ウクライナ戦争の停戦に向け、トランプ大統領とプーチン大統領が19日に電話での首脳会談を実施する。会談は午前10時、日本時間の午後11時にはじまる。注目はこの会談でウクライナ戦争の30日間にわたる無条件停戦が実現するかどうかだ。これまでの経緯を見る限り、プーチンには停戦の意思も終戦に向けた準備もないだろう。日本時間で今夜開かれる首脳会談の注目点は何か。個人的にはトランプ大統領のプーチンに対する評価が変わるかどうか、その一点にあるような気がする。トランプ氏は2月ホワイトハウスでのゼレンスキー大統領の会談で、あからさまにプーチン寄りの態度を見せた。「ウクライナにカードはない」「米国に対して失礼だ」など、言葉の端々にゼレンスキー氏を屈服させようとする“圧力”が感じられた。その強圧的な態度が、これまでの様々な交渉によって変化しはじめている。
簡単にこれまでの経緯を振り返ってみる。ゼレンスキー氏は4月24日、南アフリカのラマポーザ大統領との首脳会談を行うため同国を訪問。その夜、ロシア軍はウクライナの首都キーウをはじめ、同国内の主要都市を標的に大規模攻撃を実施した。その規模はこれまでの最大規模に達するとみられている。プーチンにすれば盟友ともいうべき南アと、協力関係強化に取り組もうとするゼレンスキー氏のやり方が許せなかったのだろう。南アはプーチンが重視するBRICSの主要メンバーであり、今年のG20 の議長国でもある。ロシアのウクライナ侵略に対してこれまで非難や批判を控えており、ロシアに配慮してきた新興国の一つである。逆にいえばその南アとあえて協力関係を強化しようとするゼレンスキー氏の外交手腕が、プーチンの怒りに火を付けたともいえる。ロシアの爆撃に対してトランプ氏はS N Sで即座に反応した。
「キーウを狙った攻撃に、強い不満を持っている。必要ではなく、悪いタイミングだ。ウラジミール、やめろ!」(Wedge ONLINE、5月16日付)と。ファーストネームでトランプ氏が呼びかけたのはあまり記憶にない。この後、4月26日にトランプ氏はバチカンのサン・ピエトロ大聖堂前でゼレンスキー大統領と二人だけで密談する。周辺で英仏の首脳も見守っていた。4人で話し合ったとの説もある。そして4月30日にはウクライナの天然資源開発をめぐって、米・ウ両国が協定書に調印するのである。5月に入ってトランプ氏は30日間の無条件停戦を再三にわたって提案。ゼ氏がすぐ受け入れを表明したのに対してトランプは、難癖をつけて5月16日にトルコで直接会談を行うと表明した。こうした経緯を経た上での首脳同士の電話会談である。この会談で即停戦が実現するとは思えないが、プーチンに融和的であったトランプ氏のスタンスにどのような変化が現れるか、個人的にはそこに注目している。
