▽【米国市況】S&P500種は小幅高、買い疲れの兆し-ドル146円台後半
Rita Nazareth
- ハイテク買われ、ナスダック100指数は0.6%高-ボーイングも上昇
- 円は一時145円台も上げ幅縮小、米国はドル安を模索しないと関係者
14日の米株式市場ではS&P500種株価指数がもみ合いの末、小幅高で終了。4月の急落からの記録的な持ち直しに一服感が見られた。貿易戦争や景気減速、根強いインフレといったリスクが残る中、上昇があまりにも急ピッチ過ぎたとの見方が広がった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 5892.58 | 6.03 | 0.10% |
| ダウ工業株30種平均 | 42051.06 | -89.37 | -0.21% |
| ナスダック総合指数 | 19146.81 | 136.73 | 0.72% |

S&P500種は大手テクノロジーなどを除いて、大半の主要業種別指数が値下がり。ナスダック100指数は0.6%高。ハイテク7社で構成するブルームバーグの「マグニフィセント・セブン」指数は1.7%値上がりした。
ボーイングは上昇。同社はカタール航空から大型受注を獲得した。トランプ米大統領の中東訪問に合わせて発表された。
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貿易交渉の進展や景気の底堅さ、ボラティリティーの後退を背景に、リスク資産は急回復してきた。それまでは1カ月にわたり、最悪の事態に備えるという見方が支配的だった。米中が相互の関税率を引き下げたことや米英の貿易合意、中東で取りまとめられた大型商取引は投資家に安心感を与えているが、株価が行き過ぎてしまうことで、サプライズの材料に脆弱(ぜいじゃく)になりやすいとの懸念が生じている。
ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「貿易摩擦が和らぐ中、投資家の関心はファンダメンタルズに戻りつつあるが、目にする現実は期待外れかもしれない」と指摘。「市場は売られ過ぎの状態から買われ過ぎの状態へと、記録的なスピードで進んできた。明確な成長再加速が見られない限り、目先の上値余地は限られる」と述べた。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は、S&P500種は短期的に買われ過ぎの領域に突入したため、株価の上昇一服は「極めて正常、かつ健全だ」と語った。
パイパー・サンドラーのクレイグ・ジョンソン氏は「市場の裾野の広がりや強気なモメンタム上昇は、様子見姿勢を続けていた投資家が乗り遅れを懸念して市場に戻ってきていることの表れだ」と指摘。「株式市場はやや過熱気味だが、サポート水準を確認するような小幅な調整は買いの好機だとみている。相対的な強さを見せているセクターは特にそうだ」と話した。

国債
米国債は下落(利回りは上昇)。2年債利回りは3月以来の高水準となった。長期債の利回りも数週間ぶりの水準に上昇した。米税制改革法案が財政赤字の拡大につながる可能性が意識された。
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| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.97% | 6.8 | 1.38% |
| 米10年債利回り | 4.54% | 7.5 | 1.69% |
| 米2年債利回り | 4.06% | 5.5 | 1.37% |
| 米東部時間 | 16時45分 |
複数の米大手銀行に続き、TDセキュリティーズも米利下げの時期は従来想定よりも後ずれすると予想している。スワップ市場では年内に0.25ポイント利下げが2回実施されるとはもはや完全には織り込まれていない。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は、中央銀行当局者が日々の株価変動や経済政策発表に反応しないことが重要だとし、経済データは今のところ安定しているとの見方を示した。連邦準備制度理事会(FRB)のジェファーソン副議長は、関税とそれに伴う不確実性が今年の経済成長を鈍化させ、インフレを加速させる可能性があるとの見解を示した。その上で、金融政策は必要に応じて対応できる良い位置にあると述べた。
エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は「これまで米金融当局者からタカ派寄りな発言が続いたが、この日のジェファーソンFRB副議長の講演はややハト派寄りだ。米中の緊張緩和後も、下振れリスクが全て解消したと判断することにFRB指導部が慎重なことを示唆している」と述べた。

外為
外国為替市場ではドルが下げを埋めた。米当局者は世界各国と貿易交渉を行っているが、その一部に通貨政策の約束を盛り込もうとはしていないと、事情に詳しい関係者が明らかにした。円は対ドルで上げ幅を縮小した。
トランプ政権がドル安を模索し、貿易交渉を利用としてその目標を達成しようとする恐れがあるとの懸念から、為替市場では警戒感が広がっている。
関連記事:米国、貿易交渉の一部としてドル安を模索してはいない-関係者
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1232.57 | 1.28 | 0.10% |
| ドル/円 | ¥146.76 | -¥0.72 | -0.49% |
| ユーロ/ドル | $1.1173 | -$0.0012 | -0.11% |
| 米東部時間 | 16時46分 |
朝方には、米国と韓国の政府高官が通貨政策を協議したとの報道で、韓国ウォンが急伸。これにつられて円は一時、1.3%高の1ドル=145円61銭まで買われていた。
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ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏は「米国の政策動向に追いつけるほどタイムリーな経済指標が存在しないため、データブラックアウトのような状態に陥っている。こうしたニュースに反応しやすい空白状態が生じている」と述べた。
高島修、ダニエル・トボン両氏らシティのストラテジストは「米国と中国の交渉が詳細の調整段階で行き詰まりとなれば、ドルは対主要通貨で再び下押し圧力を受けると予想される。米利下げ観測が高まるからだ」と指摘。「それに基づくと、今後数カ月にわたってドルの対円相場に非対称的なリスクが生じると考える」と記した。

原油
ニューヨーク原油相場は5営業日ぶりに下落。市場では米中の貿易合意を受けた安心感がなお続いているが、この日は米政府の統計で原油在庫が2カ月ぶりの大幅増となったことが材料視された。
米エネルギー情報局の14日発表によれば、原油在庫は345万バレル増加。増加幅は3月以来の大きさとなる。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・ケスラー氏は「原油先物は調整局面にある」と指摘。50日移動平均である約63.90ドルが、これまでのところ上値抵抗線として機能していると述べた。

米中合意やトランプ大統領のイランに対する強硬姿勢を受け、原油はここ数日上昇していた。トランプ氏は14日、イランによる核兵器保有を容認しない姿勢を改めて表明。一方、イラン外相は米国に対し、協議に関して「より現実的な」アプローチを取るよう求めた。
前日にトランプ氏は、イランと核合意に至らない場合、同国の原油輸出を「ゼロ」にすると述べていた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は、前日比52セント(0.8%)安の1バレル=63.15ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント7月限は0.8%下落の66.09ドル。
金
金スポット相場は反落し、約1カ月ぶり安値となった。世界的な貿易戦争を巡り緊張の緩和が見られたことで、安全資産としての需要が後退した。

サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は「全体的に見て、リスクセンチメントの改善により金の妙味が薄れている」と述べた。米中が貿易協議で合意して以降、金は下押し圧力にさらされている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時14分現在、前日比73.78ドル(2.3%)安の1オンス=3176.53ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は59.50ドル(1.8%)下落の3188.30ドルで引けた。
原題:S&P 500 Rally Wavers as Buyer Fatigue Kicks In: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Rises on Report US Not Pushing to Weaken It: Inside G-10
Oil Declines After Biggest US Crude Stockpile Gain Since March
Gold Declines as Growing Trade Optimism Hurts Haven Demand
