▽【米国市況】S&P500最高値、利下げ観測で国債上昇-ドル144円近辺
Rita Nazareth
- S&P500種、四半期では2023年12月以来の好調なパフォーマンス
- ドル売り優勢、月間では2017年以来となる長期の連続下落
30日の米国株式市場は続伸。米国が主要貿易相手国・地域との関税交渉で合意に近づいているとの期待を背景に、S&P500種株価指数は終値で最高値を更新した。米国債は利下げ観測を背景に、ここ5年で最も好調な上半期を終えた。ドルは売られ、月間では2017年以来となる長期の連続下落となった。
| 株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| S&P500種株価指数 | 6204.95 | 31.88 | 0.52% |
| ダウ工業株30種平均 | 44094.77 | 275.50 | 0.63% |
| ナスダック総合指数 | 20369.73 | 96.27 | 0.47% |
S&P500種はハイテク株が主導し、節目の6200を上抜けて終えた。4月の安値から25%近く上昇し、四半期では2023年12月以来の好調なパフォーマンスとなった。
大型株の中ではアップルの上げが目立った。オラクルも300億ドル(約4兆3300億円)規模の大型クラウド契約を好感し大幅高。米連邦準備制度理事会(FRB)の年次ストレステスト(健全性審査)を通過した銀行大手も高かった。
上乗せ関税の一時適用停止の期限が7月9日に迫る中、トランプ米大統領は日本が米国産コメの輸入に消極的だとして、日本に新たな関税を賦課する構えを見せた。一方、欧州連合(EU)は米国との通商交渉で、輸出品の多くで10%の一律関税を受け入れる用意があるものの、医薬品や酒類、半導体、商用航空機といった重要セクターでは関税引き下げを米国が確約するよう求めている、と関係者が明らかにした。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「今週も米経済指標、特に雇用関連のデータを市場は注視するだろう。ただ、中東情勢や貿易戦争で再び大きな緊張が生じない限り、マクロ経済データが悪くても株式市場はそこまで大きな打撃は受けないかもしれない」と分析。「それでも、サプライズが起きる余地は常にある」と続けた。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのウルリケ・ホフマンブチャディ氏は「関税に関する材料で市場が時折、動揺する可能性はあるが、今のところ持続的な株売りの引き金になるとは予想していない」と指摘。その上で「株式全般への配分が低い投資家には2026年以降の高いリターンに備え、分散型のグローバル株やバランス型ポートフォリオへのエクスポージャーを段階的に増やすことを推奨する」と語った。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「健全な経済のファンダメンタルズはマイナスの材料に対する究極の緩衝材だ」として、「個人消費や企業利益を抑制するほど重大な事態が発生しない限り、株式市場は堅調を維持するだろう」と述べた。
一方で、不透明な政策環境を踏まえると、市場のセンチメントが広範な打撃を受ける可能性を完全に排除することはできないとも指摘。「こうした環境では、不確実性の高い局面を乗り切るよう設計された分散型ポートフォリオを維持することが投資家にとっては不可欠だ」と続けた。
米国債
米国債相場は上昇(利回りは低下)。ここ5年で最も好調な上半期を終えた。
| 国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
|---|---|---|---|
| 米30年債利回り | 4.78% | -5.5 | -1.13% |
| 米10年債利回り | 4.23% | -4.5 | -1.05% |
| 米2年債利回り | 3.73% | -2.3 | -0.60% |
| 米東部時間 | 16時43分 |
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストが、米利下げの時期が従来予想より早まる可能性があるとの見方を示したことが、国債相場を支えた。同行は関税によるインフレへの影響が予想よりも「やや小さい」として、FRBが9月にも利下げに踏み切ると予測している。
月末の指数リバランシングに伴う買いも背景にあるとみられている。
10年債利回りは4.24%を割り込み、5月2日以来の水準に低下した。
ベッセント米財務長官はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで長期債の発行増額について問われ、「その必要はないだろう」と回答。現在の米国債利回り水準を踏まえると、政府が長期債の発行を増やすのは理にかなっていないとの見方を示唆した。
関連記事:ベッセント財務長官、長期債発行増額を否定-「必要ないだろう」 (1)
DWSアメリカズの債券責任者ジョージ・カトランボーン氏は「市場は米利下げ再開に傾きつつあり、実際に利下げ局面に入った際に乗り遅れることへの警戒感がやや見られる」と述べた。米国債入札で外国勢による需要の強さが依然示されていることもあり、同氏はここ数週間に30年債を含め金利へのエクスポージャーを増やしているという。
為替
ニューヨーク外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が低下。トランプ大統領が7月4日までの成立を目指す大型減税・歳出法案に注目が集まる中、ドル売りが優勢となった。
| 為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| ブルームバーグ・ドル指数 | 1190.16 | -5.71 | -0.48% |
| ドル/円 | ¥143.98 | -¥0.67 | -0.46% |
| ユーロ/ドル | $1.1784 | $0.0066 | 0.56% |
| 米東部時間 | 16時43分 |
ドル指数は月間でも6カ月連続の下落で、2017年以来となる長期の連続下落局面となった。
円は対ドルで上昇し、144円近辺。欧州時間には143円78銭まで買われる場面もあった。
一方、ユーロは2021年以来の高値を更新した。
米上院が可決を目指す減税・歳出法案について、議会予算局(CBO)は今後10年間で米国の財政赤字を約3兆3000億ドル(約476兆円)拡大させるとの分析を示した。
アブソリュート・ストラテジー・リサーチの米金利戦略および調査部門責任者、エブラヒム・ラーバリ氏はブルームバーグ・ラジオで「最も大きな懸念は公的部門のバランスシートの健全性だ」と指摘。その上で「ここ1週間ほどの議会の動きは、そうした懸念を軽減するどころか、むしろ強める内容だった」と述べた。

原油
ニューヨーク原油先物相場は反落。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスの生産引き上げ規模を巡る思惑が広がる中、中東情勢の緊張で世界の原油供給が混乱するとの警戒は和らいだ。
OPECプラスの主要メンバー国は7月6日の会合で、8月分についても日量41万1000バレルの生産拡大を検討する用意があると、複数の参加国代表が明らかにした。実際に決まれば、こうした大幅な供給引き上げは4カ月連続で、当初計画されていた規模の3倍に相当する。

BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「原油先物は値固めのパターンが続いており、1バレル=65ドル近辺で均衡点を見いだしているようだ」と指摘。「OPECプラスの追加供給分を夏の旅行需要が吸収できるかどうかが本当の試練になる。不確定要素としては今回もイランと産油国の順守状況が焦点になっている」と述べた。
イランとイスラエルが停戦で合意し、大幅な地政学リスクプレミアムが先週市場から取り除かれたことから、ヘッジファンドは原油に対する弱気な見方を強めた。米国が仲介した停戦が続くのかどうか、イラン側は懐疑的な姿勢を崩していないが、トランプ米大統領は「イランが平和的であるなら」制裁緩和を支持するかもしれないと示唆した。
ブリッジトン・リサーチ・グループのデータによると、値動きを増大させる傾向がある商品投資顧問業者(CTA)は30日、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)のロングポジションを一部手じまい、45%のネットロングとなった。27日時点では55%だった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前営業日比41セント(0.6%)安の1バレル=65.11ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は、0.2%安の67.61ドル。8月限はこの日が最終取引だった。9月限は0.1%安の66.74ドルで引けた。
金
金相場は反発。トランプ大統領が推進する大型税制法案を巡って、米上院で交渉が続いていることが背景にある。米財政赤字をさらに拡大させるとの懸念が広がる中、共和党は慎重姿勢を示す議員の説得を図っている。
この日はドルの下落も金を支えた。ただし、月間ベースの金先物は2カ月連続で下落。中東情勢の緊張緩和に加え、米国の消費者センチメントやインフレ期待の改善が背景にある。
シティグループのアナリストは、トランプ大統領の税制法案や貿易協定が成立すれば、米成長への懸念が和らぎ、金需要は最終的に冷え込む可能性があると指摘。金は2026年後半までに1オンス=2700ドルを割り込む見通しだとし、「金価格の下落リスクに備え、ヘッジをかけるよう金生産者に強く勧める」とした。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時29分現在、前営業日比24.53ドル(0.75%)高の1オンス=3298.86ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は20.10ドル(0.6%)上げて3307.70ドルで終了。
原題:S&P 500 Climbs at End of Best Quarter Since 2023: Markets Wrap
Treasuries Wrap Up Best Month Since February Ahead of Jobs Data
Dollar Set for Longest Monthly Slide Since 2017: Inside G-10
Oil Falls as Mideast Tensions Ease Ahead of OPEC+ Decision
Gold Edges Higher as Traders Weigh Trump’s Tax Bill, US Deficits (抜粋)
