ロシアとウクライナの停戦協議が急展開しそうな雰囲気だ。この間の経緯を整理してみる。最初に動いたのはウクライナ。ロイターによると「ウクライナと英、仏、独、ポーランドの首脳は10日、12日から無条件の30日の停戦で合意し、トランプ米大統領も同意した。ロシアに対し、停戦に違反すれば『大規模な』追加制裁を科すと警告した」。これを受ける形でプーチンは11日、「ウクライナとの直接協議を15日にトルコのイスタンブールで行うことを提案した」。即座に同意しないところがズルシャモ・プーチンらしいところか。同通信によるとフランスのマクロン大統領は、「直接協議の提案は、プーチンが進展の道を模索しつつ時間稼ぎをしようとしている」と指摘。「これは第一歩だが、十分ではない」とし、「交渉より無条件停戦が先だ」と記者団に語った。現時点では無条件停戦も直接協議も実現するかどうかわからない。とはいえ、以前にもまして期待感が強まっているような気がする。
トランプ大統領がロシアとウクライナ双方に30日間の無条件停戦を呼びかけたのが9日。この時も停戦合意に違反した場合は「追加制裁を科す」と圧力をかけている。この呼びかけに反応するかのようにゼレンスキー大統領は10日に英仏など4カ国首脳と会談、12日からの無条件停戦で合意した。こうした動きを受けてプーチンは次のような発言をした。「2022年に交渉を打ち切ったのはロシアでなくウクライナだが、われわれは、ウクライナが前提条件なく直接交渉を再開することを提案する」とし、「ウクライナ当局に15日にイスタンブールでの交渉再開を提案する」と述べた。どんな状況になってもプーチンは自分の正当性を必ず主張する。プーチンだけではなくこれが政治家の常だが、「侵略戦争を始めたのはロシア」との歴史的事実は変えようがない。
プーチンの主張は続く。「紛争の根本原因を排除し、歴史的観点で長期的かつ永続的な平和を確立するという目標のもと、ウクライナとの真剣な交渉にコミットしている」。「真の停戦とは、ロシアだけでなくウクライナも順守することだ、交渉を通じて合意することは可能」との認識も示している。戦争責任がどちらにあるか、明確にするのは難しい。トランプ大統領も「ウクライナがNATO加盟を表明した時点で戦争は始まっている。戦争を始めたのはゼレンスキーだ」と語ったこともある。とはいえ、西側諸国の一員としてみる限り、「悪いのはプーチン」であることに変わりはない。国家の安全保障は極めてセンシティブな課題であることは間違いない。とはいえ、軍事力を行使して問題を解決しようとするプーチンの手法は、後世の史家がこの戦争の原因を紐解いた時でも、「時代遅れ」との印象を受けるだろう。停戦を決断できるのか、戦争を始めたプーチンに後世史家が問うているような気がする。
