都議会議員選挙で参政党が3議席獲得した。国民民主党の9議席に次ぐ躍進だ。立候補者4人で3議席だから、国民民主の18人に比べると、当選比率は参政党が上回る。それはどうでもいいのだが参政党の躍進を機に、前から気になっていた「松田プラン」を調べてみた。財務官僚出身で参政党創設メンバーの一人、同党の初代代表を務めた松田学氏が3年前ぐらいから提唱しているプランだ。同プランの概要は、誤解を恐れずに大胆に要約すれば以下の通りだ。まず最初に1323兆円を超えている国債残高を、満期償還時にあわせて永久国債に借り換える。次に市中の金融機関から永久国債の買取要請があった時に、政府が新たに発行するデジタル通貨で買い取るというものだ。これを繰り返すことによって政府の借金である国債は、あっという間にデジタル通貨に振り替わる。これは経済のみならず、日本の出口戦略だ。これを採用すれば財政の健全化はもちろん、「日本再興(経済編)」(松田学著)が実現する。
このプランには2つのキーワードがある。永久国債とデジタル通貨だ。日本国債は60年償還を前提に毎年60分の1に当たる国債を現金で償還ている。これを永久国債に切り替えることによって、償還財源を予算に計上する必要がなくなる。政府は永久国債にかかる金利を支払わなければならないが、借換債の大半を所有するのは日銀だ。日銀に支払われた金利はいずれ剰余金として政府に還元される。永久国債に振り替えるだけで政府の利払い費用はほとんどなくなってしまう。その分財政の余力は向上する。ここまでは誰でも思いつくアイデアだ。松田プランが優れているのはここから先だ。現存する国債をすべて永久国債に振り替えるだけで、財政はかなり健全化する。だが、それでも永久国債が残れば財政が健全化したとは言えないだろう。この壁を乗り越えるために第二のキーワードが発動される。デジタル通貨だ。
日銀が発行する日銀券がすべてデジタル通貨に切り替わるのがいつになるか、それは日本国民の選択次第だろう。愚行するにこのプランが実施されれば、しばらくの間は現在の日銀券、いわゆる円とデジタル円が併存することになる。でもまったく問題ない。現在もキャッシュとキャッシュレス(デジタル)による決済が混在している。要は政府・日銀が財政の将来展望をどう考えるかだ。「消費税は社会保障の財源であり、減税などまったく考えられない」と財源論にこだわる石破総理。森山幹事長(=財務省)の“圧力”を誠実に実行しているようだが、この二人にとって松田ブランは「猫に小判」だ。同類は政府・自民党、官僚、さらにいえば学者、メディア、評論家にも一杯いる。二期目になって暗号資産大国へと軸足を移したトランプ大統領の思惑は、松田プランの先取りだろう。膨大な財政赤字の解消策は関税だけではないということだ。
