NHKのクローズアップ現代をみた。12日放送分。タイトルは「コメ価格高騰、備蓄米放出でどうなる?」。30分という放送時間の割に問題点を網羅的に詰め込んでいた。それはそれで評価するのだが、コメの価格問題を深く掘り下げた今後の見通しという点では、残念ながら物足りない内容だった。なぜコメの価格は急騰したのか?政府の価格管理政策が破綻したからだ。備蓄米の放出で価格は下がるのか?下がらない。どうして?生産コストが大幅に上がっているからだ。価格を下げればコメの専業農家は破綻する。コメはますます不足する。それでも下げようとする政府・自民党。コメの値段が上がって困るのは消費者だ。消費者を守って生産者がいなくなれば、困るのは消費者ではないのか。どうしてこんな単純なことを政府・自民党・農水省は理解できないのか。じゃ、どうする?コメの価格を市場メカニズムに委ね、消費者対策としては家計の手取りを増やすしかない。減税だ。

コメの価格急騰に関連してSNS上では色々な噂が飛び交っている。NHKにしては珍しくSNS上の噂を取り上げていた。転売ヤーがいる、コメに関係ない企業が投機的な買い付けをしている、外国人が大量に購入している、極め付けは関西万博の需要では・・・。バカも休み休み言え、と言いたくなる。番組には茨城大学のコメ専門の学者が登場して現状を解説していた。それなりに筋は通っているのだが、政府・自民党やJ A全農に遠慮があるのだろう。ズバッと問題点に切り込まないからすべてが曖昧になる。問題の本質は極めて単純だ。政府・自民党が長年にわたって培ってきたコメの生産・管理・流通政策が完全に破綻したのだ。その兆しがみえはじめたのが昨年初め。コメの流通業者の間で「コメの流通がタイトになってきた」と囁かれ始めたというのだ。そして夏ごろからスーパーの店頭でコメ不足と価格高騰が始まる。年末にはスーパーの平均小売価格(5キロ)が3952円に跳ねあがる。前年の倍だ。農水省は多分この意味を理解できなかったのだろう。

コメは農家から集荷業者、卸売業者、外食・小売業者、消費者へと流れていく。集荷業者の大半はJA全農を頂点とする農協系の業者だ。この業者は農家と消費者の間に入って価格の安定を維持しようと努める。平時はそれで通用するのだが物価が急騰しているのだ。農家は農協系の集荷業者への売り惜しみを始める。そこに付け入るように時代の動きを敏感に感じとった民間業者が割って入る。高い価格を提示する民間業者にコメが流れる。JA系の集荷業者にしてみればコメの流通がタイトになったと感じるわけだ。農家にしてみれば生産コストが急騰する中で背に腹は変えられない。高い値段で買い取った民間の集荷業者は利幅を乗せて転売する。かくしてコメは転々としながら価格が急騰する。家計の手取りを増やす経済運営認めない政府。生産者に廃業を迫り、消費者の息の根を止めようとする。番組の最後に秋田県の大潟村でコメ専業農家を営む涌井徹氏が訴える。「食べ物がなくなって困るのは日本だ。今まさにその分岐点にいる」。