急展開するイラン情勢。トランプ大統領の発言で世界中が大揺れに揺れている。情勢の変化があまりにも急激なため、何がどうなっているのか、ニュースを的確にフォローするのに一苦労する。そんな中でけさ目に止まったのはBloombergが配信した記事。「米軍が先週末に実施したイラン核施設への空爆では、中核部分の破壊には至らなかったと、CNNが米国防総省の情報機関による初期評価について知る関係者の話として報じた。イランの核開発を数カ月程度後退させるにとどまった可能性が高いという」。ホワイトハウスのレビット報道官はこの情報を全面的に否定している。だが問題はこの発言ではない。その後に続く次の発言だ。中国に対して、「イランからの原油購入を継続できる」と発言したのだ。先月には「(原油輸入を)いますぐ停止すべきだ」としていた。1カ月も経たないうちに発言内容が180度変わった。

米国はこの時点ですでにイラン制裁の緩和を決めているのだろうか。トランプ氏による誘導発言に過ぎないのだろうか・・・。マーケットは敏感に反応した。大統領がイランの原油輸出を容認する意向を示唆したことを手掛かりに、WTI先物はこの2日間の下落率が15%近くに達した。Bloombergによるとトランプ氏はSNSで、「中国はイラン産原油の購入を継続できる。また中国が米国産原油も大量に購入することを期待している」と投稿した。急展開するイスラエルとイランの武力衝突はとりあえず置くとして、原油価格が下がれば世界を覆っているインフレの脅威が緩和される。イランに対する経済制裁の緩和は、インフレの要因の抑制につながる。原油価格が下がればFRBは利下げしやすくなる。インフレを抑制しながら、相互関税の引き上げが可能になるかもしれない。トランプ氏は最初からこれを狙っていたかのようだ。

トランプ氏の利下げ要求を頑なに拒否しているパウエル議長はきのう、米下院金融委員会の公聴会で証言した。「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになろう」と。トランプ氏によるイラン原油の輸出容認発言は、まるでパウエル議長に対する側面支援のようにもみえる。もちろんど素人の妄想にすぎないのだが、トランプ氏がパウエル氏に送った新たな利下げ要求かもしれれない。場当たり的で感情的、コロコロと変わる発言内容。世界中がトランプ発言に翻弄されている。今回のイラン攻撃に関する限り、トランプ発言の裏側で米国は緻密に攻撃プランを準備していたようにもみえる。イスラエルとイランの武力衝突が完全に停止するのか、現時点でははっきりしない。仮に停止となればこの先、トランプ発言の重みがこれまで以上に増すことになる。それは良いことか悪ことか、いまだによくわからない。