トランプ関税の先行きが怪しくなってきた。当初から想定された事態である。昨日のこの欄で「松田プラン」に触れた。松田学氏の著書「日本再興(経済編)」(方丈社刊)には、気になる過去の事例が紹介されている。この本が刊行されたのは2023年4月10日。トランプ政権発足の2年も前だ。関税に揺れる今日の事態を予想していたわけではないと思うが、過去を振り返ると「相互関税は日本潰し」のように見えてくる。以下この著書からの引用。<大蔵省問題>金融危機のころの日本の大きな政治テーマは「大蔵省問題」でした。これは、冷戦体制崩壊後の米国の世界戦略と密接に関わっています。もはや仮想敵がソ連ではなくなり、90年代は米国の一極支配の世界秩序が現出したわけですが、この時に米国の目についたのが、バブルの絶頂期には世界の株式時価総額で10位以内に日本の銀行がずらりと並び、ロックフェラーセンターまで買収せんとした日本の金融力でした(P.176-177)。

ソ連なきあと、日本の地政学的な戦略的価値も低下している。米国の仮想敵は今度は日本・・・?とまではいかないにせよ、当時の米国は、世界の資金循環のセンターとなって、各国の貯蓄を自らマネージすることで莫大な利益を得ることを基本戦略とするようになっていました。(略)私は、90年代に米国が進めようとしたのが「第二の経済占領」だと表現しています。第一の経済占領は言うまでもなくGHQによるもので、それは財閥解体、農地解放、内務省解体の三点セットでした。第二の経済占領でそれに相当するのが、株式持ち合いの解消、金融資本市場の開放、そして大蔵省解体でした。そこでウォール街と米国政府は、日本の莫大な貯蓄をマネージするために金融資本市場に風穴を開けるべく「大蔵省解体」を仕掛けます。あの「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」も、その流れの中での世論操作でした(176-177ページ)。それを象徴するのが大蔵省の省名変更でした(181ページ)。

米国は常に、自国の国益のためなら世界中のいろいろな国の体制を自国の都合のいいように変える戦略を官民一体で行使する国です。(略)軍産共同体の利益をも図るために仕掛けられたウクライナ戦争もそうです。(略)1997年に米国が官民一体で遂行したアジア通貨危機も挙げられるところです。(略)ここで実行されたのが「ワシントン・コンセンサス」でした。これは、米国政府とIMFと世界銀行といったワシントンに本拠を置く機関の間で1990 年前後に成立した考え方で、(略)市場志向の強い、新自由主義的な政策パッケージのことを意味します。(略)各国の国家主権をグローバル市場の支配下に置くことで、金融を中心にグローバリズの経済利権を拡大する当時の米国の国家戦略(略)でした(P.178-179)。

難航する関税交渉は第三の経済占領か。グローバリズムからAmerica First、

MAGAに潮流が変化したが、今度は石破政権並びに日本を解体しにきているように見える。