▽【米国市況】株・国債そろって上昇、一定の落ち着き-143円近辺
Rita Nazareth
- 一部電子機器を上乗せ関税対象から一時的に除外する方針受け安心感
- 10年債利回りが6日ぶりに低下、5年債利回りは一時16bp余り低下
14日の米金融市場では、国債相場が上昇(利回り低下)に転じ、株とともに続伸。トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争を受けて荒れた展開が続いていた市場に、一定の落ち着きが戻った。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 5405.97 | 42.61 | 0.79% |
| ダウ工業株30種平均 | 40524.79 | 312.08 | 0.78% |
| ナスダック総合指数 | 16831.48 | 107.02 | 0.64% |
トランプ政権が週末、消費者向けの主要な電子機器について、上乗せ関税対象から一時的に除外する方針を示したことを受け、S&P500種株価指数は上昇した。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、トランプ政権がどれほど強硬に要求を突き付けられるかに関しては、少なくとも一定の限界があるという結論に投資家が達し始めたようだと指摘した。
Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「相場回復が短期的に続くには、関税についてホワイトハウスが柔軟であることを示す兆しを引き続き確認する必要がある」と予想。「不透明感はなお強く、日々のボラティリティーは高水準で推移する可能性がある」と述べた。

個別銘柄ではアップルが続伸し、2営業日の上昇率は6%を超えた。米業界調査会社IDCによると、スマートフォン「iPhone」の出荷台数は1ー3月に前年同期比で10%増加した。
輸入自動車・部品に対する関税軽減措置の可能性を検討しているとトランプ大統領が述べたことを受け、自動車株も買われた。
関連記事:トランプ氏、自動車部品への関税軽減措置を検討-国内生産移行へ猶予
ゴールドマン・サックス・グループも高い。この日発表した1-3月(第1四半期)決算で、株式トレーディング収入が四半期ベースで過去最高を記録したことが分かった。
関連記事:ゴールドマン、株式トレーディング収入が四半期ベースで過去最高 (2)

ベアータ・マンシー氏率いるシティグループのチームは、米国株の投資判断を引き下げた。貿易戦争が経済成長と企業利益の重しとなることから、分散投資を勧めた。
関連記事:シティ、米株投資判断引き下げ-モルガンSも利益予想下方修正 (1)
フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は「『関税を課す、課さない』という、この終わりのない物語に関する最新情報を得ようと、トレーダーはソーシャルメディアやニュース報道に引き続き注目することになる」と指摘。「現政権は市場参加者に緊張感を持たせ続けることを、非常に得意としている」と述べた。
S&P500種は先週8日に年初来15%安で終了。その後、トランプ氏が報復措置を講じていない国・地域への上乗せ関税を90日間停止したことで、相場は持ち直した。
カーソン・グループのライアン・デトリック氏の集計によれば、1957年にさかのぼるデータでS&P500種が4月上旬までに15%以上下げたのは16回。そのうち年末に騰落率がプラスに戻ったのは1982年と2009年、2020年の3回しかない。その3回のいずれも、低迷する米経済を支えるべく動いた連邦準備制度理事会(FRB)が市場救済の役割を果たした。
国債
米国債相場は上昇。先週、週間ベースで2001年以来の大幅上昇を記録した10年債利回りが、6営業日ぶりに低下した。トランプ政権が一部製品を高率の関税適用対象から一時的に除外したことが一定の安心感をもたらした。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.81% | -6.0 | -1.24% |
| 米10年債利回り | 4.38% | -10.8 | -2.40% |
| 米2年債利回り | 3.85% | -11.1 | -2.80% |
| 米東部時間 | 16時50分 |
米国債利回りは中期債を中心に、全ての年限で低下。5年債利回りは一時16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下し、4%を下回った。先週11日には日中に4.22%と、2月25日以来の水準に上昇していた。10年債利回りは14日に一時13bp低下した。
ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は、相場は「確かに落ち着いている」とした上で、「ホワイトハウスから何か新しい情報を聞くまでは」そうした状況が続く可能性が高いと述べた。
米国債相場は、ウォラー連邦準制度理事会(FRB)理事が午後に講演を行った後に一段と上昇。同理事は、トランプ大統領の関税政策がインフレに及ぼす影響は一時的なものにとどまる公算が大きいとの見解を示した。「もし景気減速が深刻化し、リセッション(景気後退)の脅威さえある場合には、政策金利を従来想定より早く、かつ大幅に引き下げる方向を支持することになるだろう」とも述べた。
関連記事:ウォラーFRB理事、関税によるインフレへの影響は一時的と予想
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は、「恐らく過去1週間に米国債売りを余儀なくされたことが買いの機会を生んだ」と分析。「そうした売りが全て終わったかは」定かでないとし、「現段階では様子見を続ける」と述べた。

米国債に対するセンチメントが前向きになっている兆候はある。11日に発表されたデータによると、米国債先物のオープンインタレスト(未決済建玉)は急減。投資ファンドがレバレッジを効かせたポジションを縮小したことが示唆される。
ただ14日も、長期債相場の反発は他の年限と比べると勢いが弱かった。
外為
外国為替市場ではドル指数が5営業日続落。米国の景気減速懸念および、次々と変わるトランプ大統領の貿易政策を背景に、逃避先としてのドルの役割を見直す動きが広がっている。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1230.06 | -3.68 | -0.30% |
| ドル/円 | ¥143.09 | -¥0.45 | -0.31% |
| ユーロ/ドル | $1.1354 | -$0.0001 | -0.01% |
| 米東部時間 | 16時53分 |
ブルームバーグ・ドル・スポット指数はアジア時間に一時0.5%下げ、昨年10月2日以来の安値。今月に入ってからおよそ3.5%下落している。
ニューヨーク時間には一時プラス圏に浮上したが、勢いは続かず。株式相場が上昇してもドルの反発は限られた。米通商政策を巡る不確実性がドルの信認を脅かしている状況を示唆する。
ブラウン・ブラザース・ハリマン(BBH)のストラテジストであるウィン・シン、エリアス・ハダッド両氏は「関税の一時停止にかかわらず世界経済のリスクは高いままだ。ドルは再び弱含むとみている」とリポートで指摘。
「一時停止の発表後もドルが軟調なのは、米国の政策当局に対する信頼感がますます失われていることが主因だろう。米経済に関する政策の不透明感も影響を及ぼしていると考える」と記した。
円は対ドルで上昇。ニューヨーク時間には一時144円台前半に下落した後、142円台後半まで買われたが、その後は143円ちょうど近辺での小動きとなっている。
ユーロは、アジア時間に対ドルで一時0.6%高の1ユーロ=1.1425ドルを付けたが、ニューヨーク時間には1.13ドルを割り込む場面があった。その後は前営業日の終値付近での推移。
関連記事:ユーロ、1.20ドル台視野に-2009年以来の上昇ペース
原油
ニューヨーク原油先物はほぼ変わらず。米国の新たな貿易政策やイラン産原油に対する制裁が緩和される見通しが意識された。
トランプ氏が一部の電子機器に対して上乗せ関税を除外したことを受け、株式相場は上昇したが、米消費者の1年先インフレ期待が大幅上昇したことが原油相場にとって重しとなった。
米国とイランは12日に核開発を巡って公式協議を実施し、両国が建設的だったと評した。これにより、イランからの石油供給が増加する可能性が高まった。中東オマーンでの協議は2022年以来のトップレベル協議となり、長年の対立の解決に向けた新たな取り組みの始まりを告げるものとなった。双方は再び会合を持つことで合意した。
関連記事:イランと米国、協議継続で合意-核開発巡る公式会合は「建設的」

需要面では、急速に変化する見通しにトレーダーは苦慮している。石油輸出国機構(OPEC)は2025年と26年の需要増加量の予測を日量約10万バレル下方修正した。米エネルギー情報局(EIA)はもっと大幅に下方修正していた。価格予想を引き下げる銀行も増えており、JPモルガン・チェースは北海ブレント原油の今年の価格を66ドルと予測している。
原油価格は4月に入ってから下落基調にある。特に米中の貿易戦争がリセッション(景気後退)懸念をあおり、エネルギー需要が打撃を受ける恐れがあるためだ。OPECと非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が予想よりも早く生産引き上げに動いたことも下げに拍車をかけた。
ダーン・ストライフェン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストはリポートで、「市場はすでに今後の在庫増加を織り込んでいる」としながらも、「大幅な供給過剰」になるとの見通しを示し、2025年は日量80万バレルの供給過剰になると予想した。 北海ブレント原油価格の年内平均予想をバレル当たり63ドルとした。
関連記事:ゴールドマン、原油市場の「大幅な供給過剰」を予想-貿易摩擦で
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は、3セント(0.1%)高い1バレル=61.53ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は12セント上げて64.88ドル。
金
ニューヨーク金相場は反落。スポット価格は一時、オンス当たり3245ドルを超え、最高値を更新する場面もあったが、売りに押された。
関税政策に起因した裁定取引により、米国の先物取引所の倉庫に流入した金が現在、徐々に流出している。
貴金属が貿易関税の対象になるリスクがここ数カ月、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の価格を世界的な基準価格を大幅に上回る水準に押し上げていた。そのため、この異常な価格差を利用するために金を米国に輸送するインセンティブが高まった。
数十億ドル相当の金塊が米国に流入し、米国の貿易データをゆがめるほどで、COMEXの在庫は過去最高水準に達した。
しかし、今月に米政府が金塊は関税の対象外であることを確認したため、裁定取引の機会は終了。米国の倉庫で金属を保管するインセンティブがなくなったため、他の取引拠点に向かう可能性がある。COMEXの在庫は先週、連日で減少し、11日には1年余りで最大の流出となった。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時32分現在、27.57ドル(0.9%)下げて1オンス=3210.04ドル。COMEXの金先物6月限は18.30ドル(0.6%)安い3226.30ドルで引けた。
原題:Stocks and Bonds Climb After Week of Upheaval: Markets Wrap(抜粋)
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