日本製鉄は9日、米鉄鋼大手USスチール従業員に宛てた書簡を公表し、買収の一環として提案している設備投資計画に関する情報を開示した。買収実現に向けて従業員や政治家の支持を取り付けるため、土壇場で取り組みを続けている。

  これに先立ち、日鉄は全米鉄鋼労働組合(USW)幹部と会談していた。書簡によると、日鉄は以前発表した14億ドル(約2100億円)の設備投資に関して、いつ、どこに支出するかについて新たな約束をしたと説明。この数字には維持費や減価償却費は含まれていないとしている。

  日鉄はUSW幹部から設備投資計画の詳細についてさらなる説明を求められたと述べており、今回の書簡はここ数週間に双方の間で少なくとも何らかのやり取りがあったことを示している。これで買収に反対するUSW幹部が考えを変えるかは不明だが、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が終了する前にUSWの支持を確保しようと、日鉄があらゆる手段を講じていることがうかがわれる。

  日鉄は書簡で「USW幹部との最近の話し合いにおいて、当社は今後の計画に関する詳細情報の提供要請に注意深く耳を傾けた」と説明。話し合いを受けて「提起されたすべての懸念事項に対処する」追加の確約書を、12月2日にUSWのデービッド・マッコール会長宛てに送ったと述べている。

  日鉄はまた、USスチールの地元ペンシルベニア州のシャピロ知事らとの「建設的な対話」を経てこの書簡を公表したと明らかにした。シャピロ氏は買収に関する立場を正式に表明していないが、交渉に関与していることを示している。買収計画が破談すれば、ペンシルベニア州における鉄鋼産業の将来には疑問が再燃する可能性がある。

  州知事の報道官は「買収計画に関してはホワイトハウスのみが最終決定を下す立場にあるが、知事は引き続きこのプロセスに積極的に関与していく」と、ブルームバーグへのメッセージで述べた。

  日鉄の書簡はまた、以前に発表された13億ドルの追加設備投資計画を法的に拘束力のあるものとする。同社は鉄鉱石から伝統的な高炉生産を行う工場について、雇用確保への懸念を和らげようと努めている。

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  マッコール氏は書簡について「法的強制力のない空約束を再びまとめており、日鉄のますます切羽詰まった状況を示している」とブルームバーグへの声明で指摘。依然としてこれまでと同様の例外や条件が多く盛り込まれており、日鉄が約束を破棄したり、方針を変更したりする余地を与えていると述べた。

  買収計画は1年前に発表されたが、CFIUSを含め、米規制当局の審査がまだ続いている。バイデン大統領とトランプ次期大統領はいずれも買収に反対する立場を示している。

原題:Nippon Steel Makes Final Push to Win Over US Workers (2)(抜粋)