▽イスラエル、シリアに攻撃継続-ダマスカス近郊まで戦車侵入か<bloomberg日本語版>2024年12月10日 15:22 JST 

Omar Tamo

  • 310カ所以上が標的か、空軍史上最大級とイスラエル軍ラジオ局報道
  • G7、シリア新政府を支持へ-カタールも既に反体制派と接触

イスラエルはシリアの軍事拠点に対する攻撃を強めた。10日早くに数百の目標を攻撃し、シリア領内深くまで部隊を侵入させた。

  英国に拠点を置くシリア人権監視団によると、首都ダマスカスを含むシリア各地の軍事基地や倉庫、兵器庫など少なくとも310カ所が過去2日間で標的となった。イスラエル軍のラジオ局は匿名の国防当局者の話として、空軍史上最大級の攻撃と伝えた。

  前日にはシリアとの国境沿いの緩衝地帯を掌握。過激派の手に渡るのを防ぐべく、シリアの化学兵器およびミサイル貯蔵施設を空爆したとイスラエル軍は主張した。

関連記事:イスラエル、シリアの化学兵器庫を攻撃-市民の安全確保と主張 (1)

Smoke rises following an air strike in Damascus on Dec. 10.
イスラエル軍の空爆を受け煙が上がるダマスカス(10日)Photographer: Omar Hajdour/AFP/Getty Images

  イスラエルの緩衝地帯占拠とシリアへの継続的な攻撃は、エジプトやサウジアラビアなどアラブ諸国の怒りを買っている。サウジは声明で、イスラエルの攻撃は「シリアが安全保障と安定、領土保全を回復する機会を妨害する決意」を示していると糾弾。エジプトも、イスラエルは「シリア領のさらなる占領」を狙っていると非難した。

  地上にいる人々の情報網を通じてシリア内戦の監視を続けているシリア人権監視団は、イスラエル軍の戦車がダマスカスの南西部近郊で目撃されたとも報告。目撃されたのはダマスカスから十数マイル離れた地点だという。

  イスラエル軍報道官はX(旧ツイッター)で、同国軍は緩衝地帯やシリアとの国境付近に展開しているとしつつ、一部のメディアで出回っている「ダマスカスへの進軍や接近は完全な誤り」だと主張した。

  イスラエルはアサド政権下のシリアと正式には交戦状態にあった。過去1年にはいくつかの侵犯があったが、国境は比較的平静を保っていた。

  イスラエルのカッツ国防相は、同国軍の恒久的な駐留を伴わない防衛地帯をシリア南部に設置することを明らかにした。この地帯には武器およびテロの脅威を存在させないという。

Israeli forces deployed in the buffer zone on the border with Syria on Dec. 10.
シリア国境付近のイスラエル軍(10日、ゴラン高原)Photographer:Jaraa Marey/AFP/Getty Images

  イスラエルは、週末にアサド政権を転覆させたシリアの反体制派を警戒している。反体制派を主導する武装組織「シリア解放機構(HTS)」は過去に国際テロ組織アルカイダとつながりがあり、米国など多くの国がテロ組織に指定している。

関連記事:シリア政権崩壊、大統領はロシア亡命-「暴力と混乱」警戒の声相次ぐ

  米国や英国を含む主要7カ国(G7)はそれでも、法の支配と宗教的・民族的な少数派が尊重される限り、シリア新政府を支持する意向を表明している。G7以外にもカタールは既に反体制派と接触している。

  週内に発表される予定の声明案によると、G7は「シリア統治で役割を担いたいと考えている全ての反体制グループが、全てのシリア人の権利に責任を負うことを期待している」と表明。声明内容は依然として変更の可能性がある。G7はまた、アサド政権時代に国を逃れた数百万人に及ぶシリア人の安全な帰国を呼び掛ける見通しだ。

  事情に詳しい関係者によると、カタールは過激派組織「イスラム国」(IS)のような組織が、過渡期にあるシリアで地盤を固めることがないよう、HTSと早期に連絡ルートを確立した。

  シリア国営テレビが報じたところによれば、反体制派はムハンマド・アルバシール氏に暫定政府の樹立を任じた。アルバシール氏はエンジニアでHTSが2017年に設立した疑似政府のトップ。

原題:Israel Steps Up Airstrikes, Sends Troops Deeper Into Syria (3)
G-7 to Endorse Syrian Transition as Qatar Reaches Out to Rebels
Israel Setting Up Threat-Free Defensive Zone in Southern Syria(抜粋)

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