▽【米国市況】株続伸、リセッション懸念ひとまず後退-ドル149円台

Rita Nazareth

  • S&P500種は構成銘柄の約90%が上昇、半導体エヌビディアは下落
  • ドル指数は約4カ月ぶり安値-円は主要10通貨で唯一の対ドル下落

17日の米株式相場は続伸。経済指標は市場予想を下回ったものの、景気後退(リセッション)懸念をひとまず和らげる内容だったことで、幅広い銘柄で買い優勢となった。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5675.1336.190.64%
ダウ工業株30種平均41841.70353.510.85%
ナスダック総合指数17808.6654.570.31%

  ウォール街では個人消費の急減速が懸念されていたが、この日発表の2月小売売上高のデータは強弱混在となり、トレーダーにいくらかの安心感を与えた。S&P500種株価指数は構成銘柄の約90%が上昇。関税を巡る話題が後退するのに伴い、株価はテクニカル的に売られ過ぎとされる水準からさらに離れた。

  小売売上高は全体では前月比0.2%増と市場予想を下回ったが、国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア売上高(コントロールグループ)は予想を上回る前月比1%増となった。

  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのデービッド・レフコウィッツ氏は「政策不透明感の高まりが市場を直撃したのは、投資家のポジショニングとセンチメントがかなり高まっていた時だった。しかし、この多くは現在解消したと当社では考える」と指摘。「強気相場で起きる調整は買いの好機となる傾向がある」と語った。

  前日にベッセント財務長官は、最近の株安は心配に及ばないと語っていた。「35年間、投資のビジネスに身を置いていた私だから言える。調整は健全であり、正常だ」とベッセント氏はNBCの番組で発言。「マーケットは心配していない。良好な税政策を実施し、規制を緩和し、エネルギー安全保障を高めれば、長期的にマーケットは素晴らしい結果を残すだろう」と述べた。

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は2月小売売上高について、今後数カ月で消費の粘り強さが確認されるかもしれないという慎重な楽観論を投資家に提供したかもしれないと指摘。「消費が持ちこたえれば、経済全体も持ちこたえる可能性が高い」と述べた。

  個別銘柄では、半導体大手エヌビディアが下落。同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が18日に年次開発者会議「GTC」で行う基調講演に投資家の関心は集まっている。

  ウェイブ・キャピタル・マネジメントのチーフストラテジスト、リース・ウィリアムズ氏は「エヌビディアを巡る懸念は、利益は今がピークで、今年下期は同社の見通しほど良好ではないのではないかというものだ」と指摘。「フアン氏が講演を通じて、事業は順調で歯車が狂うことはないとの一定の安心感を提供できるかもしれない」と述べた。

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為替

  外国為替市場ではドルが下落。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は昨年11月以来の安値となった。

  ただ、ドルは「短期的には下げ渋るだろう」と、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのエリアス・ハダッド氏は指摘。「米国が成長見通しの優位性を失ったと結論づけるには時期尚早なのではないか」と同氏は語った。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1262.34-3.37-0.27%
ドル/円¥149.13¥0.490.33%
ユーロ/ドル$1.0922$0.00430.40%
  米東部時間16時46分

  米小売売上高について、BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン氏はリポートで「強弱まちまちな内容だった」と指摘。「ただ前月に落ち込んでいたコントロールグループが反転したことで、第1四半期(1-3月)の成長が消費主導で低迷するとの懸念は和らいだ」と指摘した。

   UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのソリタ・マルチェリ氏は「投資家にとって主要な懸念材料は引き続き関税合戦のエスカレーションだ。強硬な通商政策が米国の経済成長を圧迫するものの、リセッション(景気後退)に追い込むほどではないというのが当社の基本シナリオ」とリポートに記した。

  円売りの勢いはニューヨーク時間の午後に強まり、1ドル=149円台に乗せた。

ドル・円相場の推移
円スポット相場出所:ブルームバーグ

  市場の関心は18、19両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)会合に移っている。マネックスのアナリストはリポートで「金利据え置きが広く予想されているが、トレーダーは再びフォワードガイダンスに細心の注意を払うだろう」と述べた。

国債

  米国債相場はまちまちとなった。欧州市場での国債高などを受け、長期債は小幅に上昇(利回りは低下)。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.59%-3.2-0.69%
米10年債利回り4.29%-1.7-0.40%
米2年債利回り4.05%2.90.73%
  米東部時間16時47分

  ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「米国債は欧州長期債相場の上昇から一定の追い風を受けている」と指摘。「成長懸念が株式に、スタグフレーション懸念が米国債に影響を与えている」と語った。同氏は当面、米国債相場はレンジ取引が続くとみている。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は2営業日続伸。米小売売上高が一部で懸念されていたような急激な落ち込みを免れたことが支援したほか、中国が内需喚起策を打ち出すと発表したことも追い風となった。一方、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する米国の攻撃で、中東情勢の緊迫化も意識された。

関連記事:米小売売上高、予想下回る0.2%増-成長見通し巡る懸念に拍車 (3)

  フーシ派が紅海での船舶攻撃を停止するまで容赦ない軍事作戦を継続するとした、前日のヘグセス国防長官による発言に続き、トランプ大統領は17日、フーシ派の攻撃がやまない場合にはイランを報復する可能性を示唆。さらに圧力を強めたことで、市場では地政学的リスクプレミアムが再び高まる可能性がある。

Oil Rises on Strong Global Economic Data, Red Sea Risks | US crude climbed to settle near $68
WTI先物出所:NYMEX、ブルームバーグ

  BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は地政学的な緊張の高まりに伴い「一部の大口ショートが再び脇に追いやられる可能性がある」と述べた。米先物の期近物は短期の移動平均である1バレル=68.56ドル付近が上値抵抗線になっているという。

  それでも原油価格は1月に付けた今年の高値から10ドル余り下がっている。トランプ氏による貿易戦争の激化や、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の供給拡大決定に加え、ウクライナでの戦争が終結した場合にロシア産原油の市場供給が再開される可能性などが下押し要因となっている。トランプ氏は18日、ウクライナ停戦案を巡り、プーチン大統領と電話で協議する予定だ。

関連記事:トランプ氏、プーチン氏と18日に協議-ロシア側も会談確認 (2)

  トランプ氏の関税政策が世界経済の成長を脅かすとの見方から、ゴールドマン・サックス・グループは北海ブレントの価格見通しを引き下げた。ゴールドマンだけでなくウォール街の金融機関の間では、原油相場はバレル当たり60ドル台で落ち着くとの見方が強まっている。

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  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前営業日比40セント(0.6%)高の1バレル=67.58ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は0.7%上昇し71.07ドルで引けた。

  ニューヨーク金スポット価格は反発。ここ数週間に金価格見通しの上方修正が相次いでおり、この日はUBSグループが向こう4四半期の予想を従来の1オンス=3000ドルから3200ドルに引き上げた。

  世界的な貿易戦争が長期化するリスクが大きくなっているとして、安全資産である金の妙味が高まるとみている。

  先週にはマッコーリー・グループが4-6月(第2四半期)に金価格が3500ドルまで急上昇すると予想。BNPパリバも平均価格が3000ドルを大きく上回るとの見方を示した。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時54分現在、前営業日比15.87ドル高の1オンス=3000.03ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は5ドル(0.2%)高の3006.10ドルで引けた。

原題:

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