▽日産新社長に46歳エスピノーサ氏、商品企画など担当-内田社長は退任<bloomberg日本語版>2025年3月11日 17:03 JST
稲島剛史
- 従業員からも経営責任問う声、と内田氏-新体制で新たな協業先探し
- 新社長は「エネルギッシュなカーガイ」、難局打開目指す

日産自動車は11日、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)が3月末で退任すると発表した。後任には、商品企画などを担当し、チーフ・プランニング・オフィサーを務めるイヴァン・エスピノーサ氏(46)が就く。
内田氏は6月に開催予定の定時株主総会まで取締役を続ける。日産はトップ交代について、短中期の目標を達成し、長期的な成長を果たしていくことが目的と説明した。エスピノーサ氏は自動車調査会社などを経て、2003年10月にメキシコ日産に入社。日産では主に商品企画畑を歩み、24年4月から現在のポジションについている。
日産株は12日の取引開始直後に下落に転じた場面もあったが、その後再び上げ幅を拡大。一時前日比1.3%高の444.8円を付けた。
11日夜にオンラインで会見した内田氏は昨年11月にターンアラウンド(事業再生)計画を発表して以降、経営責任を問う声が社外だけでなく従業員からも出たことを明かした上で業績が低迷する状況でバトンを渡すことは「じくじたる思い」と述べた。木村康取締役会議長によると、8人いる社外取締役は留任の方向で調整しているほか、ルノーや執行からの残り4人について調整中で決定次第明らかにする。
内田氏はまた、新たなパートナーシップについてさまざまな選択肢の検討が始まっているとし、今後これを具体的なかたちにまとめ、すみやかに実行するには新体制の元で進めていくことが適切と考えていると述べた。新たに社長に就任するエスピノーサ氏については「エネルギッシュで自他ともに認めるカーガイ(車好き)」と紹介。同氏が難局を乗り越えて会社をけん引することを期待するとした。
ブルームバーグのデータによると、国内に上場する1兆円以上の時価総額の企業でエスピノーサ氏よりも若いCEOはサンリオの辻朋邦氏(36)と、ネクソンのイ・ジョンホン氏(46)の2人だけだ。エスピノーサ氏は会見で、「私は日産はこんなものではないと心から信じている」とし、従業員と協力しながら会社に安定性と成長を取り戻していきたいと抱負を語った。ホンダとの交渉再開の可能性について問われると、臆測の内容についてはコメントできないと述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストはリポートで、新経営体制への移行は日産にとって「経営課題解決への新たな第1歩となる」と評価。新社長となるエスピノーサ氏は、自動車会社の経営の根幹を担う商品戦略の経験が豊富で、売れる車に乏しいという日産の本質的な問題解決に適任とする一方、資金繰りの確保と財政立て直しは待ったなしで、社長をはじめとする経営トップのもと迅速な対応が求められると指摘した。
リストラ
主力市場である米国や中国での販売不振で業績が急激に悪化する中、日産は大手格付け会社による格下げが相次ぐなど信用リスクも高まっており、新社長は難局での登板となる。自動車業界では電気自動車やソフトウエアの開発に巨額の投資が必要で、費用を分担するパートナー探しも新社長の重要なミッションとなる。

商社出身の内田氏はカルロス・ゴーン元会長の逮捕・起訴などで混乱していた19年12月に社長に就任。世界的な半導体不足に伴う生産制約や円安といった追い風もあって一時的に業績は持ち直したが、商品ラインアップの高齢化や比亜迪(BYD)など中国勢の台頭で再び業績が悪化し、世界で3工場の閉鎖や9000人の人員削減を伴うリストラに追い込まれた。ホンダとの交渉はわずか1カ月余りで頓挫するなど内田氏の経営トップとしての資質を疑問視する声も上がっていた。
近年の日産歴代社長 | 在任期間 |
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カルロス・ゴーン | 00年6月-17年3月 |
西川広人 | 17年4月-19年9月 |
山内康裕(代行) | 19年9月-19年11月 |
内田誠 | 19年12月-25年3月 |
イヴァン・エスピノーサ | 25年4月- |
副社長を務める坂本秀行氏、星野朝子氏、中畔邦雄氏の3人のほか、経営戦略などを担当するチーフストラテジー&コーポレートアフェアーズ・オフィサーを務める渡部英朗氏が3月31日付で退任することも発表した。坂本氏は内田氏と同様、6月に開催予定の定時株主総会まで取締役を継続するという。
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