“Mr too late”が江藤農林大臣の更迭に踏み切り、新大臣に小泉進次郎氏が就任した。深夜に記者会見した新大臣は初仕事として、来週に予定されていた備蓄米の入札を中止。代わりに総理から指示された随意契約に基づく入札への変更を事務方に指示した。小泉氏といえば10年前の2015年10月に自民党の農林水産部会長に就任。この時、規制改革推進会議がまとめた提言で揉めていた党内と政府、J A全農(全国農業協同組合連合会)の間を取り持ったことで知られている。NHKによると提言のポイントは2つ。1つはJ A全農に対し、1年以内に肥料や農薬などの販売事業をとりやめること。2つ目が農家から手数料を取る形での農産物の委託販売を廃止すること。小泉氏は1年以内とされていた実施時期を、「数値目標を盛り込んだ年次計画の策定」に変更し対立する関係者をまとめた。

「1年以内」という目標をやめて、「年次計画の策定」に変更。これが小泉氏の手腕の事態だ。個人的には事前調整型の変更だったのではという気もするが、それはいま問わない。いずれにしても、これで小泉氏は農政通として評価されるようになった、と言っても過言ではないだろう。コメ価格高騰の裏にJ A全農が絡んでいることは、いまや周知の事実だ。これに自民党の代議士、官僚、学識経験者、オールドメディアなどが金魚のうんこのようにまとわりついている。コメ価格を下げる、それに反対はしない。ただ、価格水準はどうする。石破総理は3000円台と公言して憚らない。おいおいToo Earlyだろう。諸物価高騰の折、大幅に上昇した生産者のコストは考えなくてもいいのか。7月に参院選挙が控えている。喉から手が出るほど欲しい消費者票。だが、あまりにも短絡的だ。消費者は生産者でもある。

コメ問題には様々な論点が隠されている。その1つがJ A全農に「おんぶにだっこ」の構造問題だ。地方に行けば買い物から車の修理、預金に保険にいたるまで農協だ。J Aバンク(農林中金)は前3月期に1兆9000億円の赤字を計上した。J Aは自民党そのものでもある。だから石破総理は言う。「備蓄米を放出しても、コメの価格は下落していないことを考えると構造的なのかもしれない。そのことに答えを出していくことは容易ではない」(NHK)と。ある意味では正直な総理だ。理解はするがやらない。「やらない」のではない、「できない」のだ。農林部会長を務めた小泉氏。問題のありかは正確に理解しているだろう。できない石破氏に変わって構造問題に切り込めるか、ここが総理への分かれ道だろう。巷には「J Aを解体せよ」との声がある。財務省解体論と一緒だ。ここにもD Sがいる。