▽トランプ氏の政策「恐ろしい」-ドルに50年で最大の脅威とサマーズ氏<bloomberg日本語版>2025年3月6日 9:51 JST

アンスティー・クリストファー

  • サマーズ氏は関税や政府支出削減策などトランプ政権の政策を批判
  • トランプ氏の言動でドル離れや欧州・中国への資本流出招く恐れ指摘

サマーズ元米財務長官は5日、トランプ大統領の移ろいやすい政策と言動が、世界経済におけるドルの優位性に過去半世紀で最大のリスクを突きつけていると指摘した。

  ブルームバーグテレビジョンとのインタビューでサマーズ氏は、米国が「世界に対して取っている広範なアプローチは、世界経済の中心的通貨として過去50年間にドルが果たしてきた役割に最大の脅威となっている」と話した。

  トランプ氏はここ数週間にメキシコとカナダ、中国に対する関税措置を発動し、今後数週間から数カ月の間にさらに多くの措置を講じる計画。トランプ政権は、これらの措置により貿易不均衡が是正され、国内製造業が活性化し、連邦政府の歳入が増え、違法薬物の流入阻止につながると主張している。

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サマーズ元財務長官Photographer: Ting Shen/Bloomberg

  サマーズ氏は今週に入ってからの米株価急落に触れ、米国の政策の方向性に対する投資家の懸念を反映したものだと指摘。また、「政府効率化省(DOGE)」主導の政府支出削減を批判し、内国歳入庁(IRS)の税務調査官の削減を含む措置は歳入確保の取り組みに悪影響を及ぼすと述べた。

  サマーズ氏は、昨年の大統領選挙でトランプ氏と同氏の陣営が特定の規制の緩和や、米国が貿易で他国から不当につけ込まれている分野に対処することなど「この経済をより良くできる幾つかの重要な方向性を示した」と指摘。しかし、「その方法については、私には非常に恐ろしく思える」と述べた。

  「もし私がまだ財務省に在籍していたら、大統領が他国に対して繰り広げているようなレトリックがもたらす結果を恐れていただろう」とし、「中国や欧州が資本を引きつけドル離れが進む状況を私なら警戒する」と語った。

  サマーズ氏はトランプ氏のどの言動に言及したのかについて、具体的には説明しなかった。トランプ氏は先週、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談で激しい口論を展開した。また、カナダには米国の一部となるよう求め、デンマークに対してはグリーンランドの統治権を米政府に譲るよう要求。トランプ政権の閣僚も欧州諸国の国内政治の対応や比較的限られた防衛能力を批判している。

  さらにサマーズ氏は、米連邦政府の借り入れニーズを考えると、伝統的に米国債を購入してきた諸国を大統領が批判する状況で「ドルの役割について大いに危機感を抱く」とコメントした。

原題:Summers Sees Biggest Dollar Threat in Decades From ‘Scary’ Moves(抜粋)