指摘。S&P500種は今月、騰落率がいずれの方向にも1%に達した営業日はないとし、この状態が続けば、10月としては2017年以来となると述べた。また選挙の年では1968年以来だという。

  「忙しい2週間を迎えようとしている」とコックス氏。「選挙関連の話題が最も注目を集めるだろうが、目白押しの企業決算や経済指標を市場は最も気にしている。これらの結果は、特に雇用面が大きなノイズをもたらす可能性がある」と話した。

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「今週発表される大手テクノロジー企業決算と雇用統計は、短期的な市場の勢いを後押しする材料になりそうだが、投資家は来週の選挙が終わるまで様子見したいと考えるかもしれない。特に過去2回の選挙前後でボラティリティーが高まったことを踏まえれば、なおさらだ」と述べた。

  株式は2016年と20年の選挙前1週間に売られ、選挙後に上昇したと同氏は付け加えた。

米国債

  米国債は下落。10年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇して4.29%を付けた。この日実施された2年債および5年債入札での需要は低調だった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.53%3.10.68%
米10年債利回り4.28%4.00.95%
米2年債利回り4.14%3.10.75%
  米東部時間16時54分

  アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は、大統領選の世論調査はかなりの接戦で、どちらが勝利してもおかしくないが、株式と債券両市場のモメンタムからは、トランプ氏返り咲きの結果が好まれているように見受けられる」と指摘。

  「国債利回りは上昇し、ドルは値上がりしている。株式市場では規制緩和や減税で恩恵を受ける分野が買われている」とサグリンビーン氏。「その一部は強い景気や利益拡大に関連しているが、こうしたモメンタムの一部は投資家がトランプ氏勝利をますます織り込みつつあることに起因している可能性がある」と述べた。

  ウォール街のベテランでヤルデニ・リサーチ創設者のエド・ヤルデニ氏は、迫り来る米国の選挙は債券自警団の復活を予兆している可能性があると指摘した。

  「債券自警団が確実に増えつつあるというのはあり得るシナリオだ」と同氏は28日、ブルームバーグテレビジョンで発言。「債務に対処するために、また政府の純利払い費用に対処するために財政赤字削減策を講じるという議論は、いずれの候補者からも一切聞かれていない」と述べた。

為替

  外国為替市場で円の対ドル相場は153円台前半。衆議院選挙での与党過半数割れを受けて、東京時間に1%下落し3カ月ぶり安値を付けて以降は、下げ渋る展開となった。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1261.860.410.03%
ドル/円¥153.29¥0.980.64%
ユーロ/ドル$1.0813$0.00170.16%
  米東部時間16時54分

  RBCの為替戦略世界責任者エルサ・リグノス氏は、「過去約1カ月にわたり、ドルのポジショニングにかなり急激な変化が見られた」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「全面的なドルのロングポジション構築につながったが、とりわけ円とスイス・フランに対して顕著だった」と述べた。

  その上で、「次の上昇局面を迎えるには、米選挙後の政策変化を実際に確認する必要がある。そうすれば、市場は対円でのドル上昇にもう少し期待できるようになるかもしれない」と付け加えた。

  バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「円安傾向により、日本銀行の利上げが12月に前倒しされる可能性がある。しかし当局の準備が整っていないため、今週の会合は時期尚早だ」と話した。

USD/JPY Rises on Japan Political Angst | Spot may climb further should break of technical resistance be sustained
ドルの対円スポット相場出所:ブルームバーグ

  ドル指数はほぼ変わらず。市場は11月1日に公表される10月の米雇用統計に注目している。アナ・ウォン氏率いるブルームバーグ・エコノミクスのチームは、雇用者数が2020年12月以来の減少となると予想している。

  ステート・ストリートのノエル・ディクソン氏は、米金融当局が2025年前半に利下げを実施しない「現実的な可能性」があると指摘。「景気が強い局面で金利が下げられている。基本的に金融状況は依然として非常に緩和的だ。経済におけるこれらの要因はインフレの再加速を引き起こす可能性がある」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は大幅安。イランに対するイスラエルの報復措置では石油施設への攻撃が回避され、対立緩和につながるとの見方が広がった。

  イスラエルは26日、イラン各地の軍事標的に対して空爆を実施。イランが1日にイスラエルに向け弾道ミサイルを発射したことへの報復措置だが、予想よりも抑制されたものとなった。イランの石油や核関連施設、民間インフラへの攻撃は控え、バイデン米政権の要請に沿った格好だ。

Oil Plunges After Israel's Limited Attack on Iran | State media said oil industry activity working normally
WTI原油先物出所:NYMEX

  イランが1日に行ったイスラエルへのミサイル攻撃を受けて、原油市場では戦争プレミアムが復活。10月上旬には相場が1バレル=75ドル超へと押し上げられた。それでも昨年10月7日のハマス急襲後最初の取引で付けた水準を20ドル近く下回っている。中国の需要低迷と来年早期における供給超過見通しが価格下落の背景にある。

  BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「世界の市場から石油が消えるという現実的な不安があったが、その心配はほぼ解消された」と指摘。トレーダーは需要の低迷に再び注目しており、当面の原油価格は下落するのが最も自然な流れだろうと付け加えた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前営業日比4.40ドル(6.1%)安の1バレル=67.38ドルで終了。1日の下落率としてはここ2年余りで最大となった。ロンドンICEの北海ブレント12月限は4.63ドル(6.1%)下げて71.42ドルで引けた。

  金スポット相場は過去最高値付近から下落。イランに対するイスラエルの報復攻撃は多くの人々が予想したより抑制されたものとなり、地政学上のリスクが低下。安全資産としての金の需要が後退した。

  米10年債利回りが上昇したことも金を圧迫した。金投資では利息が付かないことから、金利上昇は向かい風と捉えられることが多い。

Gold Slips | Yellow metal coming off from recent record highs
金スポット価格出所:ブルームバーグ

  ING銀行の商品ストラテジスト、エワ・マンティー氏は「イスラエルの的を絞った報復措置で、対立緩和の可能性が残された」と分析。このほか、最近のデータでは中国の金需要が低迷していることも示されていると付け加えた。中国の需要は今年、金価格上昇の主な一因となっている。

  今週発表される米国のインフレと雇用の統計は、米利下げの道筋を占う手掛かりを与えるとみられる。また貴金属関連の鉱山会社が発表する決算にも注目だ。米大統領選は秒読み段階に入っている。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「選挙を巡る不透明感は、より深い調整を妨げる一因となっている」と分析した。

  金スポットはニューヨーク時間午後2時31分現在、前営業日比6.62ドル(0.2%)安の1オンス=2740.94ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は1.30ドル(0.1%未満)上昇の2755.90ドルで引けた。

原題:Stocks Rise as Traders Map Out Election Game Plan: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Resume Slide After Soft Demand for 2Y, 5Y Auctions(抜粋)

Yen Hits Lowest Since July on Japan Election Result: Inside G-10(抜粋)

Oil Plunges as Israel Limits Iran Strike to Military Targets(抜粋)

Gold Slips as Israel’s Limited Strike Pressures Haven Demand(抜粋)