Rita Nazareth
- 10月の米雇用者数は2020年以来の低い伸び-ハリケーンやストが影響
- 円は151円79銭まで上昇後に上げを消す-米国債利回りは上昇
1日の米株式相場は反発。ノイズの大きい経済指標や接戦となっている米大統領選を巡る不確実性よりも、米企業業績の強さが意識された。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5728.80 | 23.35 | 0.41% |
ダウ工業株30種平均 | 42052.19 | 288.73 | 0.69% |
ナスダック総合指数 | 18239.92 | 144.77 | 0.80% |
業界の先行指標となる企業から相次いで堅調なシグナルが発信される中、S&P500種株価指数は3営業日ぶりに上昇。ここ最近の売りを一手に浴びていた大型テクノロジー株が上げを主導した。
前日の決算が好感されたアマゾン・ドット・コムやインテルは急伸。エクソンモービルとシェブロンはいずれも純利益と生産量、売上高がアナリスト予想を上回った。長引くストライキの終結が近いとの楽観から、ボーイングも値上がり。一方、慎重な業績見通しを示したアップルは下落した。
10月の米雇用者数は2020年以来の低い伸びとなった。一方で失業率は前月から変わらず。10月は大型ハリケーンや大規模なストライキが統計に影響した。来週は米大統領選の投票日を迎え、連邦公開市場委員会(FOMC)会合も開催される。今回の雇用統計は、これら2つのイベントの前に発表される最後の主要な経済データとなった。
関連記事:米雇用者数、10月は1.2万人増にとどまる-ハリケーンとスト影響 (4)
eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「経済指標や企業決算、FOMC会合、米選挙で大忙しの状況が続いている」と指摘。「これらのイベント前後でボラティリティーが多少高まる場面もあったが、これまでのところ大局的な見方は変わっていない。それが変わらない限り、強気相場の長期的な推進力も維持される」と述べた。
S&P500種は実際、年初から10月末までに約20%上昇しており、ベスポーク・インベストメント・グループのストラテジストによれば、大統領選挙年としては1936年以来の大幅高となっている。歴史的に見ても同期間にこれほど大きく値上がりした年は、通常よりも好調な年末を迎えているとベスポークは分析した。
BMOキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、イアン・リンジェン氏は、最新の雇用統計は全体的に残念なものとなったとした上で、ノイズが多過ぎて、労働市場の状況を大ざっぱに把握し直すことができないと指摘した。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのマルチセクター投資責任者リンゼー・ロスナー氏は、「この日のデータに示された弱さの一部を、FOMCは一度限りの要素のせいにするだろうが、それでもこの弱さは来週の会合で緩和サイクルが継続されることを裏付けた」と指摘。「嵐が吹き荒れた統計だったが、11月の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げに向けた空模様は晴れてきた」と述べた。
プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は、市場は10月の雇用統計を脇に置いてもよさそうだとし、ハリケーンが雇用の数字に大きな打撃を与え、労働市場の力強さを曇らせたのはかなり明確だと指摘。「ここ数週間の経済活動データは意外なほど強かったものの、米金融当局は緩和サイクルを継続しなければならないことが再確認された」と話した。
関連記事:【米雇用統計】来週の25bp利下げ「空模様晴れた」-市場関係者の見方
国債
米国債は下落(利回りは上昇)。雇用統計の発表後に買われる場面もあったが、売りに転じた。来週の四半期定例入札や米大統領選、FOMC決定を控え、リスクを減らす動きが進んだ。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.58% | 10.1 | 2.26% |
米10年債利回り | 4.38% | 9.7 | 2.27% |
米2年債利回り | 4.21% | 3.5 | 0.84% |
米東部時間 | 16時54分 |
ブラックロックのリック・リーダー氏は「最終的には、この日の雇用統計に留意することになるが、天候の影響が不透明なため、これに執着することはない」と指摘。「結局、FOMCは来週25bpの利下げを実施し、恐らく12月にも行うと当社では考えている。しかし今後数日、数週間にわたって発表される一連のデータや情報にもわれわれは対応する準備ができている」と話した。
外為
円は対ドルで下落。米雇用統計の発表直後にはドル売りが優勢となり、円は一時1ドル=151円79銭に上昇する場面もあった。その後は米選挙に注目が移るにつれてドルが買い戻され、円は一時0.7%安の153円09銭まで売られた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1263.87 | 5.05 | 0.40% |
ドル/円 | ¥152.98 | ¥0.95 | 0.62% |
ユーロ/ドル | $1.0835 | -$0.0049 | -0.45% |
米東部時間 | 16時54分 |
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「今回の雇用データはネガティブな方向に傾くだろうと、トレーダーらは統計発表前から分かっていた。適切な判断でこれに反応している」と述べた。
みずほ・インターナショナルのマクロ戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は「異例なほどに予測の難しい雇用者数だった」と指摘。「ハリケーンとストライキで雇用の伸びが抑えられた」と話した。
その上で、「FOMCはこれを見越して判断するはずだ。彼らの見方がこれで変わるとは思えない。米選挙結果の方がはるかに重要だ」と続けた。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「来週の米選挙にかけて、ドルは引き続き押し目で買われる可能性がある」と話した。
米選挙を控えた安全逃避先としても、ドルは買われている。月間ベースでのドルは10月に2年ぶりの大幅高となった。一連の好調な経済指標で、米利下げペースが緩やかになることが示唆されたと受け止められた。
原油・金
ニューヨーク原油相場は小幅ながら3日続伸。イランが数日中にイラク領内からイスラエルを攻撃する準備を進めている可能性があるとの報道に反応した。ただ週間では下落。中東紛争が供給の混乱につながるとの見通しに懐疑的な見方も広がっている。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は今週、3.2%安となった。先週末のイスラエルによるイランへの攻撃が限定的なものとなり、対立により中東のエネルギーインフラが脅かされるとの見方が後退した。ただ原油先物が10月28日に大きく下げた後、市場は「あまりに急速に落ち着きを取り戻した」と一部の市場関係者は指摘。ここ数日は下落分の一部を取り戻す格好となっていた。
ニュースサイトのアクシオスは、イランがイラク国内で支援する民兵組織を通じたイスラエル攻撃を準備していると報道。匿名のイスラエル情報筋2人の話として、無人機と弾道ミサイルを使用した攻撃になる見通しだと伝えた。この報道を受けた1日の市場で原油先物は一時急伸したが、その後は対立激化の程度やその可能性について懐疑的な見方が広がり、上げ幅を縮小した。
レイモンド・ジェームズ・アンド・アソシエーツのアナリスト、パベル・モルチャノフ氏はイスラエルとイランについて「全面戦争を引き起こさずに強硬姿勢をアピールしようと、振り付け通りにダンスしているようなものだ。とはいえ、中東を巡リ日々報じられるニュースは重要な材料となっている」と指摘した。
1日の原油市場でニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比23セント(0.3%)高の1バレル=69.49ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は29セント(0.4%)上昇し73.10ドルで引けた。
金スポット相場は続落。朝方は堅調に推移し、米雇用統計の発表後には上げを拡大する場面もあったが、その後は下げに転じた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比8.59ドル(0.3%)安の1オンス=2735.38ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は10セント下落し2749.20ドルで引けた。
原題:Stocks Rise as Dip Buyers Fuel Wall Street Rebound: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Fall, Erasing Jobs Report Gains; Swap Spreads Plunge(抜粋)
Dollar Rises, Volatility Soars as US Election Nears: Inside G-10(抜粋)
Dollar Recovers After Initial Drop to Jobs Report: Inside G-10(抜粋)
Oil Edges Up on Report Iran Plans to Attack Israel Via Proxies(抜粋)