Cristin Flanagan

  • 米国債は4日続落、来年初頭に利下げ一時休止との見方が重し
  • 円は対ドルで下げに転じる、一時151円台-ドル指数は5日連続上昇

12日の米国株式市場は下落。来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、積極的な売買は控えられた。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6051.25-32.94-0.54%
ダウ工業株30種平均43914.12-234.44-0.53%
ナスダック総合指数19902.84-132.05-0.66%

  ナスダック100指数は0.7%、S&P500種は0.5%それぞれ下落した。前日は11月の米消費者物価指数(CPI)が予想通りの内容となり、12月の米利下げ観測が高まったことで、ハイテク株が主導する格好で両指数とも大きく値上がりしていた。

  この日発表された 11月の米生産者物価指数(PPI)は強弱まちまちの内容。前月比の上昇率が予想外に加速するなど、一部は市場予想を上回る伸びとなった。

関連記事:米PPIは予想に反して加速、卵急騰-PCE価格項目は伸び抑制 (4)

  一方、米新規失業保険申請件数(12月7日終了週)は前週比1万7000件増の24万2000件と、2カ月ぶりの高水準となった。ただ、この時期は年末のホリデーシーズンを控えデータは振れやすくなっている。

関連記事:米新規失業保険申請、2カ月ぶり高水準-データ変動大きい時期 (2)

  モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「PPIが予想を上回る伸びになったのは卵価格の高騰が主因なもようで、市場では新規失業保険申請件数の急増の方が注目されている可能性がある」と指摘。これまで労働市場に関しては堅調なデータが続いているが、「米金融当局は雇用情勢の軟化を示す兆候には敏感に反応する構えだ」と述べた。

  S&P500種は年初来で27%上昇しているが、値上がりの大部分はエヌビディアやアップルなど、ほんの一握りの銘柄が占めており、一部では懸念が高まっている。

  一方、ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのテクニカル戦略責任者、マーク・ニュートン氏は、年末にかけてなお株価が上値を伸ばす余地があるとみている。

  「買いの裾野の広がりに関する指標は、短期的に大きく後退したが、これは必ずしも調整を意味するものではない」とニュートン氏。小型株や運輸株、ダウ工業株30種平均は再び最高値を更新する可能性があるとリポートで記述した。 

  S&P500種は現在、9日連続で値下がり銘柄が値上がり銘柄を上回る状況が続いており、これはブルームバーグが2004年にデータの収集を開始して以来、最も長い。

米国債

  米国債相場は4日続落。新規失業保険申請件数の増加を受けた上げを維持できなかった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.55%6.81.52%
米10年債利回り4.33%6.11.42%
米2年債利回り4.19%4.21.00%
  米東部時間16時49分

  来週のFOMC会合では、3回連続の利下げがほぼ確実視されているが、市場関係者の関心は来年の金利見通しへとシフトしつつある。インフレ圧力の高止まりに加え、来年初頭に利下げ一時休止との見方から、投資家の間では神経質なムードが広がっている。

  前日もCPI発表を受けて直後は値上がりしたものの、値を消す展開となっていた。

  ニュートン・インベストメント・マネジメントの債券部門責任者、エラ・ホクサ氏は来週のFOMC会合について「『今は利下げを行うが、データを注視する』とのメッセージを示唆するタカ派な利下げになりそうだ」と述べる。「そのような状況では、米金融当局がハト派ではなく、やや慎重姿勢を取るとの織り込みになることが依然としてリスクだ」という。

  エバコアISIのエコノミスト、スタン・シップリー氏は、10年債利回りは2025年末に4.6%前後になると予想している。

  「リセッション(景気後退)に陥るとの見方は消えたが、米経済見通しの不確実性は高まっている」と指摘。「経済政策の詳細が明確でないことが原因だ」と述べた。

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、ユーロが下落した。 欧州中央銀行(ECB)は予想通り0.25ポイントの利下げを決定。インフレ率が目標の2%に近づく一方で経済は低迷していることから、来年もさらなる利下げを行うと示唆した。

関連記事:ECBが3会合連続利下げ、0.25ポイント下げ3%に-経済下支え (3) 

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1288.413.600.28%
ドル/円¥152.67¥0.220.14%
ユーロ/ドル$1.0467-$0.0029-0.28%
  米東部時間16時50分

  ユーロは対ドルで一時0.3%安の1ユーロ=1.0464ドルに下落。だが、その後は下げを縮めた。

  三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のアナリスト、デレク・ハルペニー氏は「ECBの25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げ決定にサプライズはなく、為替や金利市場への影響は限定的だった」と指摘。一方で「ラガルド総裁は今回の会合でより大幅な利下げが議論されたことも認めた。これはユーロ・ドル相場のリスクが依然として下向きであることを示している」と述べた。

  円は対ドルで152円60銭台に下落。午前の取引では一時151円台まで上昇する場面があったが、下げに転じた。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は5日連続の上昇となった。2025年初頭に利下げが一時休止されるとの見方に加え、米国債利回りが4日連続で上昇していることが背景にある。

円は対ドルで下げに転じる

  スイス・フランは主要10通貨の中で最もパフォーマンスが悪かった。スイス国立銀行(中央銀行)が市場予想よりも大幅な0.5ポイントの利下げを実施し、フラン高抑制措置を強めたことが背景。

  スイス中銀のシュレーゲル総裁は記者会見で「金融政策をさらに緩和する必要がある場合、政策金利の引き下げは引き続きわれわれの主な手段だ。同時に、必要に応じて外国為替市場に介入する用意があることも変わらない」と述べた。

関連記事:スイス中銀、0.5ポイント利下げ-予想以上の緩和でフラン高抑制 (3)

原油

  ニューヨーク原油先物は4日ぶりに反落。2025年の供給過剰見通しが相場の重しとなった。

  国際エネルギー機関(IEA)はこの日の月報で、来年の世界石油市場は供給過剰に直面するとの見方を示した。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスが生産引き上げ延期を決めたが、なお供給超過が見込まれるという。

関連記事:OPECプラスが供給拡大延期しても、来年は余剰に直面-IEA予測

Oil Pares Losses Amid Geopolitical Risks

  みずほセキュリティーズUSAのエネルギー先物部門ディレクター、ロバート・ヨーガー氏は、堅調な現物市場やロシアに対する新たな制裁の可能性を背景に、一部のトレーダーは強気見通しを維持していると指摘した。

  原油相場はこの日、中東情勢が一段と緊迫化していることを示す報道に反応し、下げを埋めた。タイムズ・オブ・イスラエルは、イスラエル軍がシリアのアサド政権崩壊を対イラン攻撃実行の機会と見なしていると報じた

Oil Pares Losses Amidst Geopolitical Risks

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は、前日比27セント(0.4%)安の1バレル=70.02ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は11セント(0.2%)下落し、73.41ドルで引けた。

  金スポット相場は5営業日ぶりに反落。この日発表された米経済指標はやや強弱入り交じる内容で、利益確定の売りが一部出た。

  前日には、米消費者物価指数(CPI)が市場予想通りの伸びだったことを受けて来週のFOMCでの0.25ポイント利下げ観測が強まり、金相場は上昇していた。

Gold Snaps Four-Day Gain After Mixed US Data | The metal is still up more than 30% this year

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時57分現在、前日比1.3%安の1オンス=2683.94ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物2月限は47.30ドル(1.7%)安の2709.40ドルで引けた。

原題:Wall Street Puts Rally on Hold Before Fed Meeting: Markets Wrap

  Euro Weakens After ECB Rate Cut, Dollar Advances: Inside G-10

 Oil Snaps Three-Day Rally on Expectation of Supply Glut in 2025

 Gold Extends Losses as Traders Book Profit After Mixed US Data(抜粋)