バンカーバスター(地中貫通爆弾)を使った米軍のイラン核施設への攻撃は、失敗だったのか、成功したのか、いまだに議論が続いている。「イランは高濃縮ウランを攻撃前に他の場所に移転した」、「被害は軽微、開発を数カ月遅らせた程度」など攻撃は失敗だったとする説が、主要メディアを中心に盛んに流布されている。これに対してトランプ大統領は、米国防省が直後に発表した「核施設への打撃は限定的だった」とする初期分析を否定、「核施設は完全に破壊された」と主張している。へグセス国防長官が昨日の記者会見で、「私が確認した限りでは、(濃縮ウランが)本来あるべき場所になかった、もしくは移動されたといった情報は存在しない」と述べ、間接的に大統領に同調した。双方の主張に共通するのは証拠を示していないことだ。真相はいかに?
被害が軽微だったと最初に主張したのはCNNだった。米軍が21日に行ったイランの核施設への空爆について、「米国防総省の国防情報局がまとめた初期評価は、イランの核開発プログラムの中枢部分を破壊するには至っておらず、開発計画を数カ月後退させた程度とみていることが情報筋の話で明らかになった」と伝えた。初期評価は空爆後に米中央軍が実施した被害評価に基づいているという。CNNは国防省の正式機関の報告書をすっぱ抜いたわけだ。CNNは続ける。「核施設のダメージの程度と核開発計画への影響の分析は継続中で、今後明らかになる情報次第では評価は変わり得る。だが初期評価は、トランプ大統領が繰り返し口にしているイランのウラン濃縮施設を『完全に壊滅させた』との主張と食い違っている。ヘグセス国防長官も22日、イランの核開発計画は「葬られた」と述べていた。
この報道に対してホワイトハウスのレビット報道官は、「事実とは異なる」と否定。「大統領と作戦を実行したパイロットをおとしめようとするものだ」と、CNNに対する不満を述べている。事実は依然としてはっきりしてないが、ネタニヤフ首相は「歴史的勝利」「トランプ氏は最良の友人」と勝利宣言すれば、久しぶりに登場したハメネイ氏は「米国は何も得られなかった」とイランの勝利を公言する。国際政治は一寸先は闇どころか、キツネとタヌキの化かし合い。いやそれ以上だ。端的に言ってしまえば、嘘つき同士の泥試合の様相だ。これに反トランプのメディアが拍車をかける。CNNは1期目以来反トランプだ。Bloombergも反トランプ派だ。地中80メートルの深部に位置するイランの核施設。事実が明らかになるには時間がかかる。それまでの間、双方とも相手への攻撃を続けるだろう。国防省にも反トランプ派がいるのか、真実はいずれ明らかになる。
