11日の米国株式市場でS&P500種株価指数は小幅高。選挙結果を受けた買いは勢いを失った。ハイテク株が売られ、他の株価上昇を相殺した。ビットコインは過去最高値を更新し、初の8万8000ドルに乗せた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
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S&P500種株価指数 | 6001.35 | 5.81 | 0.10% |
ダウ工業株30種平均 | 44293.13 | 304.14 | 0.69% |
ナスダック総合指数 | 19298.76 | 11.98 | 0.06% |
景気敏感株が比較的好調となり、小型株で構成するラッセル2000指数は1.5%上昇し、2021年以来の高値。銀行株の指数は2.4%高。大型ハイテクの大半は下落し、エヌビディアは1.6%安。テスラは急伸が続き9%上昇。S&P500種の均等加重バージョンであるS&P500イコールウエート指数は、S&P500種を上回るパフォーマンスだった。イコールウエート指数ではアップルもダラー・ツリーも同じウエートで算出され、大型株の影響が小さい。株高の裾野が広がっている可能性を示唆した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のサビタ・スブラマニアン氏は「選挙前の株式トレードに形勢逆転がなかったことは、選挙後の活発なトレードを意味する」と指摘。「選挙の年は、特に大きな情勢変化がかかっている選挙の年は、アクティブ投資ポートフォリオの逆転が増える傾向にある。今年はこれまでのところ、クライアントのポジショニングは一貫しており、ハイテクから銀行や景気循環株へのローテーションが拡大する余地を残している」と述べた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「米選挙と追加利下げを通過し、このまま強気相場が続いて最高値を更新できるかどうかが問題になっている」と指摘。「これほど強く上昇してきた後には利益確定が発生し得るが、それを除けば相場がさらに上値を追えるのかどうかは今週のインフレ統計が左右するかもしれない」と述べた。
10月の米消費者物価指数(CPI)では物価圧力緩和への道が平たんではないことが浮き彫りになりそうだ。食品とエネルギーを除いたコア価格指数は前月比、前年同月比ともに9月と同じ数字が見込まれている。
年末にかけての米株式相場はトランプ氏が初めて当選した8年前より強い上昇基調となり得ると、JPモルガン・チェースのトレーディングデスクは予想する。
同デスクの米国マーケットインテリジェンス責任者を務めるアンドルー・タイラー氏は「2024年のリターンは16年を上回るだろう」と11日付リポートに記した。中国をはじめ、英国、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコで経済成長が8年前より軟化しているため、S&P500種は大いに有利だと指摘した。
トランプ次期米大統領による経済政策への期待が「アニマルスピリッツ」を解き放ちつつあると、ベテランストラテジストのエド・ヤルデニ氏は指摘。S&P500種は2029年末までに1万の大台に到達するだろうと述べた。
同氏の予測は29年末までに66%の上昇を意味し、極端なまでに強気な見方だ。米選挙を終えて、ウォール街で株式市場への楽観が強まっていることがあらためて示された。ヤルデニ氏のS&P500種目標水準は24年が6100、25年が7000、26年が8000に引き上げられた。
「減税と規制緩和を促進するビジネス志向の政権に交代することも、株式投資家の心を躍らせている」と同氏は11日付リポートで述べた。
選挙を追えて、投資家の焦点は経済成長に戻り、株式市場では企業決算が重要な材料になる。
7-9月(第3四半期)決算の発表は最終ステージに入った。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたデータによれば、S&P500種採用企業は平均で予想の2倍に相当する8.4%の増益を記録。来年に向けたウォール街の見通しはさらに楽観的で、2021年以来の大幅となる13%増益が見込まれている。
米国債
米国債の現物市場は退役軍人の日で休場。先物は軟調に推移しており、アジア時間での取引再開では、先週のトランプ氏当選をきっかけとした売りが再燃するとみられている。
LPLファイナンシャルのストラテジストチームは11日付リポートで「経済データの改善と、恐らくハト派に傾き過ぎた連邦公開市場委員会(FOMC)、そしてトランプ次期政権の政策がより詳細に明らかになることで、米国債利回りは上昇する可能性がある」と指摘。「利回りが現行水準から有意に下がるには、経済にネガティブなサプライズが必要になる」と分析した。
外為
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル指数が1年ぶり高水準を更新。いわゆるトランプトレードの継続が背景にある。主要10通貨では円が最も下落。ユーロは対ドルで4月以来の安値を付けた。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
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ブルームバーグ・ドル指数 | 1274.06 | 6.29 | 0.50% |
ドル/円 | ¥153.69 | ¥1.05 | 0.69% |
ユーロ/ドル | $1.0657 | -$0.0061 | -0.57% |
米東部時間 | 16時38分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.7%上昇し、23年11月以来の1276.43を付けた。
トランプ氏の当選による恩恵が期待されるポジションの構築が続いている。トランプ氏勝利で米利下げ見通しが後退。次期政権による景気刺激策でインフレ圧力が上昇するとの臆測がある。
13日発表の10月CPIも焦点の一つ。コア指数は前月比0.3%上昇が見込まれている。
「米選挙結果はドルを支援すると当社では考えている。関税の影響や財政政策への期待がその理由だ」とモルガン・スタンレーのジェームズ・ロード氏は11日付リポートで指摘。「次期政権が早期に関税措置を検討し、2025年の早い時期に効果をもたらすべく財政投入による景気支援を前倒しするようであれば、ドルへのインパクトはより大きくなり、早い時期に表面化すると考えられる」と述べた。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの市場戦略グローバル責任者ウィン・シン氏は「米金融政策の織り込み直しを一歩下がって眺めると、スワップ市場は金利の最終地点であるターミナル金利水準を3.5%付近として織り込みつつある。9月に利下げが始まった直後は2.5%付近だった」と話す。「ドルが一気に上昇し始めたのは無理もない」と述べた。
ドルは対円で一時0.9%上昇し、153円95銭に達した。6-7日の高値水準である154円70-71銭が抵抗線になっているとみられている。
11日召集の特別国会では、与党が過半数割れしている衆院で30年ぶりの決選投票が行われ、石破茂首相が再び指名された。トランプ次期米大統領と今月会談する方向で検討する方針だと伝えられている。
ミーラ・チャンダン氏率いるJPモルガン・チェースのストラテジストらは「選挙結果はドルの例外性を際立たせる」とリポートで指摘。「他の通貨にはない優れた成長と株式市場、高利回り、防衛的な側面がドルにはある」と述べた。
アムンディUSの債券・為替戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏は「予測可能な将来において」ドルを支える要因が複数あると指摘する。「関税のリスクとそれが米国内外の成長とインフレ見通しに与える意味合いを、市場はようやく真剣に受け止め始めた」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、金利が「おそらく来年9月ごろには2%近くまで」低下する可能性があると述べた。
トランプ氏の当選はユーロと米利下げサイクルの両方に影響すると指摘するのは、ラボバンクの外国為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏だ。「欧州中央銀行(ECB)はハト派路線を歩き始めた。一方でトランプ次期政権の政策がインフレに与える影響は、米緩和サイクルの短縮につながると当社ではみている」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は続落。世界最大の石油輸入国である中国の需要見通しの弱さが、引き続き市場を圧迫している。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=70ドルを割り込み、68ドル台となった。
中国の国家統計局が9日に発表した10月のCPIは前年同月比0.3%上昇と、伸びは前月の0.4%から鈍化。生産者物価指数(PPI)は引き続き低下し、中国政府の最新の景気刺激策ではデフレ脱却には不十分であることが示唆された。
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WTI先物のプロンプトスプレッド(期近2限月の価格差)は6月以来の最小水準となっており、現物市場の短期的な逼迫が緩和されつつあることを示唆している。
原油トレーダーは、2025年に向けての世界需要や、トランプ氏のホワイトハウス返り咲きが為替市場や中東情勢に与える影響を見極めようとしている。来年の原油市場は供給過剰が広く予想されている中、今週は石油輸出国機構(OPEC)月報など需給見通しが相次いで出される。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前営業日比2.34ドル(3.3%)安の1バレル=68.04ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は2.04ドル(2.8%)下げて、71.83ドルで引けた。
金
金相場は大幅に下落。利益確定の売りが一段と強まり、スポット価格は2%を超える下げで1カ月ぶりの安値に沈んだ。金スポット相場は先週、ドル上昇などを背景に週間ベースで1.9%安となっていた。
ドイツ銀行のアナリスト、マイケル・シュエ氏は、S&P500種とドル両方の強含みは「ドルが正当な理由で上昇していると受け止められるため、金相場にネガティブな反応をもたらすことが多い」とリポートで指摘した。
同氏によると、金市場では投機的なポジションと上場投資信託(ETF)の資金流入による支えも弱まっている。投機的なポジションは9月中旬にピークを迎え、現在は金価格が2400ドル前後だった8月と同程度の水準まで減っているという。
ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は前営業日比77.10ドル(2.9%)下落し1オンス=2617.70ドルで引けた。
原題:Stock Rotation Hits Big Tech as Small Caps Rally: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Extends Trump-Fueled Gains; Euro, Yen Slip: Inside G-10(抜粋)
Dollar Rises to Yearly High as Trump’s Win Powers Advances (1)(抜粋)
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Oil Retreats on Weak Outlook for Chinese Demand, Stronger Dollar(抜粋)
Gold Hits One-Month Low as Traders Book Profit on Strong Dollar(抜粋)