Rita Nazareth
- ホリデー控え薄商い、予想より弱い消費者信頼感指数を株価は克服
- 円トレーダーは介入リスク警戒か、ドル上昇で金下落-原油も安い
23日の米国株式市場では世界的な大型ハイテク株の一角が上昇し、市場全体を押し上げた。予想より弱い米消費者信頼感を受けて、朝方は軟調に推移する場面も見られた。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5974.07 | 43.22 | 0.73% |
ダウ工業株30種平均 | 42906.95 | 66.69 | 0.16% |
ナスダック総合指数 | 19764.88 | 192.28 | 0.98% |
ホリデーを控えた短い週は薄商いで始まった。S&P500種株価指数はこの日の高値付近で引けた。エヌビディアとメタ・プラットフォームズ、テスラのけん引で、大型ハイテク7強「マグニフィセント・セブン」に連動する指数は約1.5%上昇した。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「株式には最近利益確定の売りが出たが、主な上昇トレンドは健在だ」と指摘。「短期的な売られ過ぎの状況を考えると、今年サンタクロース・ラリーが到来する可能性は高いと当社ではみている」と述べた。
モルガン・スタンレーのマイク・ウィルソン氏によれば、下落銘柄の数が上昇銘柄を上回る状況も、米国株の好調なモメンタムほど重要ではない可能性がある。
12月の米消費者信頼感指数は3カ月ぶりに低下した。トランプ次期政権の政策を巡る不透明感を背景に、景気見通しへの懸念が広がった。
ルネサンス・マクロ・リサーチのニール・ダッタ氏は「経済見通しは悪化してきている」と指摘。「連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表前からそうだったし、それはFOMC後も変わらない。FOMCが姿勢を転換するリスクは極めて高い」と述べた。
ナスダック100指数は1%高。半導体のクアルコムは上昇。同社を相手取ってソフトバンクグループ傘下の英アーム・ホールディングスが起こした訴訟で、陪審は20日、クアルコムのライセンス契約違反はなかったとの評決を下した。
動画共有プラットフォームのランブルは上場来最大の値上がり。テザーによる出資が好感された。米高級百貨店ノードストロムの創業家はメキシコの百貨店チェーンと手を組み、ノードストロムを買収し非公開化することで合意した。
S&P500種はこのまま行けば、年間上昇率が2年連続で20%を超える。同指数は2023年末から約25%上昇。このうち半分以上を大手ハイテク7強が占める。
BTIGのジョナサン・クリンスキー氏は「先週の動きで最近の下げ局面は終わり、『サンタクロース・ラリー』を迎える用意ができたはずだ」と語る。「来年早々に比較的深い調整が入る可能性は高いとみている。ただしそれは新しい最高値からの調整だ」と続けた。
「サンタクロース・ラリー」が来るか来ないかという問題は、今も新年に向けた投資家の楽観を測るバロメーターだ。旧年最後の5営業日と新年最初の2営業日を合わせた7営業日が勝負だ。
第2次世界大戦後、この期間に「サンタクロース・ラリー」を迎えた年のS&P500種は平均して年間10.4%上昇してきたと、CFRAのサム・ストーバル氏は指摘する。一方でこの7営業日に下げた年はS&P500種の年間上昇率がわずか5.7%にとどまったという。
ストーバル氏はただ、「1月バロメーター」の方が正確な指標だと、自身の見解を明らかにした。
S&P500種は1945年より後、1月をプラスでスタートした年は年間で平均18.3%上昇してきた。一方で1月をマイナスで終えれば、年間では平均1.9%の下落だ。
個別企業のニュースでは、保険大手メットライフがパインブリッジ・インベストメンツの中国以外の資産を香港の資産家、李沢楷(リチャード・リー)氏の持ち株会社パシフィック・センチュリー・グループ(PCG)から買収することで合意。ホンダと日産自動車は経営統合に向けた検討に入ると発表した。実現すれば販売台数で世界3位の自動車グループが誕生することになる。
米国債
米国債相場は全面安となった。中・長期債の下げが比較的大きく、利回り曲線はベア・スティープニングを描いた。2-10年債利回り差も拡大を再開し、スプレッドは先週付けた高水準に向かった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.78% | 5.6 | 1.18% |
米10年債利回り | 4.59% | 6.4 | 1.42% |
米2年債利回り | 4.34% | 2.6 | 0.59% |
米東部時間 | 16時47分 |
商いは薄く動意に乏しい展開。市場では先週のFOMCで示された来年の金融政策予測の消化が続いている。2年債入札はまずまず堅調な内容だった。24日には5年債、26日には7年債の入札が控えている。
米国債先物の出来高は20日平均のわずか70%。流動性の低さが利回りの動きを増幅した可能性がある。
外為
外国為替市場ではドルがほぼ全ての主要10通貨に対して上昇。米政府機関が閉鎖を免れたことが影響した。この日は円が最もパフォーマンスが悪かった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1300.79 | 3.98 | 0.31% |
ドル/円 | ¥157.16 | ¥0.85 | 0.54% |
ユーロ/ドル | $1.0405 | -$0.0025 | -0.24% |
米東部時間 | 16時47分 |
円は対ドルで157円27銭まで下げた。円のボラティリティー傾斜からは、介入リスクへの警戒感が見て取れる。
ジェフリーズの為替グローバル責任者、ブラッド・ベクテル氏は円について「日本銀行が期待ほどタカ派ではなかったことと、それがこの先国内の金利にどう影響するかという問題に市場は対応を迫られている」と指摘。
「2025年の見通しに関して市場が選好する取引は円のロングという声が多かったが、すでにその予想を維持するのは難しくなってきている」とベクテル氏。「円は調達通貨というステータスを失わないだろう。それだけははっきりしている」と述べ、「世界市場で調達通貨に選ばれる通貨が、持続的に上昇するとは予想しにくい」と続けた。
ホリデーシーズンたけなわの今週は、薄商いで始まった。年末を控えた企業のリバランシングで、週内は値動きがやや不安定になる可能性がある。
みずほセキュリティーズの欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)マクロ戦略責任者ジョーダン・ロチェスター氏は、月末のフローと年末の「小規模な利益確定」、そしてトランプ次期米大統領の発言が今週の取引を導くと指摘。株売りに関連した穏やかなドル買いも予想されるという。
「市場は今のところトランプ・テーマでの取引に気をよくしている」とロチェスター氏はリポートで指摘。「トランプ氏が1月20日の大統領就任後に大統領令で積極的に動かない場合、取引の巻き戻しを余儀なくされるかもしれない」と続けた。
マネックスは「朝方はドルが幅広い通貨に対して堅調な中、スイス・フランとポンド、円のアンダーパフォームが目立った。しかし今週は祝日を挟んでおり、重要データの発表もないため、為替市場では薄商いが続き、値動きは大幅になるかもしれない」との分析をリポートで説明した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は、祝日を控え薄商いとなる中で下落。ドル上昇とロシアのドルジバ・パイプラインを経由した原油輸送の再開が材料視された。
同パイプラインでは先週、技術的な問題によりベラルーシやハンガリーへの原油輸送が一時停止されたが、21日に再開した。
一方、トランプ次期米大統領はパナマ運河が米国の軍艦や商船に対して「法外な通航料」を課していると指摘。料金引き下げを要求し、そうでなければパナマは運河を米国に返還すべきだと主張した。トランプ氏が米国によるパナマ運河管理を復活させる考えを示したことに対し、パナマのムリノ大統領は断固拒否する姿勢を示した。
この日は米政府機関閉鎖が回避されたことを好感し、ドルが上昇。商品の投資妙味が低下した。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「パナマ運河に関するニュースについて、市場は今のところはレトリックとして大方受け流しており、より大きな関心は2025年の見通しを形成する需給ファンダメンタルズに移っている」と分析した。
ただヘッジファンドの間では、強気姿勢が強まっている兆しが見られる。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、マネーマネジャーによるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)のネットロング(買い越し)は17日終了週に、2023年9月以来の大幅増となった。買い越し拡大に先立ち、原油価格はロシアとイランの原油供給減につながる制裁強化見通しを基に上昇していた。
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ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物2月限は22セント(0.3%)安の1バレル=69.24ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は31セント(0.4%)下げて72.63ドルで引けた。
金
金相場は下落。ドルの上昇が圧迫材料となった。トレーダーは、2025年の米金融政策を見極めようとしている。
米政府機関閉鎖が回避されたことを好感し、この日はドルが上昇。これを手掛かりに金は売られた。市場ではまた最新の米消費者信頼感指数や、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する米個人消費支出(PCE)コア価格指数を消化する動きが続いた。
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金スポット価格はニューヨーク時間午後2時45分現在、12.10ドル(0.5%)下げて1オンス=2610.81ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は、16.90ドル(0.6%)安の2628.20ドルで引けた。
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