トランプ大統領の看板政策の一つである減税法案が下院を通過した。採決の結果は賛成215票に対して反対は214票。たった1票の僅差だ。法案は上院に送られた。上院の議席数は共和党53に対して民主党47。6票差あるが上院共和党は大幅な修正を求めており、法案の成立は依然として不透明だ。減税法案が成立すればトランプ関税で加速するインフレ対策になる。米経済の成長率は維持されるだろうが、財政赤字は一段と加速する。減税案が下院で成立したことを受けドルは全面高の様相となったが株式市場は暗転。問題は債券市場で長期債の利回りが上昇したことだ。経済成長と金利の上昇、この先どうなるか関税の最終的な結論も絡んで相変わらず不透明感が拭えない。どちらに転んでも米経済の先行きは依然として楽観できない、そんな状況がもうしばらく続きそうだ。
債券市場で懸念されているのは財政赤字の拡大だ。21日に実施された20年債入札(160億ドル相当)では需要が振るわず、米国債相場は軒並み下落最した。Bloombergは専門家の話を引用して次のように解説した。「(20年債は)流動性は低く、参加者も少ない。遊び場でひとりぼっちになった迷子のようなものだ」としながらも、「しかし米国債市場が再び神経質な展開になったので、(きょうの入札は)不調だった。その反応で国債利回りは軒並み上昇した」と。普段あまり注目されない20年債市場が、財政赤字の拡大を懸念しはじめたというのだ。これが金利上昇の前触れか、現時点でははっきりしない。一時的な上昇の可能性もあるし、ニッチ市場であるがゆえにディーラーは気兼ねなく、米国経済の先行きに警告を発した可能性もある。どちらにしても金利が上昇含みになっている現状を、市場が浮き彫りにしたことは間違いない。
そんな中で減税法案が下院で成立した。法案には今年末に期限が切れる1期目の減税措置の延長や、SALT(州・地方税)控除の上限を4万ドル(約575万円)に引き上げる修正案、チップと残業手当を一時的に非課税とする案などが含まれている。さらに債務上限を4兆ドル(約574兆円)引き上げる条項も盛り込まれた。一方でメディケイドやフードスタンプ(食料費補助措置)など、低所得者向けプログラムは削減されている。また減税による財政悪化の拡大も懸念される。ブルームバーグはF R Bのウォラー理事が22日、「市場はもう幾ばくかの財政規律を求めている」と発言したと伝えている。下院での修正案可決を受けて米30年債利回りは5.15%と、2023年10月以来の高水準を付けた。これが何を意味するのか、トランプ関税の推移を含めMAGAの先行きは上院共和党の判断にかかることになる。
