立憲民主党の野田佳彦代表が国会の会期末を控えた19日、恒例ともいうべき石破内閣に対する不信任決議案の提出を見送った。日本維新の会の前原共同代表、国民民主党の玉木代表にその旨を伝え、記者団にも説明した。事前の予想通りの展開。とはいえ、ガソリン価格の引き下げに向けて自民党の財政金融委員長の不信任案を野党全体で可決した矢先だけに、なぜ闘わないのか、野田氏の予想通りの対応に逆に“不信感”が強まりそうな事態だ。野田氏の決断には表と裏、右と左、駆け引きや思惑など、さまざまな要因が絡んでいるのだろう。これが政治の現実といえばそれまで。だが、一般国民には分かりにくい。野党だった野田氏は「シロアリを退治するまで増税はしない」と街頭演説で有権者に訴えていた。財務大臣、総理大臣を経験してから「シロアリ退治」は跡形もなく消え失せ、増税路線一辺倒。不信任案見送りで増税路線が定着する。

何年も前の話だ。とはいえ、これが野田氏の若かりし頃の確信だったのではないか。年とともに、政治家としての地位が上がるにつれ、確信は雲散霧消した。亡くなった森永卓郎氏は同氏を「ザイム真理教の信徒」と著書に書き記した。個人的には言い得て妙だと思っている。その野田氏、事前の予想定通りに内閣不信任案の提出を見送った。SNSなどでは参院選後に自公と連立政権を組むためと喧伝されている。場合によっては日本維新の会が加わる可能性もある。有力な説だと思う。だが、自公と立民の間にはさまざまな問題について見解の違いがある。そのいい例が憲法改正だ。9条問題で自公と立民は、言ってみれば犬猿の仲だ。それでも大連立を組むのだろうか。細田内閣を引き継いだ村山政権は、自衛隊違憲論を一夜で破棄し社会党委員長だった村山氏を総理大臣に担ぎ出した。その流れを汲む立民にとってシロアリ退治など“屁のカッパ”だろう。

一部メディアや政治評論家と称するみなさんが、大連立構想をこれでもかこれでもかと書き立てる。それが現実になるかどうか、正直言ってよくわからない。はっきりしているのは、野田氏が内閣不信任案を見送ったことによって、日本の政界は増税派と減税派に分かれるということだ。政治家の中には減税派から増税派に宗主替えする人も出てくるだろう。政策なんてどうでもいい。勝ち組につく政治家が大勢いる。メディアもそうだ。SNSもそうかもしれない。昨今の流れを見ると、国民民主の不倫騒動にコメ騒動、都議選の「再生の道」敗北報道など、主要メディアやフリーランスを中心に軌を一にした報道が溢れている。都議選も参院選も「自民負けない説」の報道合戦だ。森山幹事長は威を強くしたのだろう。「減税は公約に載せない」と断言した。日本の政界というのはまるで誰かに操られている気がするのだ。操られやすい有権者にも問題がある。これも日本低迷の一因だ。