カナダのカナナスキスでG7首脳会議が始まったが、その機を捉えたかのようなタイミングで農林水産省が16日、コメの作況指数廃止と新しい指数の開発を発表した。NHKによると新しい指数は「人工衛星やAI、それに収穫量の測定が可能なコンバインから得られるデータの活用も検討していく」としている。米騒動の最中に発表された改善策の一つにすぎない。今回もまた小泉氏のイメージに沿って、電光石火のスピード感が演出された。一連の動きを眺めながら筆者の脳裏には、記事の裏に隠されている壮大な政局ドラマが浮かび上がってきた。主役は日本の権力機構を実質的に支配している財務省を頂点とした官僚機構。個人的にはこれを日本のDS(Deep State)と呼んでいる。DSが石破・森山政権をみ限り、小泉総理誕生に動き始めたのだ。

一連の動きは小泉農相が15日に福島県を訪問した時点で始まった。氏は田んぼを背景にコメ生産者と対談、農家から「作況指数が実態にあっていないのでは」との言質を引き出す。これを受けて農相は「政策の基盤となるデータ統計に対する信頼を回復しないことには、中長期のコメ政策は立案できない」と発言。「明日(16日)対策を発表する」とまで言及した。だが、これは勢い余っての失言だろう。農林水産省は大臣の指示通り昨日、作況指数の廃止を発表した。要するに全ての準備は整っていたのだ。作況指数が実態を反映していないとの疑念は以前からあった。おそらく廃止の方針は15日より前に関係者間で決まっていたのだろう。新しい指数が人工衛星やA I活用に及ぶことも了解されていた。あとは大臣がお決まりのスピード感で決断しているように見せるだけ。参院選を前に、即断即決の大臣をアッピールしたのだ。

このシナリオを書けるのは官僚機構の頂点に君臨する財務省しかありえない。備蓄米の随意契約も財務省が根回した。小泉氏といえどもそんな能力はない。とすればこのシナリオの先を読むのは簡単だ。作況指数の廃止は内々検討され、廃止が決まっていた。総理にも幹事長にも報告されていたはずだ。だが、発表のタイミングまでは知らされていないのだろう。石破総理がG7で留守にするこのタイミングを狙って、小泉氏のさらなる人気化劇が仕組まれた。財務省が大臣と農林水産省に指示する。農林省の下部機関である全農には知らされない。なんとなれば、全農の親分は森山幹事長(農政族のボス)だ。要するにDSは味方を裏切ったのだ。よくあることだ。DSは総理の首など平気ですげ替える。推測だが理由は2万円給付だろう。石破総理はDSの尾を踏んだのだ。DSは小泉氏に乗り換えた。元々DS側の人だ。「担ぐ神輿は軽くてバカがいい」。これが実質的な権力者の本音。これを打ち破れるのは国民(=有権者)だけだが、参院選、果たしてどうなるか・・・。