Ania Nussbaum
- 左派連合に加え、最大議席を持つ極右・国民連合も支持に回った
- 予算期限直前の政府崩壊で国民生活や金融市場への影響が懸念される
フランス国民議会(下院)は4日、バルニエ首相率いる内閣への不信任決議案を賛成多数で可決した。左派連合「新人民戦線」に加え、最大議席を持つ極右・国民連合(RN)も支持に回った。年末の予算期限直前で政府が崩壊することとなり、国民生活や金融市場への影響が懸念される。
バルニエ首相が2日、2025年度政府予算案のうちの社会保障財源法案について、議会採決を経ずに成立させる憲法の特例条項を行使すると表明した。この対抗措置として、野党側が不信任案を提出した。
バルニエ首相の在任期間は1958年の第5共和制成立以降で最短となった。長期にわたる政治の混迷が予想され、投資家の不安は一段と高まる見込みだ。
今の政治的混乱のきっかけをつくったのはマクロン大統領だったといえる。マクロン氏は6月、欧州議会選で極右政党が躍進し、与党連合が大敗したことを受け、巻き返しを図るため国民議会を解散し、総選挙を実施すると突然発表した。しかし、国民議会選の結果、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いるRNが最大勢力となり、同氏の影響力が拡大。マクロン氏の中道与党連合は後退を余儀なくされた。
ルペン氏は4日議員らに対し、「私が不信任投票を通じて大惨事をもたらす政策を選ぶことに熱心だと考える人々には、このような予算案を非難しないことこそ、破滅的な政策だと伝えたい。この短命内閣は終わりだ」と語った。
不信任決議案可決後、ユーロは対ドルでほぼ変わらずの1ユーロ=1.0514ドルで推移した。フランス国債先物は上げ幅を縮小した。
予算を巡る不透明感や政治的混乱を背景にフランス国債は、ドイツ国債などに対する上乗せ利回り(スプレッド)が拡大していた。
マクロン大統領には新首相を任命する権限がある。だが国民議会が絶対多数政党不在のハングパーラメントとなっている現状では、バルニエ氏への限定的な支持も長い苦闘の末、ようやく得られた経緯がある。
バルニエ内閣は不信任可決後も暫定内閣として当面とどまる。政府機関の閉鎖回避に向け、徴税を可能にする「特別法」の緊急措置や最低限の支出を認める法令での対応が可能だが、より広範な影響について予測は困難だ。
原題:French Far Right Joins Forces With Left to Topple Government (1)(抜粋)