自公維による3党合意。来年度予算案はこれで成立のメドがついた。だが逆に、政局が安定する兆しは限りなくゼロに近づいた。これで良かったのだろうか。吉村代表に対する期待感も、一気に萎んでしまったようにみえる。日本維新の会に所属する国会議員や地方議員はいま、何を思っているのだろうか。喜んでいるのか、あるは来たるべき参院選や各種選挙に向けて不安を募らせているのだろうか。外から見ていると維新の会全体が、心の底から喜んでいるようにはみえない。関係者の多くは喜びよりも不安や心配で、眠れぬ夜を過ごしているのではないか。思えば昨年末の補正予算審議。103万円の壁撤廃で一足先に幹事長クラスの3党合意を文書化した国民民主党。立憲民主党は能登半島支援で自公と予備費の活用で合意、両党とも補正予算賛成の条件を整えた。

焦ったのだろう。維新の会は突如、共同代表の前原氏を前面に立て、石破総理と教育の無償化と社会保障改革の実現に向けて検討会を設置することで合意した。合意と言っても鉄ちゃん仲間の総理と前原氏が口頭で了解しただけである。後出しジャンケンのように追いかけた維新が、最終的には少数与党の自公政権の手助けをすることに。103万円の壁はどうやら公明党案を自公維の3党での共同提案を模索しているようだ。これが実現すれば非課税枠のそれなりの拡大も、維新が横取りする形になる。生馬の目を抜くというのが政界の常識。それが悪いとは言わないが、政党としての矜持に傷がつくのは間違いない。それでいいならそれでよし。維新というのはそういう政党であるとの認識が、有権者の間に広がればそれもよし。あとは国民の判断に委ねればいい。注意すべきは、3党合意があくまでも政党間の合意に過ぎないことだ。自民党を背後で操る財務省と維新が合意したわけではない。

自公維合意の中身は①高校授業料を2年度に分け段階的に無償化②26年度からの小学校の給食無償化③0〜2歳児の保育料負担の軽減④医療費の負担軽減を軸とした4兆円規模の社会保障改革の4点だ。問題は④の社会保障改革。たとえば高額医療費の負担上限額の引き上げはいま、立憲民主党が中心となって凍結に向けた交渉を行なっている。自公両党は今年8月からとなっている実施時期の先送りを検討していると伝えられている。社会保障改革については自公というよりも財務省による鉄壁の壁が存在する。総理とは口約束が罷り通ったが、財務省はそうはいかない。新年度に始まる3党の協議体による社会保障改革論議、国民にわかるように全面公開して欲しいものだ。もう一つ気になることがある。兵庫県の百条委員会に関わる情報漏えい問題だ。吉村代表は漏洩した情報の真偽について、代表としての見解を示すべきだったのではないか。いつも歯切れの良い吉村氏にしては、歯切れが悪かった。