日本銀行の植田和男総裁は、12月の金融政策決定会合で利上げの是非を巡り活発な議論が行われるであろうことを示唆する、これまでで最も明確なヒントを提供したようだ。

  植田総裁は、「現時点で会合の結果を予測するのは不可能だ」と指摘。その上で、次回会合が開かれる12月に向けて「まだ1カ月程度ある。それまでの期間に非常に多くのデータや情報が利用可能となるだろう」と述べた。21日に都内で開かれた「パリ・ユーロプラスファイナンシャル・フォーラム2024」の質疑応答に英語で答えた。

  今回の発言は、12月の利上げに自らを追い込むことなく、選択肢を残している。植田総裁は政策は毎回の会合で決定され、事前に決められるものではないとの見解を繰り返し示している。

  それでも、ブルームバーグが10月の会合前に実施した調査でエコノミストの約5割が予想した12月の利上げの可能性を強く意識させる内容だった。調査対象の日銀ウオッチャーの8割超は、1月までに利上げがあると予想している。

調査リポート:日銀10月会合は現状維持予測-1月までに利上げが8割超

Kazuo Ueda
植田和男日銀総裁Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  市場では、次の利上げに動く前に日銀は7月会合で利上げした時よりも明確なシグナルを発信するとの期待が高まっている。7月の利上げは一部の投資家にとって予想外の決定となり、8月の市場混乱につながった一因とみられている。

  植田総裁が政策の方向性についてシグナルを発する意図があるのであれば、18日の名古屋市での講演の方が可能性は高いとみられていた。この講演で総裁は、政策判断の鍵を握る注目点として海外経済の見通しと、賃金と物価の好循環の2点を挙げた。

為替が物価・経済に与える影響精査

  21日の講演後の質疑応答で植田総裁は、日銀は為替レートが物価や経済に与える影響を精査していく考えをあらためて示した。日銀ウオッチャーの多くは、日銀に利上げを促す最大の要因は円安だとみている。為替市場ではここ数週間で円安が進み、輸入コストの上昇によるインフレ圧力が高まっている。

  政府・日銀が為替介入を行った7月以降も円安の流れが続いたことが、日銀が7月会合で追加利上げに動いた主な要因だったと指摘するエコノミストもいる。政府は今年、これまでに15兆円超を投じて円相場を支えてきた。

  利上げをすれば軟調な円相場は幾分支えられ、政府は安堵(あんど)するかもしれないが、植田総裁は政治情勢にも目配りする必要がある。

  自民・公明両党による連立政権は、衆院で過半数に届かない少数与党となった。12月は政府にとって来年度予算を編成する上で重要な月だ。早期の利上げに反対する野党の協力を必要とする財政政策の重要な時期に、日銀が利上げをできるのか疑問視するエコノミストもいる。

原題:BOJ’s Ueda Indicates Next Meeting Is Live With Uncertain Outcome(抜粋)