▽米CPI、予想下回る伸び-トランプ関税の影響まだ顕在化せず

Augusta Saraiva

  • 総合CPIは前月比0.2%上昇、4カ月ぶりの低い伸び
  • コアCPIも前月比0.2%上昇、航空運賃や新車価格など低下

2月の米消費者物価指数(CPI)は4カ月ぶりの低い伸びにとどまり、過去数カ月にわたって停滞していたインフレ抑制に一定の進展が見られる内容となった。

キーポイント
・食品とエネルギーを除いたコア消費者物価指数(CPI)は前月比0.2%上昇-市場予想は0.3%上昇
 ・前年同月比では3.1%上昇-予想は3.2%上昇
・総合CPIは前月比0.2%上昇-予想は0.3%上昇
 ・前年同月比では2.8%上昇-予想は2.9%上昇

Inflation in US Simmers Down

Slowdown in price pressures was broad across goods, services

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/td0pcguf3qmuj0iznbhy9yb1f0jfepsv.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: Bureau of Labor Statistics

  統計発表元の労働統計局は、総合CPI上昇分の約半分は住居費によるものだと説明。ただ住居費も前月からは伸びが鈍化した。

  航空運賃は4%低下し、昨年6月以来の大きな落ち込みとなった。複数の航空会社は今後の需要減退について警告している。新車価格とガソリン価格も下落。食料品は1月に大幅な上昇となっていたが、2月はほぼ横ばい。自動車保険と医療保険も伸びが減速した。

  今回のCPI統計は市場や金融当局に多少の安心材料を提供するものだが、他のいくつかの指標ではインフレが再び高まりつつあることが示されている。またトランプ大統領が相次ぎ打ち出す関税政策により、食品から衣料品などざまざまな財の価格が今後上昇すると予想され、消費および経済全般の耐性を試すことになるとみられる。

  先週の議会演説でトランプ氏は、関税によって生じるであろう物価上昇を「多少の混乱」と表現し、米国はそれを乗り越えられるはずだと述べた。しかし、トランプ政権の通商政策を巡る不確実性が、このところの株式市場の下落と景気後退(リセッション)懸念の再燃につながっている。そのトランプ氏は11日、関税政策が経済を低迷させるとの懸念で株式相場が急落したことを深刻視しない考えを示した。 

関連記事:トランプ米大統領、リセッション予想せず-市場混乱は気にしない

  米金融当局は、トランプ政権の政策とインフレの道筋がより明確になるまで、忍耐強く様子を見守る姿勢を示しており、18日-19日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では金利据え置きが広く予想されている。一方で景気減速懸念が強まっていることから、金融当局が以前考えられていたよりも早期に利下げを行うのではないかとの見方も増えている。

  ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの債券および流動性ソリューション部門のグローバル共同責任者、カイ・ヘーグ氏は「インフレ圧力の緩和と成長下振れリスクの高まりという組み合わせは、金融当局が緩和サイクルの継続に近づいていることを示唆する」と語った。

  CPIが市場予想を下回る伸びとなったことで、S&P500種株価指数は値上がり。一方、市場の焦点が貿易戦争の激化リスクへとシフトするのに伴い、米国債利回りとドルは上昇している。

  一部のエコノミストは2月CPIについて、中国からの輸入品への追加関税など、トランプ関税の最初の影響が表れると予測していた。しかし、財のコア指数も前月比0.2%の上昇にとどまり、家具、玩具、テレビなどのカテゴリーも小幅な伸びにとどまるか、もしくは下落した。

  サービス分野最大の項目である住居費は前月比0.3%上昇。1月は同0.4%上昇だった。

  ブルームバーグの計算によると、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.2%上昇。前月は昨年1月以来の大幅な伸びとなっていた。金融当局は全体的なインフレの道筋を見極める上で、こうした指標を確認する重要性を強調しているが、当局は別の指標である個人消費支出(PCE)価格指数を重視している。

  PCE価格指数は、CPIほど住居費のウエートが高くない。PCE価格指数の伸びが当局目標の2%に近づきつつあるのは、それが一因だ。13日に発表される1月の生産者物価指数(PPI)では、PCE価格指数に反映される項目の物価動向がより明らかになる。

  ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、スチュアート・ポール両エコノミストは「トランプ大統領の政策がCPIに与える正味の影響は、サービス支出の減少が財価格の上昇を上回るかどうかによって左右されるだろう。2月の統計では、サービス価格鈍化によるディスインフレが財のインフレに勝ったことが明らかだ」とリポートで指摘した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Inflation Eases, Offering Some Relief Ahead of Tariffs(抜粋)