日米間の懸案となっていた日本製鉄によるU Sスチールの買収問題が動き出した。トランプ大統領が日鉄の買収を承認したとの初期報道から、完全子会社化は無理との否定的な見方が大勢になりつつある。トランプ氏がなぜ詳細を公にしないのかわからないが、この問題のキーワードはタイトルにあげた3つだ。この3つから推測すると、完全子会社化はまずないということになる。では日鉄は買収を断念するのか。そこが最大のポイントだろう。トランプ氏がS N Sに投稿したのが23日。「慎重な検討と多くの交渉を経て、USスチールは米国にとどまり、本社を偉大な都市ピッツバーグに維持することになったと誇りを持って発表する」と表明した。これに対して24日、日鉄は次のような声明を出した。「USスチールとのパートナーシップを承認したトランプ氏の英断に心より敬意を表す」(日経新聞)。英断を評価しているのだ。

問題の経緯を簡単に振り返れば、トランプ氏が再審査を命じた対米外国投資委員会=CFIUS<シフィウス>(Committee on Foreign Investment in the United States)が21日に勧告書を大統領に提出した。この内容も公開されていない。メディアの報道では全会一致の勧告ではなく、最終判断は大統領に一任されたという。これを受けてトランプ氏がトゥルース・ソーシャルに投稿した。前期のコメントの後に「提携によって少なくとも7万人の雇用が創出され、米国経済に140億ドルの寄与が見込まれる。また、その投資の大部分は今後14カ月以内に行われる見通しだ」と記した。バイデン前大統領が買収を拒否したあと、日鉄側は水面下でさまざまな交渉を行なってきた。最終的には初期計画にあった投資額14億ドルを141億ドルに引き上げるなど、買収計画を大幅に引き上げた。こうした点を大統領が評価したのではないか、これが主要メディアの大方の見解だった。

ところがトランプ氏は日鉄がU Sスチールを部分的に所有するとか、歓迎すべき投資だとの見解を示すものの、買収という言葉は一切使っていない。これに代わるのがパートナーシップとコントロールだ。ここから推測出来ものは何か。例えば、日鉄とU Sスチールの持ち株比率を45%ずつとし、残りの10%を米国政府が所有すると考えれば、パートナーシップの全体像が見えてくる。米国政府は10%を保有するだけで経営権を左右することができる。この10%に「5年間譲渡禁止」条項をつける。日鉄はトランプ氏退任後にこの10%を取得する。完全子会社化ではないが、U Sスチールの支配権は確保できる。完全子会社化がなぜ必要か、日鉄が所有する莫大な特許をU Sスチールに移管できるかだら。支配権の確保だけでこれが可能かどうかわからない。加えて莫大な投資が、民間企業としての合理性に耐えるかどうかも不明。でもこう考えれば5年後に実質的に買収が成立する。果たしてどうか・・・。