▽イスラエルとイランの交戦激化-米国関与の可能性にトランプ氏言及<bloomberg日本語版>2025年6月16日 0:32 JST
Galit Altstein、Dan Williams、Jonathan Tirone
- ウラン濃縮施設の破壊に米国が関与するかが今後の焦点
- イスラエル首相、「国家の存亡をかけた戦いにある」

イスラエルは、イランの核開発能力を無力化しようとする軍事作戦で手を緩める気配を見せていない。双方が軍事拠点のみならず民間施設への攻撃も続けており、中東全域に紛争が拡大するとの懸念が強まっている。
イスラエル当局によると、イランによる一連の攻撃でこれまでに14人が死亡し、約400人が負傷。イラン政府は少なくとも80人が死亡したと明らかにした。
イランは15日も引き続き、無人機とミサイルによるイスラエル攻撃を複数回実施。イスラエル側もイランの首都テヘランへの攻撃を継続している。
イラン攻撃への関与を否定してきた米国がフォルドゥのウラン濃縮施設の破壊などに参加するかどうかが、今後の大きな焦点となっている。専門家は、イスラエル単独の戦力では実行できないと指摘してきた。
トランプ米大統領は15日、ABCニュースとのインタビューで、イスラエルとイランの衝突に「われわれが関与する可能性はある」と述べた。ただ、直ちに行動を取る意向は示さなかった。トランプ氏は米国の軍事介入の回避を選挙公約の一つにしていた。共和党内の一部からは、イランの攻撃によって米国の利益が損なわれれば介入が正当化され得ると指摘する声が上がっている。
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イスラエルのネタニヤフ首相はFOXニュースとのインタビューで、米国に対して大型貫通爆弾の供与を要請したかとの質問に明言を避けたが、「他にも計画があり、多くの切り札を持っている」と述べ、必ずしも米国の直接支援を必要としないと示唆した。
その上でネタニヤフ氏は「われわれはこの脅威を取り除くと断固決意している。イランの能力を破壊した時に戦いは終わる。われわれは必ずそれを成し遂げる」と語った。
一方、イランは15日、イスラエルに対して高度な兵器はまだ使用していないと主張した。イランのファルス通信が報じた。
米政府高官によると、トランプ氏はイランの最高指導者ハメネイ師を殺害しようとするイスラエルの計画に反対した。トランプ氏のこの動きについては、ロイター通信が先に報じていた。
イスラエルのカッツ国防相は「ターゲットは今やテヘランの体制そのものだ」と述べた。ネタニヤフ氏もイラン国民に対し、指導者を打倒するよう呼びかけている。ただ、イスラエル当局者は体制転覆が攻撃の目的ではないとしている。
存亡かけた戦い
ネタニヤフ氏は15日、ミサイル攻撃を受けたテルアビブ近郊バトヤムを視察。「我々は国家の存亡をかけた戦いにある」とし、「市民、女性や子どもを意図的に殺害したイランには、極めて重い代償を支払わせる」と語った。
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トランプ氏は15日、イランとイスラエルは「合意すべきであり、合意に至るだろう」とソーシャルメディアに投稿。「イスラエルとイランの間にまもなく平和が訪れる!」とし、「多くの協議が現在進行中だ」と明らかにした。
国際原子力機関(IAEA)は、イラン中部イスファハンにあるウラン転換施設が複数回の攻撃を受け、深刻な損傷が生じたと報告した。
イランのガリババディ外務次官は国営テレビでIAEAに言及し、「これまでのような協力は今後行わない」と述べた。
ファルス通信によれば、同国議会の主要委員会は、核拡散防止条約(NPT)をこれ以上順守すべきではないとの見解を示した。同条約は締約国に対し、IAEAによる査察の受け入れを義務づけている。
イラン政府が実際にこうした措置に踏み切るかどうかは現時点で明らかになっていない。
過去最悪の衝突
イスラエルとイランの敵対関係は、13日にイスラエルがイランの核関連施設や軍事施設を空爆したことで、これまでで最も深刻な衝突へと発展した。イスラエルはイランの防空網への攻撃により、首都テヘランを含む広範な地域で制空権を掌握したとみられる。
両国の軍事衝突は世界の金融市場を揺るがし、13日には原油相場が7%急伸、安全資産への需要で金相場は大幅に上昇した。先進国株で構成されるMSCIワールド指数は4月以来の大幅安を記録した。
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イスラエル軍は15日、イランの武器製造拠点の周辺に住む市民に対し、「直ちに退避する」よう勧告した。
イランは国家の威信と存立に関わる深刻なジレンマに直面している。弱腰と受け取られる対応は避けたい一方で、取れる選択肢は限られつつある。レバノンのヒズボラなどイランが支援する武装勢力は、イスラエルによる過去1年にわたる攻撃で戦力の大幅な低下を強いられている。
イランは15日、イスラエル北部ハイファ周辺のインフラ施設やエネルギー関連施設を標的に攻撃を行った。イスラエル当局は、イランから飛来するミサイルの迎撃を進める中、住民に対して一時的に防空壕にとどまるよう勧告した。
ネタニヤフ氏は、「イランの宗教指導体制のあらゆる施設、あらゆる標的を攻撃する」と表明。一方、イランの最高指導者ハメネイ師は「イスラエルの方から戦争を仕掛けてきたのだ。この重大な罪を犯したイスラエルを無傷では終わらせない」と警告している。

イランのジレンマ
戦闘の激化を受け、イランは15日にオマーンで予定されていた米国との核協議を中止。一方でトランプ氏は、米国はイスラエルの攻撃に関与していないと改めて強調し、イランとの核合意を成立させることはなお可能だとの認識を示した。
中東地域の政治指導者やロシアのプーチン大統領は、今回の紛争が制御不能な事態に陥ることへの懸念を強めており、イスラエルとイランの双方に対して早急な沈静化を求めている。
関連記事:トランプ氏とプーチン氏が電話会談、イスラエルとイランの危機巡り
戦闘がさらに拡大し、特に米国の軍事施設や外交拠点が攻撃対象となれば、イラン指導部にとっては国内での政治的支持を高める契機となる可能性がある。ただ同時に、それはイランが直面するリスクを著しく高めることにもつながる。
世界の原油輸送量の約5分の1を占めるホルムズ海峡において、イランがタンカー攻撃といった手段を検討しているかどうかは明らかになっていない。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナリストによれば、そうした行動は世界最強の軍事力を持つ米国を紛争に巻き込む可能性があり、イランはその代償の大きさを踏まえて回避を判断しているとみられる。そうした姿勢の背景には国内経済の弱さもありそうだ。イランのインフレ率は約40%に達しており、政府に対する国民の不満も高まっている。
原題:Israel-Iran Strikes Escalate, Deepening Wider Conflict Fears (1)、
Israel-Iran Strikes Escalate, Deepening Fears of Wider Conflict(抜粋)
関連情報
▽トランプ氏、イスラエルのハメネイ師暗殺計画に反対-当局者<bloomberg日本語版>2025年6月16日 3:31 JST
Kevin Whitelaw

イランの最高指導者ハメネイ師を殺害しようとするイスラエルの計画について、トランプ米大統領が反対の意向を示したことが、米当局者の話で明らかになった。
米政府当局者は、イスラエルがイランに対して一連の攻撃を開始して以来、イスラエル側と連絡を取り合っている。イスラエルに暗殺計画の中止を促すメッセージをトランプ氏自身が直接伝えたかどうかは明らかになっていない。
イスラエルのハネグビ国家安全保障顧問はニュース放送局N12で、標的の選定についてイスラエル政府が米国の許可を求めることはないと発言。その上で、イスラエルはイランの体制転覆を目指しているわけではないと強調した。

イスラエルのネタニヤフ首相はFOXニュースの番組で「実際、存在しなかった会話についての誤報があまりにも多く、それについて立ち入るつもりはない」と発言。「われわれは必要なことを行う。そして米国も、自国にとって何が最善かを理解していると思う」と語った。
原題:Trump Blocked Israeli Plan to Kill Iranian Leader Khamenei (1) (抜粋)
▽イスラエル・イランの衝突激化、市民に死傷者 紛争拡大に懸念<ロイター日本語版>2025年6月16日午前 7:00 GMT+9

[バトヤム(イスラエル)/ドバイ/ワシントン 15日 ロイター] – イスラエルとイランでは15日も双方への攻撃で市民が死傷し、紛争拡大に懸念が高まっている。両国軍は相手側の市民に対し、さらなる攻撃に警戒し、軍事関連施設などの周辺から避難するよう促した。
イスラエル軍は兵器施設周辺に住むイラン国民に避難するよう警告。イスラエルのネタニヤフ首相は、イランの攻撃でアパートが破壊され6人が死亡したバトヤムを訪問し、「イランは民間人、女性、子どもの殺害に対して重い代償を払うことになる」と述べた。
イラン軍もイスラエル住民に対し、安全のため「重要地域」に近づかないよう警告した。
イスラエルでは15日、子どもを含む少なくとも10人が死亡し、過去2日間の死者数は計13人となった。
イランはイスラエルによる13日の攻撃開始以降初めて日中にミサイル攻撃を実施し、イスラエルの商都テルアビブで爆発音がした。これまでのところ直接の被害は報告されていない。
日没後にはイスラエル北部の都市ハイファにミサイル攻撃があり、同国軍当局者によると高齢者施設が被害を受けた。緊急当局はこの攻撃で9人が負傷したほか、イスラエル南部でもミサイルが着弾し2人が負傷したと明らかにした。
イスラエルがイランの石油・ガス部門への攻撃に乗り出す中、イランの首都テヘランからの映像では、燃料貯蔵施設で大規模な火災が起きている様子が映っている。
イランのタスニム通信は、革命防衛隊のモハンマド・カゼミ情報部長と副部長がイスラエル軍による15日のテヘラン攻撃で死亡したと報じた。
イスラエル当局者は、イラン国内の攻撃目標は依然として多数あると述べ、攻撃がいつまで続くかについては明言を控えた。
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▽独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩和へ<ロイター日本語版>2025年6月15日午後 3:34 GMT+9

[ベルリン 15日 ロイター] – ドイツのワデフル外相は、中東情勢の緊張緩和に向け、フランス、英国とともにイランの核開発を巡り同国と直ちに協議を行う用意があると表明した。
中東を訪問中のワデフル氏は、イスラエルとイランの対立緩和に貢献しようと取り組んでいるとし、イランがこれまで建設的な協議に入る機会を逃してきたと指摘。
「私はそれがまだ可能だと願っている」と14日夜にドイツの公共放送ARDに語った。「ドイツはフランス、イギリスとともに準備を整えている。イランに核開発プログラムに関する即時交渉を申し出ており、受け入れられることを期待している」と述べた。
また「イランが地域、イスラエル、欧州に危険をもたらさないことが、この紛争を平和化するための重要な前提条件でもある」と語った。
