米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)を相手に、長らく火花を散らしてきた世界的なトレーディング大手、DRWホールディングス。創業者のドナルド・R・ウィルソン氏は米国の証券業界に対する監督体制を見直す時期に来ていると提言した。

  「SECやCFTC相手の摩擦が続くことは非生産的な要素にほかならない」とインタビューで語った。「ゼロからやり直す時が来た。CFTCとSECの両方を廃止し、まったく新しい規制機関を創設するべきだ」と述べた。

  金融業界をどのように監督するのが最善かという議論は、トランプ氏の大統領選当選以来の中心的テーマになっている。暗号資産(仮想通貨)業界はトランプ氏の当選を歓迎。バイデン政権ではゲンスラーSEC委員長をはじめ規制当局の透明性欠如に悩まされたと企業幹部らはいう。ゲンスラー委員長はトランプ氏が大統領に就任する来年1月20日に退任すると発表。トランプ氏は就任初日にゲンスラー氏を解任すると公言していた。

  SECは10月、DRW傘下の暗号資産部門であるカンバーランドを提訴。20億ドル(約3000億円)のデジタル資産を扱うカンバーランドは証券ディーラー業者に登録されていなかったという。SECは数年前から暗号資産セクターへの監視の目を厳しくしており、カンバーランドはその最新例となった。これまでにクラーケンやコインベースなど複数の暗号資産企業が訴訟の警告を受けて、一部では法的手続きが続いている。摩擦の根底にあるのは、SECが何を証券と見なし監督対象としているかという問題だ。

  ウィルソン氏がSECの言い分に異議を唱え、ゲンスラー委員長と対立するのはこれが初めてではない。ゲンスラー氏がCFTC委員長だった頃、DRWは相場操縦の疑いでCFTCと法廷で争い、2018年にDRWが勝訴している。

  「ゲーリーは非生産的な訴訟を大量に提起している。退任前にこうした提訴をプレゼントとして残し、次のSEC委員長を困らせようとしているかのようだ」とウィルソン氏。「しかしこうした行為はSECの予算、つまり納税者の税金だけでなく、誰の時間も有効に使わない」と述べた。

  CFTCとSECの統合構想は新しくない。2012年にバーニー・フランク、マイク・カプアノ両元下院議員はSECとCFTCが分離されているのは米規制システムにおける「最大の構造的不備」だと指摘、両機関を統合する法案を提出した。

  暗号資産を推進する勢力は数年前からこの構想に注目するようになった。22年にはデリバティブの主要規制当局であるCFTCを暗号資産のトップ監督機関にする法案が、上院で提出された。現在のところ、暗号資産監督におけるCFTCの管轄はそのデリバティブに限られている。一方で改革案に対しては、CFTCの規模では追加される責任に対応できないとの反対意見も出た。

  DRWの広報担当者は「SECのルール順守で誠実に取り組んできた当社としては、SECからの非難にいら立ちを感じる」と述べた。

  ウィルソン氏は「次のSEC委員長にとっては、同委員会の行動を洗い直す良い機会になるだろう」と述べた。

原題:Trading Titan Don Wilson Says It’s Time to Get Rid of SEC(抜粋)