Nick Wadhams

  • ロシア海上石油輸出の約3割を担う2社や商社、保険会社を標的
  • 影の船団関連の180隻余りも、米欧英の制裁対象タンカーほぼ倍増

米国はロシアの石油業界に対し、新たな包括的制裁を導入した。トランプ政権に交代した後に起こりえる和平交渉でウクライナが利用できる材料を増やそうと、退任間際のバイデン政権が土壇場で方法を模索している。

  10日発表された新たな制裁は、ロシアの海上石油輸出の約3割を担う2社や、貨物輸送に関連する重要な保険会社や商社などが対象。さらに、これまでに成果を上げているタンカーに対する制裁を拡大した。

  制裁の主な標的である2社はガスプロム・ネフチとスルグトネフテガスで、英国も米国と歩調を合わせる。ブルームバーグがまとめたデータによると、2社は昨年1-10月に日量約97万バレルの石油を海上輸送で輸出し、同国全体の海上石油輸出の約30%を占めた。

  米国はまた、20数社に及ぶ2社の子会社や180隻余りのタンカーについても制裁を科す。このタンカーの多くはロシアが制裁回避目的で編成した「シャドーフリート(影の船団)」に関連している。

  今回の措置により、欧州連合(EU)、英国、米国のいずれかの制裁対象となっている石油タンカーの数はほぼ倍に増える。これまでの制裁対象は135隻で、複数の地域でブラックリストの指定を受けているタンカーも多い。

Sanctioning Russia’s Tankers

A total of 270 tankers have been sanctioned for carrying Russian oil

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/ddv9rc2qqlcr2bgt0672s9pzn6nu0mtr.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Sources: US Treasury Department, UK Treasury, European Union

Note: 68 tankers have been sanctioned by more than one entity

  主要な石油商社や油田サービス会社、保険会社、エネルギー当局者も制裁対象に含まれる。

  モスクワを拠点とする保険会社インゴスストラフへの制裁はとりわけ問題となりそうだ。同社は石油流出や衝突、海底ケーブル損傷など石油輸送に伴うリスクへの補償を提供しており、ウクライナ侵攻開始後に急増したロシア産石油のインド向け輸送でも大きな役割を果たしている。ブルームバーグおよびデンマークの非営利団体ダンウォッチが昨年10月に発表した調査は明らかにした。

  さらに、ロシア国営石油大手ロスネフチの海運部門ロスネフテフロートにも制裁が科せられる。ロスネフチ自身はこれまでに一定の制限の対象となっているものの、新たな制裁措置で特に名指しはされていない。

原題:US Increases Pressure on Russia With Sweeping Energy Sanctions(抜粋)