トランプ関税の真の狙いは何か、現時点でその目的をはっきりと答えられる人はトランプ大統領その人を除いては見当たらない。同氏曰くMAGA(Make America Great Again)、America First。それはそうだろう。ものづくり大国だった米国は、グローバル主義のもとで各種工場があいついで海外に流出、気がついたら国内は完全に空洞化していた。イメージに過ぎないが、かつての工場地帯だった中西部や大西洋岸中部地方の一帯は、使われなくなった工場や機械が錆び付いたまま放置され、Rust Belt(赤錆地帯)に変質した。この地帯とともに米国を再び物づくり大国として蘇らせる、これがトランプ氏の“野望”だろう。その手段が関税ということだ。そう説明されれば「なるほど」と思う。だが、どうやって。トランプ関税の発表と同時に世界中でマーケットは混乱し、燎原の火のごとく反トランプの勢いが巻き起こっている。

そんな中で最近ネットではトランプ関税を支える2人の重要人物の名前が明らかになってきた。1人はスティーブン・ミラン氏(大統領経済諮問委員会=CEA委員長)。関税は通商交渉にパワーを与えると説く若きトランプ側近の学者だ。もう1人は言わずと知れたスコット・ベッセント氏。トランプ政権の財務長官を務めいている。なぜこの人が’財務長官に指名されたのか、当初はよく理解できなかった。だが、相互関税の90日間停止を進言したのが同氏であり、各国との交渉を託された。普通なら貿易交渉は商務長官と通商代表部代表が行うのが一般的。そこに財務長官が登場すること自体が異例だ。ベッセント氏は1992年、ジョージ・ソロス氏と組んでイングランド銀行を破滅させた人だ。当時まだ30代、若くして歴史的出来事に関与した人物でもある。金融の裏の裏に精通している。金融といっても旧来の銀行系ではなく、ファンド系だ。しかもヘッジファンド。ここがミソだろう。

 以下は個人的な思いつき。ベッセント氏にとって高率の相互関税導入に伴う株式市場の乱高下など、大した問題ではないのだろう。ボラティリティーを高める狙いか?要するにハイリスク・ハイリターン化。すべてではないが、金融のテクニックがあれば乱高下で儲かる人もいる。それを承知の上で世界を混乱に巻き込みながら勝負に打って出た。本当の目的は関税ではない。関税は単なる手段。勝利するための必須の要件は強固なロジック。おそらく中国の弱みを掴んでいるのだろう。同氏のロジックにどう対抗するか。勝負の分かれ目は人民元に、ドルと米国債、金融資産の動きか。要するに習近平氏の資質が問われているのだ。いまは強力な報復関税で対抗している。トランプ氏はスマホなど電子機器の一部を例外にした。米国民の反乱を意識したのだろう。勝利の女神は習氏に傾いているようにもみえる。果たして本当にそうか?ちなみに石破・赤沢コンビはお涙頂戴の感情論。残念だが馬鹿にされるだけだろう。この戦争に勝ち残った者が、地球の未来を支配する気がする。