▽米コアCPI、予想外に伸び鈍化-総合指数は5年ぶりの低下

Augusta Saraiva

  • 3月コアCPIは前月比0.1%上昇-市場予想0.3%上昇
  • 総合CPIは前月比0.1%低下-予想0.1%上昇

3月の米消費者物価指数(CPI)統計は、食品とエネルギーを除いたコア指数の前月比が市場予想に反して鈍化するなど、全般的にインフレ圧力の後退を示唆した。物価上昇圧力につながり得る大規模な関税措置が導入される前に、消費者物価が落ち着いていたことが示された。

キーポイント
・コアCPIは前月比0.1%上昇-市場予想は0.3%上昇
 ・2月は0.2%上昇
 ・前年同月比では2.8%上昇-予想は3.0%上昇
  ・2月は3.1%上昇
・総合CPIは前月比0.1%低下-予想は0.1%上昇
 ・2月は0.2%上昇
 ・前年同月比では2.4%上昇-予想は2.5%上昇
  ・2月は2.8%上昇

  コア指数の前月比は9カ月ぶりの低い伸びとなった。総合CPIの前月比での低下は、およそ5年ぶり。 

  エネルギーや中古車、ホテル宿泊、航空運賃の低下が特に影響した。ここ数年、インフレ押し上げ要因となってきた自動車保険も低下した。  

  CPI発表後、米10年債利回りはいったん上昇したものの再び低下。S&P500種株価指数とドルはマイナス圏で推移している。

  ホテル宿泊費や航空運賃といったサービス分野の一部項目で価格が下落。これは、裁量的支出を減らしている消費者がいるという警戒すべきサインの可能性がある。

  トランプ大統領は統計発表後、自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に、「インフレは低下している」と書き込んだ。

「嵐の前の静けさ」

  JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、デービッド・ケリー氏は「インフレの嵐の前の静けさだ。関税により今後インフレは加速するだろう」と、ブルームバーグテレビジョンで指摘。「旅行業界がかなり軟化している。この分野が年内悪化すると考えている」と述べた。

  一部の関税は既に発動されていたにもかかわらず、玩具や家電、スマートフォンなど中国へのエクスポージャーが高いカテゴリーの一部は低下し、関税の影響は今回のCPIにはまだほとんど示されなかった。コアの財価格は0.1%低下と、昨年8月以来のマイナスとなった。 

  しかし、トランプ大統領が課した高水準の関税が経済に影響を及ぼすとみられるため、今後数カ月でこうした状況は変わり得る。

  パンテオン・マクロエコノミクスのチーフ米国エコノミスト、サミュエル・トムズ氏は「2018年に洗濯機に関税が課された。その際の経験が示唆するのは、消費者物価が新たな関税に反応するには3カ月かかり、その後は急速に影響が広がるということだ」とリポートに記した。

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「インフレの健全な低下か、それとも需要の大幅な減少か。米金融当局の利下げを正当化し、消費者の負担を軽減するにはインフレ率の低下は必要だ。しかし、経済活動の大幅な落ち込みによるインフレ率の低下は、経済を危険にさらすことになり、望ましい道とは言えない」と述べた。

帰属家賃は加速

  サービス分野で最大の項目である住居費は0.2%上昇に鈍化した。ホテル宿泊費の大幅低下が影響した。 

  一方、持ち家のある人がその家を賃貸する場合の想定家賃である帰属家賃(OER)は0.4%上昇に加速。食品価格は0.5%上昇と、2022年10月以来の大幅上昇に並んだ。卵価格の伸びは鈍ったが、食肉の上昇ペースが加速した。

  ブルームバーグの算出によると、住宅とエネルギーを除いたサービス価格指数は約5年ぶりの大幅低下。 

  個人消費支出(PCE)コア価格指数に反映されるCPI項目のうち、外食は2カ月連続で0.4%上昇となった。米金融当局はPCEコア価格指数を重視している。 

  金融当局は賃金の伸びにも注目している。この日発表された別の統計によると、インフレ調整後の実質平均時給は前年同月比1.4%上昇と、昨年11月以来の高い伸びを記録した。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Inflation Unexpectedly Slows Down Ahead of Tariffs Impact(抜粋)