▽米国市況】株反発、パウエル議長会見で安心感-ドル148円台後半
Rita Nazareth
- S&P500種、FOMC政策発表当日としては昨年7月以来の大幅高
- 米2年債利回り4%割れ、円は主要10通貨で最高のパフォーマンス
19日の米金融市場では株式相場が上昇し、国債利回りは低下した。米連邦公開市場委員会(FOMC)は主要政策金利の据え置きを決定。一方で経済成長が減速し、インフレ率は上昇するとの見通しを示した。FOMC発表後に円相場は対ドルで上昇に転じ、1ドル=148円台後半で推移した。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5675.29 | 60.63 | 1.08% |
ダウ工業株30種平均 | 41964.63 | 383.32 | 0.92% |
ナスダック総合指数 | 17750.79 | 246.67 | 1.41% |
FOMC政策金利の据え置きは予想通り。市場では、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長がトランプ政権の通商政策による影響をどう語るかなどが注目されていた。パウエル議長は会見で、自身の基本シナリオとしては、関税に伴うインフレ率上昇は「一過性」のものになるとの認識を示した。
関連記事:FOMC、政策金利据え置き-成長減速とインフレ率上昇を予想 (3)
S&P500種株価指数は1%上昇。FOMC政策発表当日としては、昨年7月以来の大幅高となった。
ダドリー前ニューヨーク連銀総裁はブルームバーグTVとのインタビューで「パウエル議長は『われわれは良い位置におり、待つ余裕がある。様子を見ながら仕事をやり遂げる』という感じで、かなりハト派的な発言だった」と指摘。「すべては対処可能だと人々に安心感を抱かせる内容だ」と語った。

FOMCは2会合連続で金利を据え置いた一方、4月から米国債のランオフ(償還に伴う保有証券減少)ペースの上限を月間250億ドルから50億ドルに減額することを決定した。
これについて、ハリス・フィナンシャル・グループのジェイミー・コックス氏は「保有国債のランオフペースを減速させる行動をとったことで、間接的に利下げを実施した」と指摘。「これは夏までのランオフ中止に道を開く。運が良ければ、インフレのデータはフェデラルファンド(FF)金利の引き下げが当然の選択肢となるような状況となっているだろう」と述べた。
BOKファイナンシャルのスティーブ・ワイエット氏は「なお拡大が続く経済、失業率のわずかな上昇、年内2回の利下げとの見通しが示された。これは政策変更の影響を巡りわれわれと同様に米金融当局も混乱していることを示した前回の声明と似ている。米国債の圧縮ペース減速は、政策を大幅に変更するとのシグナルではない。市場には依然として明確さが欠如している」と語った。
国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。政策金利動向に敏感な2年債利回りは約6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して4%を下回った。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.55% | -3.2 | -0.69% |
米10年債利回り | 4.25% | -3.7 | -0.85% |
米2年債利回り | 3.98% | -6.3 | -1.57% |
米東部時間 | 16時38分 |
プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は「FOMCが利下げを見送るという決定は12月下旬時点で記されていた。当時はインフレが根強く、景気は過熱し、労働市場は堅調だった」と指摘。「しかしそれ以降、信頼感は落ち込み、労働市場の亀裂は拡大し、リセッション(景気後退)懸念が強まったが、インフレ懸念は続いている。恐らく、FOMCが政策に関して明確性を持っていたなら、つまり政策を誤る可能性が小さかったなら、きょう利下げを実施していただろう」と述べた。

為替
外国為替市場では、FOMC後にドルが上げを縮小する展開。クレディ・アグリコルのG10FX戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「成長予想が下方修正される一方でインフレ予想がやや上方修正され、FOMC声明はスタグフレーションの兆候を示唆する内容となった」と指摘。「ドルがやや売られたのは、声明と経済予測が最近の金融当局の強気なレトリックに比べて悲観的と受け止められたことが原因だ」と語った。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1264.39 | 2.73 | 0.22% |
ドル/円 | ¥148.70 | -¥0.57 | -0.38% |
ユーロ/ドル | $1.0904 | -$0.0041 | -0.37% |
米東部時間 | 16時38分 |
その上で同氏は「短期的には、インフレリスクで利下げは当面見送られる可能性がある。従って、米金利市場が2025年に関するハト派的な見通しを修正すれば、ドルが一定の勢いを取り戻す可能性はあると考える」と述べた。
ドイツ銀行のストラテジストは、相互関税によるドルの支援は弱まると予想している。関税の影響を受けた国・地域が財政措置で対応する一方、米国の成長は鈍化するとの見方が背景。
円相場は対ドルで上昇。ニューヨーク時間午前の取引では1ドル=150円台まで売られたが、FOMC声明発表直後から下げ幅を縮小。その後、上げに転じた。円は主要10通貨では最高のパフォーマンス。

原油
ニューヨーク原油先物相場は反発。FOMCでは成長見通しが下方修正されたものの、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計で国内需要が堅調なことが示され、短期的に需要が崩壊するとの懸念が後退した。
EIA統計によると、留出油在庫はおよそ3カ月ぶりの低水準となったほか、ガソリン在庫は1月初旬以来の水準に落ち込んだ。原油在庫も米国石油協会(API)の推定値よりも小幅な増加にとどまったほか、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫も減少した。
アゲイン・キャピタルのパートナー、ジョン・キルダフ氏は「足元で米経済に対する懸念は非常に強いが、今回のデータはある程度その懸念を裏切るものだ」と指摘。「需要にとって極めて望ましい兆候だろう」と述べた。
地政学に絡む材料は強弱まちまち。トランプ大統領はイエメンの親イラン武装組織フーシ派による攻撃はイランに直接的な責任があるとして、イランにフーシ派の抑制を迫った。一方、関係者によると、ウクライナのゼレンスキー大統領はトランプ大統領との電話会談で、ロシアのエネルギー資産に対する攻撃停止を求める提案に支持を示した。
関連記事:トランプ氏がゼレンスキー氏と電話会談、停戦への取り組み「順調」(2)
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前日比26セント(0.4%)高の1バレル=67.16ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は0.3%上げて70.78ドルで引けた。

金
金スポット価格は再び最高値を更新。FOMC声明発表後に上げ幅を広げ、一時1オンス=3051.96ドルまで買われた。
金価格は年初来で16%近く上昇。米国と世界の経済見通しが悪化する中で、金への逃避買いが膨らんでいる。
金スポット価格はニューヨーク時間午後3時24分現在、前日比8.49ドル高の1オンス=3043.22ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は40セント(0.1%未満)高の3041.20ドルで引けた。
原題:Stocks Get Relief Rally in Best Fed Day Since July: Markets Wrap
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