30日の米株式市場でS&P500種株価指数は下落。日中は前日比プラス圏で推移する場面もあったが、半導体銘柄への売りが相場全体の足を引っ張った。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5813.67-19.25-0.33%
ダウ工業株30種平均42141.54-91.51-0.22%
ナスダック総合指数18607.93-104.82-0.56%

  フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3.4%下落。前日発表した売上高見通しが失望を誘ったアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が、10%を超える下落となったほか、エヌビディア株もさえない展開。

  市場では経済指標も意識された。米国の7-9月実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率2.8%増となった。個人消費は市場予想を上回る3.7%増。食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCE)コア価格指数は2.2%上昇。伸びは米金融当局の目標にほぼ一致した。

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  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「堅調だが急激ではない成長は、現在の経済を巡る環境とうまく調和している。あまりに強い数字となれば、9月の50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げという米金融当局の決定に疑問が呈される一方、弱いGDPであれば景気悪化への懸念が再燃するだろう」と指摘。

  「株高の原動力としては、米金融緩和期待よりも力強い経済と企業業績の方がはるかに良い」と述べた。

  個別銘柄ではサーバーメーカーのスーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)が、33%安と大きく売り込まれた。経営難に陥っている同社の監査法人をアーンスト・ アンド・ヤングが辞任。SMCIのガバナンスと透明性に懸念があることが理由だとしている。前日に発表した7-9月(第3四半期)決算が市場予想を上回ったアルファベットは、2.9%高で取引を終えた。

  エマニュエル・カウ氏率いるバークレイズのストラテジストは、米大統領選を1週間後に控えて投資家が「様子見」モードに入っているとみられるが、そこを通過すれば市場に「アニマルスピリット」が戻ってくる可能性があると指摘。同行によると、ヘッジファンドやシステマティック戦略ファンドは9月に総じて傍観姿勢だったが、10月には株式のポジションを増やした。

  米株は大統領選でのトランプ氏勝利を見込んで上昇してきた可能性があるが、シティグループのストラテジストはホワイトハウスと上下両院を共和党が制する「レッドスウィープ」となった場合には、株売りの合図が点灯するとみている。

  トランプ氏が掲げる法人税引き下げが企業業績にはプラスに働く可能性があるため、一般的に同氏の勝利は株式相場の強材料とみられている。しかしシティのストラテジストは、「陶酔に近いセンチメント」で6カ月連続高に向かっているS&P500種は、調整に向けた機が熟していると分析している。

  JPモルガン・チェースのストラテジストは、世界中で企業業績の下方修正が優勢であり、その面で株価の下支えは期待できないとしている。

国債

  米国債相場はまちまち。この日発表された各経済指標を受け、市場では米利下げ観測が後退。金融政策動向に最も敏感な2年債利回りは7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.51%1.00.22%
米10年債利回り4.30%4.20.99%
米2年債利回り4.17%7.61.86%
  米東部時間16時33分

  米財務省は四半期定例入札での中長期債の発行規模を前四半期から据え置いた。30日の発表によると来週実施する3、10、30年債の入札は発行額が計1250億ドル(約19兆1600億円)。この規模は市場でも広く予想されていた。

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  また同省は「少なくとも向こう数四半期」は中長期債の発行を増やす必要はないとのガイダンスも維持。債券ストラテジストの間では、入札規模を維持するとのガイダンスを財務省が修正する可能性があるとみる向きも一部にあった。

  トランプ前大統領、ハリス副大統領のいずれも大統領選の争点として赤字削減を大きく取り上げていないことを踏まえると、期間長めの国債で発行規模をいずれ拡大することは不可避とみられている。

為替

  外国為替市場ではドル指数が小幅安。主要10通貨のほとんどに対して下落した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1261.16-1.80-0.14%
ドル/円¥153.37¥0.010.01%
ユーロ/ドル$1.0858$0.00390.36%
  米東部時間16時33分

  円の対ドル相場は、日本銀行の金融政策決定会合や米雇用統計などを控えて方向感を欠く動きが続いた。ニューヨーク時間午後4時時点では1ドル=153円前半で推移。日銀が31日に発表する政策は現状維持が広く予想されている。

  10月の円相場はこのまま行けば、月間ベースで2016年終盤以来の大幅安となる可能性がある。

ドル・円の推移
出所:ブルームバーグ

  10月のADP統計では、民間雇用者数の伸びが加速し、1年余りで最大の増加。労働需要が極めて堅調なことが示された。

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  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「ADP統計と非農業部門雇用者数は必ずしも一致しないが、これは非常に強い数字であり、11月1日に発表される雇用統計では上振れリスクに警戒が必要だ」とリポートに記した。

  来週の米大統領選後に市場が大きく変動するリスクに備える動きが広がっており、ドルの変動をヘッジするコストは約2年ぶりの高水準となっている。

   ブルームバーグ・ドル・スポット指数の1週間物オプションにおけるインプライドボラティリティーは30日、リセッション(景気後退)懸念が金融市場で強まった2022年12月以来の高水準を付けた。

原油

  ニューヨーク原油相場は反発。原油在庫の減少や、中東で戦闘が激化する可能性を背景に3日ぶりに上昇した。

  イスラエルの閣僚は親イラン民兵組織ヒズボラとの戦闘が年内に終結し得るとの認識を示したが、イスラエル軍トップはイランが再び攻撃を仕掛けた場合、同国を「徹底的に攻撃する」と言明した。

  エミリー・アシュフォード氏らスタンダード・チャータードのアナリストは「原油市場が落ち着きを取り戻したのは性急だったと考えられる」とリポートで分析。「長期にわたって攻撃がエスカレートするリスクがあり、軍事的にも外交的にも当面は解決の見通しが立っていない」と続けた。

  米政府の統計で原油在庫が先週51万5000バレル減少したことが示され、これも相場の支援材料となった。減少幅は業界団体の予測よりは小さかったが、ブルームバーグのユーザー予想より強気な数字だった。ブルームバーグのユーザーは87万1000バレルの増加を見込んでいた。

Oil Edges Higher With Mideast Risks in Focus | Market shifting attention to global supply-demand balances, OPEC+
WTI先物とブレント先物出所:ICE、NYMEX

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物12月限は、前日比1.40ドル(2.1%)高の1バレル=68.61ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント12月限は1.43ドル(2%)上昇の72.55ドルで引けた。

  金スポット相場は続伸し、過去最高値を更新した。米国の選挙を控えて安全資産としての需要が高まった。米民間雇用者とGDPのデータが米経済の底堅さ継続を示した後も、金は堅調に推移した。

  金スポットは一時1オンス=2790.02ドルと、前日に記録したそれまでの最高値を上回った。この日発表されたADPの民間雇用統計と米GDPを受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)が次回11月会合を含め今後数四半期に利下げを継続する見通しは維持されそうだ。金投資には利息が付かないことから、借り入れコストの低下は金にプラスになると捉えられることが多い。

Gold Tops Record as Election Sparks Haven Demand | Bullion is up by more than a third this year
金スポット価格出所:ブルームバーグ

  スタンダードチャータード銀行のアナリスト、スキ・クーパー氏は「選挙を控えて市場のポジショニングは高くなっているが、選挙以外にも米追加利下げ期待や金融市場全般の情勢、地政学上の不透明感も影響している」とリポートで分析。「トランプ前大統領が勝利するシナリオでは関税拡大の影響と、そうした関税に伴うインフレ圧力に市場は注目している」と述べた。

  金スポットはニューヨーク時間午後2時39分現在、前日比13.58ドル(0.5%)高の1オンス=2788.32ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は19.70ドル(0.7%)上昇の2800.80ドルで引けた。

原題:Bad Day for Chipmakers; Microsoft Up in Late Hours: Markets Wrap(抜粋)

Stocks Climb on ‘Solid, But Not Blistering’ Growth: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Drops, Pound Lags Behind Peers After Budget: Inside G-10(抜粋)

Oil Rebounds From Two-Day Slump With Middle East Back in Focus(抜粋)

Gold Rises to Record High as Looming US Election Fans Demand(抜粋)