米株式相場は6日に商いを伴って大幅高となり、主要3指数はそろって最高値を更新した。大統領選に勝利したトランプ氏が経済成長を促す政策を進め、米企業の収益を押し上げるとの期待が背景。共和党が上下両院も支配するとの見方も広がった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5929.04 | 146.28 | 2.53% |
ダウ工業株30種平均 | 43729.93 | 1508.05 | 3.57% |
ナスダック総合指数 | 18983.46 | 544.29 | 2.95% |
S&P500種株価指数は2.5%高で終了した。ビリニー・アソシエーツとブルームバーグのデータによれば、同指数の上昇率は選挙翌日としては過去最高。今年に入って48回目の最高値更新となった。ダウ工業株30種平均は一時1556ドル上昇、終値は1508ドル高だった。
小型株で構成されるラッセル2000指数は5.8%上げた。トランプ氏の保護貿易主義的スタンスの恩恵を受けるとの観測が広がった。
銀行株も買われた。トランプ氏が公約に掲げた減税や規制緩和が銀行業界に追い風になるとの見方が背景。KBW銀行株指数は10%余り上昇した。
同氏が所有するソーシャルメディア運営会社、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは朝方に35%近く急伸。その後は上げ幅を縮小した。テスラは15%高となった。
恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は8月以来の大幅低下。売買高も大きく膨らんだ。
バーンセン・グループのデービッド・バーンセン最高投資責任者(CIO)は「M&A(企業の合併・買収)活動が持ち直すほか、追加減税策が打ち出される、あるいは現行の減税措置が延長されるとの想定がある。これが株式を力強く支える環境を生み出す」と述べた。
ストラテガスのライアン・グラビンスキー氏は選挙結果を受けた相場について、「最大のポイントは市場が切望する確実性を得たことだ」と指摘。「企業と消費者いずれの信頼感も改善するだろう。市場の関心は、明日の連邦公開市場委員会(FOMC)に移るはずだ。米10年債利回りは4.5%に近づいている。過去2年に、リスク資産が悪影響を受けてきた水準だ」と述べた。
トゥルーイストのキース・ラーナー氏は「市場はきょう、トランプ氏が掲げる政策の明るい面を大半織り込みつつある。しかし、背景は複雑だ。金利や財政赤字懸念、米金融当局の利下げ回数が減る可能性、関税。これらがいずれ、きょうの大幅な株高を打ち消す可能性がある」と指摘した。同社の分析によれば、強気相場はまだある程度続く余地があるとも述べた。
米国債
米国債相場は大幅安(利回り急上昇)。トランプ氏が大統領選に勝利したことで、インフレ加速を見越した取引があらためて活発化した。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.61% | 17.5 | 3.93% |
米10年債利回り | 4.43% | 16.3 | 3.81% |
米2年債利回り | 4.26% | 8.7 | 2.09% |
米東部時間 | 16時51分 |
この日の米国債の下げは過去5年間で最大級の大きさだった。利回りは全年限で9-17ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ほど上昇。米金融当局による今後の利下げ余地が小さくなるとの見方が広がった。7日のFOMCでは0.25ポイントの利下げが決まるとの予想が依然優勢だ。
利回り曲線全体が上昇してスティープ化することを見込んだ、いわゆるトランプトレードに賭けてきた投資家にとっては、その判断の正しさを裏付ける動きだ。
30年債の利回りは一時24bp上げて4.68%と、2020年3月以来の大幅上昇。ただ、午後に行われた30年債入札の需要が堅調だったことを受け、その後は上げ幅を縮小した。
フランクリン・テンプルトン・インスティテュートのスティーブン・ドーバー氏は「債券市場は経済成長とインフレの加速を予想している」と指摘。「これらの組み合わせは、市場が見込んでいる米利下げのペースを減速させ得る。利下げを停止させる可能性さえある」と述べた。
トランプ氏が公約に掲げてきた減税や関税引き上げなどは、物価上昇圧力を高める可能性がある。10年債利回りはこの日、一時21bp上昇の4.48%と、7月以来の高水準に達した。2年債利回りは一時13bp上げた。
米国債相場の動きはまた、トランプ氏の公約が財政赤字を拡大させ、国債増発を引き起こすとの懸念も示唆している。
マッコーリーのティエリー・ウィズマン氏は「トランプ氏からのサプライズが向こう数カ月にあるとしたら、無責任な財政ではなく、財政引き締めに関するものだろう」とし、警戒を促した。「市場がそれを認識した時には、米長期債利回りは安定する、ないし低下する可能性がある」と述べた。
外為
ニューヨーク外国為替市場では、ドル指数が一時1年ぶりの高値を付けた。トランプ氏の政策が米金利を高止まりさせるとの見通しから、米国債利回りが急上昇したことが背景。
円はドルに対して一時2%下げ、ユーロは対ドルでパリティー(等価)が視野に入った。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1269.90 | 15.79 | 1.26% |
ドル/円 | ¥154.64 | ¥3.02 | 1.99% |
ユーロ/ドル | $1.0729 | -$0.0201 | -1.84% |
米東部時間 | 16時51分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は2022年以来の大幅高。一時は1.7%上昇した。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントの上級ポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は「一段と保護主義的な貿易政策が導入される見通しや、財政が拡大してインフレリスクが高まる可能性。これらがドル高の流れをさらに確かなものにする」と指摘した。
バークレイズの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「この先、インフレ圧力が高まれば、米金融当局がハト派姿勢を弱めるリスクがある。トランプ氏の政策により、そうなる可能性は高い」と分析した。
円は一時1ドル=154円70銭と、7月下旬以来の安値を付けた。
三菱UFJ信託銀行ニューヨークのセールスおよびトレーディング部門責任者、小野寺孝文氏は「トランプ氏の勝利は既に相場に織り込まれていた」とし、「ドル・円は1ドル=155円を上回る可能性があるが、160円を付けるのは難しいだろう」と述べた。
また、1ドル=155円を超える円安となれば、日本の当局が「口先介入をする可能性がある」が、160円まで円安が進まなければ実際の介入に踏み切ることはないと予想した。
ユーロは対ドルで一時2.3%下落し、1ユーロ=1.0683ドルを付けた。
原油
ニューヨーク原油相場は反落。トランプ氏勝利の影響を巡って思惑が交錯し、もみ合う場面が目立った。
トランプ氏の勝利でドルが急上昇したため、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は一時3.1%下落した。ただ、次期政権が中東での紛争をエスカレートさせるか、イランへの制裁を強化するとの見方から下げ幅を縮小した。金や銅が急落し、株式が史上最高値を更新しているのとは対照的に、原油相場は方向感を欠いた。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油はトランプ氏勝利後に明確な方向性を見いだせない唯一の資産クラスだ」と指摘。しかし、中東の安定に対する懸念が再燃しているほか、「トランプ氏がイランの原油輸出に対する制裁を確実に履行した場合、供給に混乱を来す可能性がある」ため、価格はいくらか下支えされていると続けた。
ハリケーン「ラファエル」の影響で、米国メキシコ湾岸の石油生産が日量約160万バレル減少する恐れがある。シェブロンは5日、同地域での生産を停止し、シェルは一部の要員を避難させた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前日比30セント(0.4%)安の1バレル=71.69ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は0.8%下落し74.92ドルで引けた。
金
金スポット相場は大幅反落。トランプ氏がホワイトハウスへの返り咲きを決め、ドルが上昇したため、商品相場は全般に圧迫された。トランプ氏の勝利による貿易や地政学、米経済への影響を見極めようとする動きも見られた。
米大統領選の結果は世界中の市場に影響し、ドルが上昇したため、金スポットは6月以来の大幅安を記録した。ドル高は多くの買い手にとって金属を割高にする。
トランプ氏は主要な激戦州を制して勝利を決定づけ、共和党は上院で多数派となった。選挙結果が法廷での争いに発展する可能性があったため、金は過去1カ月、安全性を求める動きに押し上げられていたが、決定的な結果となったことから利益確定の売りが出た。金は10月に入ってから4.2%、110ドル近く上昇。投機筋の買越幅は4年ぶりの高水準近くにある。
ジュネーブを拠点とするMKS・PAMPの金属戦略責任者、ニッキー・シールズ氏は金売りについて、「かなり膨らんでいたポジションと利回り上昇、ドル高が組み合わさったものだ」と分析。「トランプ氏の勝利が決定的で、かつ早い段階で確定したことで、米国の政治的な不確実性が取り除かれ、地政学的なプレミアムが幾分解消された」と述べた。
IGアジアのマーケットストラテジスト、ヤップ・ジュン・ロング氏は「トランプ氏勝利によるドル高と利回り上昇は金にとって逆風になるかもしれないが、貿易摩擦が起きた場合の潜在的な安全資産としての需要とバランスが取れるだろう」と述べた。
トランプ氏の政策は財政赤字を拡大させる可能性が高く、その結果生じるインフレリスクが、物価上昇に対するヘッジとして金の魅力を高める可能性があるとアナリストはみている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時34分現在、前日比76.49ドル(2.8%)安の1オンス=2667.50ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は73.40ドル(2.7%)下落し2676.30ドルで引けた。
原題:S&P 500 Sees Best Post-Election Day in Its History: Markets Wrap(抜粋)
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