▽委員長ポストは野党結束し主導、自民が大幅譲歩強いられる…立民・野田代表「国会の風景変わる」<読売新聞オンライン>2024/11/09 07:01

「議運」と引き換え 「予算」手放す

 衆院各派協議会での委員長ポストを巡る攻防は、野党主導で決着した。自民は強気の姿勢で交渉に臨んだものの、衆院選で与党が過半数を割り込んだことで大幅な譲歩を強いられた。今後、与党が厳しい国会運営を迫られることは必至だ。

「満額回答」 「これから国会の風景が変わる。『これこそ国会審議だ』という改革を進めていきたい」

 立憲民主党の野田代表は8日の記者会見で、委員長ポストが大幅に増えたことを踏まえ、今後の国会審議に臨む意気込みを示した。

 11日召集の特別国会に向け、院の構成などを議論してきた衆院各派協議会は8日、常任・特別委員長などのポスト配分を決定した。計17の常任委員長ポストは衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく様変わりした。

 野党に割り当てられた七つのうち、五つを占めた立民幹部は「満額回答に近い」と満足そうに語った。

結束

 1日に始まった協議会では、自民は当初、強気の姿勢を崩さず、衆院選前と同水準のポストを要求。これに野党が反発し、議論は 膠着こうちゃく 状態に陥っていた。

 だが、与党が過半数を割り込んだ状態での交渉は、野党有利で進んだ。協議会での議論が決裂し、本会議採決に持ち込まれれば、野党が押し切れる算段が付いていたためだ。首相指名選挙では足並みがそろわない野党も、ポストの要求では結束しており、自民幹部は「初めから勝算のない交渉だった」と打ち明ける。

 国会での主導権を巡り、変化の象徴となりそうなのが予算委員長ポストの行方だ。自民は、法案を参院に送るために必要な本会議の開催を決める議院運営委員長を維持するのと引き換えに、予算委員長を手放した。国会運営に精通する立民の安住淳氏が委員長に就くことが固まっている。

 数あるポストのうち、立民は法務委員長も強く要求した。選択的夫婦別姓の導入を主張する立民は、別の委員長ポストを自民に返上してまでこだわったほどだ。公明党も導入に賛成の立場で、年明けの通常国会では議論が進展する可能性もある。

死守 立民は政治改革特別委員長も担うことが決まり、自民派閥の「政治とカネ」の問題で攻勢を強める構えだ。

 一方で、自民が「死守」したのが内閣委員長だ。重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた関連法案の審議に備えた対応で、日米同盟の連携強化などの観点から与野党を問わず法整備を求める声が出ている。

 政府は臨時国会への法案提出は見送る方針だが、石破首相は7日、早期の国会提出に向けて作業を加速するよう平デジタル相に指示した。国民民主党の玉木代表も8日、東京都内で「法整備は我々も協力するので、急いでやるべきだ」と述べ、法案審議に協力する考えを示している。

憲法審会長に枝野氏…初の野党

 衆院憲法審査会長は立憲民主党に割り当てられ、枝野幸男元代表が就任することが固まった。憲法審査会長ポストを野党が務めるのは初めて。

 審査会は憲法を含め、情報監視、政治倫理の計三つある。自民、立民両党は委員長について「自民2、立民1」で配分することで合意した。立民は憲法か政治倫理のどちらかを譲るよう強く求めた。自民は政治倫理を渡した場合、派閥の「政治とカネ」を巡る政倫審の開催などで立民主導になることを懸念し、憲法を手放した形だ。

 衆院選の結果、改憲に前向きな勢力が、国会発議に必要な総定数の3分の2にあたる310議席を下回ったことも決断を後押しした。

 とはいえ、憲法改正は自民の「党是」で、党内からは早くも反発の声が出ている。自民の坂本哲志国会対策委員長は8日、党内の保守派の重鎮らに謝罪して回った。

額賀議長、続投 玄葉氏、副議長に

 衆院は8日、議院運営委員会に代わる各派協議会で、自民党の額賀福志郎議長を続投させ、副議長に立憲民主党の玄葉光一郎・元外相を選出することで合意した。11日召集の特別国会本会議で正式決定する。

 額賀氏は、安定的な皇位継承に関する与野党協議が継続中であることを踏まえ、続投となった。副議長は野党第1党から選ぶのが慣例となっている。玄葉氏は、民主党政権で外相のほか、国家戦略相などを務めた。

 額賀福志郎氏(ぬかが・ふくしろう)茨城2区。自民党政調会長、財務相。早大。当選14回。80歳。(自民、無派閥)

 玄葉光一郎氏(げんば・こういちろう)福島2区。外相、国家戦略相。上智大。当選11回。60歳。(立憲民主)

関連情報

▽国民民主、財源確保は「政府・与党の責任」 「103万円の壁」解消へ自公と強気の協議<産経ニュース>2024/11/8 19:00