Rita Nazareth

  • 株は下落、大型ハイテク株に売り-エヌビディア決算で高揚感戻らず
  • 10年債利回り上昇、PCEコア価格指数警戒-金反落・原油反発
Commuters at the Staten Island Ferry Terminal in New York, US, on Friday, Feb. 7, 2025.
Commuters at the Staten Island Ferry Terminal in New York, US, on Friday, Feb. 7, 2025. Photographer: Yuki Iwamura/Bloomberg

27日の外国為替市場ではドルが上昇。対円では一時1ドル=150円台に乗せる場面もあった。トランプ米大統領はカナダとメキシコに対する25%の関税を3月4日に発動すると述べた。主要10通貨ではオーストラリア・ドルとニュージーランド・ドル、スウェーデン・クローナが特に対ドルで下げた。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1294.337.940.62%
ドル/円¥149.81¥0.710.48%
ユーロ/ドル$1.0397-$0.0088-0.84%
  米東部時間16時53分

  対ドルの円は一時150円16銭まで下落。日本時間では三村淳財務官の発言を受けて、円高が進んでいたが、欧米時間で下げに転じた。

  日本銀行の植田和男総裁は27日(南アフリカ時間)、関税を含めた米政府の政策や日本の対応などについて「まだ不確実なところが非常に大きい、多いと認識」していると述べた。ケープタウンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の終了後に記者会見した。

  ブルームバーグ・ドル指数は一時0.6%余り上昇し、2月3日以来の大幅高となった。

  クレディ・アグリコルのG10FX戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏はトランプ氏の発言について「ドルの全面高につながったが、カナダと継続している交渉の一部なのかどうか現時点では不明だ」と述べた。

  欧州・中東・アフリカ地域をカバーするみずほEMEAのFICC戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は「今の市場は関税に対してあまりにも楽観的ではないかと考える。昨夜のトランプ氏発言を市場が無視したのは奇妙だと感じた」と述べ、トランプ氏が関税発動を4月2日と述べた後に、ホワイトハウスが3月4日だと明確にしたことに言及した。

  朝方発表された先週の米新規失業保険申請件数は、今年に入って最高水準に増加。企業や連邦政府機関で人員削減の発表が増えていることを反映した。

株式

  米株式相場は下落。影響力の強い大型ハイテク株が売りを浴び、ナスダック100指数は昨年11月以来の低水準になった。経済統計は強弱混在。関税を巡る不安が市場にまん延した。エヌビディアの決算は人工知能(AI)由来の上昇基調を復活させるには至らなかった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5861.57-94.49-1.59%
ダウ工業株30種平均43239.50-193.62-0.45%
ナスダック総合指数18544.42-530.84-2.78%

  S&P500種株価指数はテクニカルな節目を割り込んだ。前日の引け後に発表されたエヌビディアの決算は、良好だが素晴らしいというほどではないと解釈され、失望を誘った。エヌビディアは8.5%下落した。

  ミラー・タバクのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マット・メイリー氏は「エヌビディアの決算は良好だった。しかしAI市場からの利益はかつて投資家が考えていたほど強くはないとの懸念が広がっており、これを大きく緩和するには至らなかった」と述べた。

US Stock Futures Slump After Trump Follows Through On Tariffs
ニューヨーク証券取引所Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  関税が貿易や経済、インフレ、ひいては地政学的状況に与え得る実際のインパクトを巡る不安で、ウォール街のトレーダーは戦々恐々としている。この日は複数の経済統計が発表されたが、大きな安心材料にはならなかった。28日には金融当局が重視する個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。

  ビスポーク・インベストメント・グループのストラテジストチームは「ここ数日に分かったのは、今の環境では市場の現状から先を読むことはほぼ不可能で、1時間先がどうなっているのか、ましてやこの日の終わりがどうなるのか、何ら保証はないということだ」と述べた。

  世界的な大手企業の四半期決算が連日発表されているが、電話会議は関税の話題で持ち切りだ。

  ブルームバーグ・ニュースが会議記録を分析したところ、S&P500種構成企業が開いた決算に関する電話会議で、「関税」への言及は約700回あった。2005年にこのデータをまとめ始めて以来の最高を記録。トランプ氏が大統領として初めて関税を発動した2018年を、若干上回った。

Tariffs Is Top-of-Mind Issue in S&P 500 Earnings Calls

Mentions of tariffs stand at all-time high this quarter

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/38265d1351d5beb9c19864a763072bd0.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: Bloomberg News

Note: Number of mentions as of 10 a.m. New York time on Feb. 27. Mentions include the word “tariffs” and other synonyms.

  先週の米新規失業保険申請件数は増加し、今年に入って最高水準となった。企業や連邦政府機関で人員削減の発表が増えていることを反映した。

  ブルームバーグのエコノミスト調査によれば、1月のPCEコア価格指数は前年同月比2.6%上昇が予想されている。PCE総合価格指数も前年同月比で伸び鈍化が見込まれている。

  プランテ・モラン・ファイナンシャル・アドバイザーズのジム・ベアード氏は「追加関税の影響が顕在化していないうちから、物価圧力が勢いを盛り返していることが示されれば、目先のインフレ見通しに関して警戒すべきメッセージになろう」と述べた。

  個別企業のニュースとしては、アポロ・グローバル・マネジメントがメタ・プラットフォームズの約350億ドル調達を率いる方向で交渉中。テスラはカリフォルニア州で配車サービスを始める認可を申請。アマゾン・ドット・コムのクラウド部門は同社初の量子コンピューティングチップを発表した。

米国債

  米国債相場は総じて下落。長期債利回りの上昇幅が相対的に大きく、利回り曲線はベア・スティープ化した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.53%2.50.54%
米10年債利回り4.26%0.40.09%
米2年債利回り4.05%-2.1-0.50%
  米東部時間16時53分

  前日までの2営業日で大きく上昇した後とあり、この日は特筆すべき材料はなかった。朝方に発表されたGDPと失業保険申請件数を受けて、相場は下落。午後に株式市場でS&P500種株価指数が一段安となると、国債相場は下げ渋った。

  米経済は昨年10-12月(第4四半期)に健全なペースで拡大した。実質国内総生産(GDP)改定値は前期比年率2.3%増。個人消費は4.2%増加した。

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「投資家は連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げを期待しているが、基調的な経済の著しい悪化を経ての利下げは望まない」と指摘。「景気が減速するのなら、最低でも同時にインフレも減速することを投資家は期待するだろう」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物は反発し、6週間ぶりの大幅上昇となった。トランプ大統領がカナダとメキシコへの関税を予定通り3月4日に発動すると発言したことに反応した。両国は米国への原油供給でトップ2を占める。

  実際に発動されれば、米国産原油の需要が高まることが予想される。米国の関税を逃れるため、他国に流れるであろうカナダ・メキシコ産原油の不足分を補う必要が出てくるためだ。だが、その影響は弱まるかもしれない。多くの米精製所は国内で生産される軽質油よりも、カナダやメキシコ産の重質油を精製するよう設計されており、代替の選択肢は限られるとみられるためだ。カナダは日量約400万バレル、メキシコは同約40万バレルをそれぞれ米国に供給している。 

Oil Trades in Narrow Range as Volatility Declines | Futures have moved in a relatively narrow range this month
WTI先物とブレント先物出所:ICE、NYMEX

  PVMオイル・アソシエーツのアナリスト、タマス・バルガ氏は「トランプ氏の政治および経済アジェンダが成長にどのような影響を与えるのか、まだ答えは出てない」と指摘。「相互関税、減税などがインフレ圧力を高め、経済的な繁栄を損なう恐れがある」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前日比1.73ドル(2.5%)高の1バレル=70.35ドル。前日付けた昨年12月10日以来の安値からは持ち直したが、月間では昨年9月以来の大幅安となる見通しだ。ロンドンICEの北海ブレント4月限は2.1%上げて74.04ドル。

  金スポット価格は反落。トランプ大統領がカナダとメキシコに対する25%の関税を予定通り3月4日に発動すると発言し、ドル高が進行したことが背景にある。

  金スポット価格は一時1.7%下落。ドル買いが優勢となり、外国人投資家にとってはドル建てで取引される金の割高感が強まった。週間では12月末以来のマイナスとなる見通し。最高値更新が続くなど、金価格は年初来9%余り上昇していることもあり、足元では利益確定の動きが出ている。

  市場は金融政策に関する手掛かりを求め、28日に発表されるPCE価格指数に注目している。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後2時52分現在、前日比36.80ドル安の1オンス=2879.59ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は前日比34.70ドル(1.2%)安の2895.90ドル。

Gold Dips After Reaching All-Time High | The precious metal has gained around 10% so far this year
金スポット価格出所:ブルームバーグ

原題:Big Tech Sinks as Nvidia Fails to Ignite AI Rally: Markets Wrap(抜粋)

Dollar Up Most Intraday in Three Weeks on Tariffs: Inside G-10(抜粋)

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Oil Rises Most in Six Weeks as US Affirms Canada, Mexico Tariffs(抜粋)

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