▽トランプ氏、日鉄とUSスチールの提携発表-詳細はいまだ不明
Joe Deaux
- 141億ドル規模での買収計画への明確な支持には至らなかったもよう
- 両社およびペンシルベニア州知事は称賛-詳細は明らかにせず

トランプ米大統領は23日、日本製鉄とUSスチールとの提携を発表した。かつて象徴的存在だったUSスチールは米国にとどまると述べたが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。
トランプ氏は日鉄による141億ドル(現行レートで約2兆円)規模での買収計画を明確に支持するには至らなかったようにみえるが、USスチール株はこの情報が伝わった後、一時26%上昇した。終値は21%高の52.01ドル。
トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、「慎重な検討と多くの交渉を経て、USスチールは米国にとどまり、本社を偉大な都市ピッツバーグに維持することになったと誇りを持って発表する」と表明。「私の関税政策により、鉄鋼は再び、そして永遠に米国で製造されることになる」と記した。
両社およびUSスチールの本拠地であるペンシルベニア州のシャピロ知事からの発表は合意を称賛するものだったが、詳細な内容は明らかにされなかった。
トランプ氏は提携によって少なくとも7万人の雇用が創出され、米国経済に140億ドルの寄与が見込まれると述べた。また、その投資の大部分は今後14カ月以内に行われる見通しだとした。
米労働省労働統計局(BLS)によると、現在、約8万5000人が米国の製鉄所で働いている。

USスチールは発表資料で「当社は米国にとどまり、日鉄とのパートナーシップを通じて、今後4年間で大規模な投資、新たな技術、数多くの雇用をもたらし、より大きく、力強く成長する」と表明。
日鉄も発表資料で、トランプ氏の判断に「心より敬意を表する」と発表。USスチール買収提案は「米国の労働者、米国の鉄鋼業、そして米国の国家安全保障を守るというトランプ政権のコミットメントと合致」しているとコメントした。
その上で「USスチールと全てのステークホルダー、米鉄鋼業、さらには米製造業全体にとって画期的な転機となる」とした。
ホワイトハウスは詳細を明らかにしなかったが、日本経済新聞や共同通信など日本のメディアは匿名の米関係者の話として、買収が承認されたと報じた。
トランプ氏は対米外国投資委員会(CFIUS)の再審査報告を受けて投稿した。また、5月30日にピッツバーグで開催されるイベントに自身が出席する意向も示した。
日鉄が23年12月に発表した141億ドル規模の買収案は米政界を中心に反対が根強かった。米大統領選を控えていたことから政治問題となり、バイデン前大統領は25年1月に禁止命令を発表。トランプ政権も当初は反対姿勢だったが、4月にCFIUSに新たに審査するよう命じ、買収への道が再び開かれた。
鉄鋼業界は中国の輸出量増加で市況が悪化しており、日鉄を取り巻く経営環境は厳しさを増している。同社は今期(2026年3月期)事業利益を前期比42%減と見積もる。人口増加に伴う成長や、日鉄の得意分野である高級鋼の需要が大きい米市場を取り込むことは、同社の安定的な経営につながる可能性がある。
アナリストからは買収が割高になるのではないかという指摘もあるが、買収交渉を担当する日鉄の森高広副会長兼副社長は、「われわれは採算の取れない投資はしない」と19日のインタビューで話していた。
関税交渉
日鉄のUSスチール買収計画に関するこの驚くべき方向転換は、日米がトランプ氏の関税措置に関する貿易交渉を行っている中で行われた。
赤沢亮正経済再生担当相は23日(米ワシントン時間)、米国による関税措置を巡る3度目の交渉を終えた。6月中旬の主要7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた2国間首脳会談で「何らかの合意ができていれば、それは大変望ましいことだ」と語った。
一方、トランプ氏の投稿については米政府の正式発表を待ちたいと述べるにとどめた。
関連記事:6月に日米首脳合意できれば「望ましい」、赤沢氏が3度目の関税交渉
原題:Trump Shocks With US Steel-Nippon Approval But Details Elusive(抜粋)
