トランプ次期大統領の影響がすでに広範囲に広まっている。MAGAを柱とするトランプ氏の政策や人事に賛成の人もいれば、反対の人もいる。全体としてこれからのアメリカや世界が良くなるのか、悪くなるのか、現時点では判断がつかない。そんな中でトランプ氏の再登場で明るい展望が開けたのが暗号資産市場だ。暗号資産といえばBTC(ビットコイン)。BTC価格は5日に史上初めて10万ドルを突破した。これを受けてトランプ氏はSNSに「おめでとう、10万ドルだ」と投稿している。ブルームバーグによるとBTCは、大統領選の投開票日だった11月5日から約3万ドル上昇した。暗号資産全体の時価総額はこの間に2兆4000億ドルから3兆6000億ドルに膨らんだ。暗号資産に否定的だったSECの委員長は解任され、後任には推進派のポール・アトキンス氏の起用が決まっている。
トランプ氏は第1期の大統領時代には暗号資産の否定派として知られていた。その人がどうして暗号資産推進派に転じたのか、理由はさだかではない。側近たちの進言を受け暗号資産の魅力に目覚め、積極的推進派に転じたのかもしれない。当選が決まる前から親族企業のなかに暗号資産関連企業を創設するなど、暗号資産ビジネスを展開している。暗号資産業界もトランプ陣営にかなりの献金をしている。もっとも業界としては対立候補のハリス氏にも同等の献金をしており、どちらに決まってもいいような準備はしていた。とはいえ、いち早く暗号資産の将来性に目をつけたのはトランプ氏である。同氏は選挙戦で「暗号資産を国の準備金に追加する」と語っていた。いずれにしろ先行きを左右するのはSEC。暗号資産に消極的だったゲンスラー委員長の後任に、推進派のアトキンソン氏を指名した。
同氏はブッシュ(子)政権でSECの共和党委員を務めるなど、金融規制・監督で豊富な経験を持つ。加えて暗号資産の推進派だ。トップが変われば業界の雰囲気はガラリと変わる。BTCの10万ドル突破はその象徴だろう。問題はどこまで続くかだ。暗号資産の将来性は大きい。現行の金融システムにいずれは取って替わるシステムだとの意見もある。とはいえ、不正や事件、事故、システム障害といったマイナスの要素もかなりある。北朝鮮による暗号資産の詐取がたびたびニュースになっている。次の4年間で米国の暗号資産市場は激変するだろう。ただでさえ周回遅れの日本。保険証とマイナンバーカードの一体化さえままならない国だ。現物のないデジタル資産(電気信号)に過ぎない暗号資産の変革に追いついていけるだろうか。心配してもしょうがないと思いつつ、急騰するBTCを眺めながらあらぬ心配をしている。