▽ウクライナ子ども連れ去り、ロシア組織的か エール大調査<ロイター日本語版>2024年12月4日午後 6:36 GMT+9
[ハーグ 3日 ロイター] – 米エール大公衆衛生大学院は3日、ロシアがウクライナ侵攻初期に行ったウクライナからの子ども連れ去りの詳細に関する調査報告書を公表した。
報告書は連れ去られた子ども314人の身元を特定。子どもの移送にロシアの大統領府が運用する航空機や大統領府の資金が使われるなどプーチン大統領が計画に関与しており、子どもにロシアへの同化教育を施して一般家庭に引き渡すなど、連れ去りは政府が主導する組織的な計画の一環だったと指摘した。
ロイターは報告書の内容を独自に検証することができなかった。
国際刑事裁判所(ICC)は2023年3月、ウクライナの子ども連れ去りに関与した疑いがあるとして、プーチン大統領とロシアの児童権利保護を担当する大統領全権代表マリア・リボワベロワ氏に逮捕状を出した。リボワベロワ氏は当時、紛争地帯で子どもたちを保護するために人道的な観点から移送を行ったと主張した。同氏の事務所は今回、コメント要請に現時点で応じていない。ロシア政府も回答を控えた。
調査責任者であるエール大人道問題研究所のナサニエル・レイモンド所長は、報告書を4日に国連安保理に提出すると述べた。今月の理事会議長国、米国が報告書を議題に取り上げる。
レイモンド氏は報告書について、ウクライナの子どもの連れ去りがロシア政府主導の組織的な計画の一環であることを証明しており、ICCによるプーチン氏の逮捕状発行を裏付ける証拠になると主張した。
ICCの検察局はロイターの取材に、「エール大の報告書はこの事案の継続的な活動にとって有用だ」とする一方、ウクライナに関する捜査で生じ得る法的な動きについて情報提供は控えた。
リボワベロワ氏はICCによる昨年の逮捕状発行に対し、ロシアが子どもやその親または法定後見人の意志に反して移送を行ったことはないと主張。保護者の同意についても、所在不明の場合を除き必ず同意を求めたと説明した。ロシア領内に移送された子どもについては、一時的な法的後見人に引き渡されており、養子縁組に出されたわけではないとした。
<子どもの身元>
レイモンド氏によると、エール大の報告書はロシア政府の3つの養子縁組データベースから20カ月にわたり収集したデータに基づいてヒトやモノ、資金の流れを解析し、314人の子どもの身元を確認した。調査はバイデン政権の下で国務省が主導する取り組みの一環として実施され、ウクライナにおけるロシアおよびロシア系勢力による国際法違反や人道に対する犯罪の可能性を記録することを目的としている。
報告書によると、連れ去られたウクライナの子どもはロシアで「親ロシア的で、軍事化されたプロパガンダ」にさらされる環境下に置かれ、子どもが収容された全施設でこうした「愛国的再教育」が行われていることが確認された。
ウクライナ当局の推計によると、ロシアによるウクライナ侵攻開始以降、約1万9500人の子どもがロシアやロシア占領下のクリミアに連れ去られた。
リボワベロワ氏はウクライナ当局の推計に異議を唱え、証拠を提示するよう求めている。同氏は以前、22年4月から10月の間に380人の孤児や保護者がいない子どもがロシアの里親家庭に引き取られたと述べている。
<大統領府の航空機で移送>
報告書によると、ロシアは22年2月の侵攻数日前にウクライナのロシア占領地から子どもの連れ去りを開始。22年5月から10月にかけてロシア空軍と大統領府が直接運用する航空機が、ウクライナから複数の子どもたちのグループを移送した。
22年9月16日にモスクワ郊外のチカロフスキー空軍基地に連れてこられた子どもは、ロシア占領下にあるウクライナのドネツク州とルガンスク州からロシアのロストフ市に移送され、その後、機体番号RA―85123の飛行機で移送された。この航空機はロシア国防省の第223飛行隊が運用しており、航空機追跡ウェブサイト「フライトレーダー24ドット・コム」でも飛行の事実が確認されている。
報告書によると、身元が確認された子ども314人のうち166人は直接、ロシア市民に引き取られた。残り148人はロシアの子ども斡旋データベースに登録され、このうち約3分の1がロシア市民に引き取られた。残りの子どもたちの所在が最後に確認されたのはロシアの施設内だった。
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